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2-45 プロンテラ

腕輪の情報、その中のメールシステムを呼び出しては読み、落胆する。
そんな動作を何度も繰り返していた。
その人物───ギルは彼女からの返信を待っていた。
あの燃える教会の中、一人残った彼女のことを。

「・・・・・・・・・はぁ」

あの後衛兵に話すと何の説明もなしに特級ランクの事件として口止めされた。
どうやらプロンテラ騎士団のほうも何かしらの情報を受け取っていたようで、ギルが通りにたどり着いたその時、対策は練られていた。
ナノのことが心配だったのでしつこく食い下がると、既に犯罪者に対抗できうる人材を送ったらしい。
その人物のことも聞きたかったが、機密がどうとかで教えてもらえなかった。
しかしその時衛兵はブツブツと悪態をつきながら不満を漏らしていたので、案外知らないのかもしれない。
そこまで考えて、再びメールシステムの呼び出し。
受信メールに一件も入っていないのを確認し、また落胆する。

ふもっふ!

腕輪の画面を再び閉じようとして鳴った音。
メールが届いた時に設定された音だ。

「・・・・・・・・・・!?」

焦るようにメールの受信した内容を確認する。

『前を見ろ』

「・・・・・・・・・前?」

「ああ。馬鹿にしてんのかてめぇ。俺の授業がそんなに退屈だってか?」

メールの通り前を向くとそこには青筋を浮かべたトマト先生の姿が。
腕輪をはめた右手を軽く顔の前に挙げているのを見るに、腕輪の情報を展開しているようだ。
ふと受信したメールの送信者を確認する。
そこには『トマト先生』の5文字が。

「何度呼んでも返事しないなんて、いい度胸じゃねぇか。ああん?」

・・・・・・・・・俺、死んだかも。






スコップで何度も地面を突いては掘る。
既にそれだけの深さ、広さで掘ったかは分からないが今日一日中掘っていたのだ。
そろそろいいんじゃないだろうか、と思いずっと下を向いていた顔を上げた。
首の骨が鳴る音を感じつつ背伸びをする。

「こんなものかな?トナ、どうだい?」

「わたしに言われてもさっぱりなの」

「じゃあキリアは?」

「・・・・・・・・・これくらいで」

キリアは僕の問いかけに小首を傾けながら答えた。
どうやら自信がないようで、若干表情に不安が滲み出ている。

「あとは埋めるだけなの!」

「いや待ってくれ。今埋めたら何のために掘ったのか分からなくなる」

「そこに平原があるからなの」

「それ何て落とし穴魂」

そう・・・・・・・・・これから僕達はここに彼らを入れる。
墓を、作る。
それに最後まで反対していたトナのことだ。
これも一応、自分がまだ反対であることを示すための小さな抵抗なのだろう。
一方キリアはボーッと地面を眺めて話には参加していない。
何を見ているのかと思い、近づいてみるとミミズがうねうねと蠢いていた。
・・・・・・・・・相変わらずのマイペースである。

「あとは風の魔法でぶちこむの」

「いやいやいや!そんなことしたら死体四散するから!余計に大変になるから!?」

僕にとって彼らは家族だった。
小さな村、小さな力しか持たない村だったけど、僕にとってそこは間違いなく故郷だった。
・・・・・・・・・本当ならイライラしてトナの言うことを実行したいのだが、さすがにそこまでするのは良心が痛む。





あれからその辺に転がっている死体を魔法で浮かせながら作った墓穴に放り込む作業が始まった。
その間、僕は魔法が使えないので静かにその様子を見守っている。
魔法を使えないというより一般的な魔力を用いた魔法らしい魔法が使えないのだが。

「これで最後なの」

やっぱり最後まで反対していたトナは、少し乱暴に墓穴にその死体を放り投げた。

「・・・・・・・・・いい?」

「・・・・・・・・・ああ」

それを見たキリアがこちらに許可を求め、僕はそれを許可する。
キリアは一度頷くと魔法を使って端にどけておいた土を流し込むようにして墓穴にかぶせていく。
正直な話、ちゃんと火葬してあげたいのだがこんな場所で燃やすと悪臭が酷いだろうし、何より数が多い。
家族ならそんな労力があろうと話は別なのだろうが、僕は既に家族ではない。
そう、家族であったのもここが故郷だったのも、全て『だった』なのだ。
そんな思考をしていると既に埋め終わったのかキリアが僕の裾を引っ張っていた。

「・・・・・・・・・どうする?」

「そうなの。これからどうするの?」

これから、か。
・・・・・・・・・。

「そうだ」

僕達は一度失敗した。
いや、一度じゃないだろう。
何度だって、失敗した。
その度に前に進んできた。
それはまるで御伽噺の英雄達のように。
それはまるで御伽噺の勇者達のように。
それはまるで・・・・・・・・・一つの家族のように。
まだ諦めるには早い。
僕達は世の中に絶望するにはまだ早すぎる。
だから僕は・・・・・・・・・僕達は

「ここに僕達の国を作ろう!」

「・・・・・・・・・なの?」

「・・・・・・・・・?」

二人とも心底不思議そうに首をかしげている。
トナが僕のことを不思議思考回路と言っていたが、たぶんそれのせいだろう。

「僕達が家族に受け入れられないなら僕達が家族を作ればいい。だから僕達がここに家族を作ろう!」

大きく手を広げて、この何もない広い平原を示す。

「・・・・・・・・・不思議思考回路すぎるの。キリア、こんな男さっさと見限ってわたしと静かに暮らすの」

「ひどい!?」

トナがそういうのはある意味当然だと思う。
彼女にとって家族はキリア一人であり、他はどうでもいい存在なのだ。
僕に彼女が協力しているのはキリアとの絆だけ。
だからこんな時、最後に決めるのはキリアなのだ。
僕達はキリアから始まった。
だからきっと、これから始めるのもキリアからなのだろう。

「・・・・・・・・・ロズ。貴方が言うなら」

「・・・・・・・・・なの」

面白くなさそうにトナが顔を背け、しゃがみこみながら地面に何かを書いていた。
と思うとすぐに立ち上がり、びしっとこちらを指差し言った。

「それで名前は何がいいの?まさかロズウェル帝国なんてふざけた名前、言わないよね?」

いや、さすがにそれは言わないが。
・・・・・・・・・しかし名前か。

「そうだなぁ・・・・・・・・・」

そういえば遥か昔に見た、預言書に記されたとある国の名前。
ノルンの名を冠する預言書にあった、最も栄えるであろう国の名前。
僕は自然にその国を、最も栄えるであろう最高の国の名前を言った。

「『プロンテラ』!栄え続ける国、プロンテラを作ろう!」







「・・・・・・・・・なんだこれ」

気付けば夕暮れの教室に一人放置されていたギルは寝起きではっきりしない意識の中、今見た夢の内容を思い出そうとする。
しかし具体的な内容は思い出せず、漠然としたストーリーのみしか残っていない。
なんだか懐かしい夢を見たような、自分ではない誰かの夢を見たような。
そう、あれは確かに自分の夢ではなかった。
では誰の・・・・・・・・・えっと、どんな内容だったっけ。
思い出そうとするもその記憶の忘却は掌から零れ落ちる水のように止めることはできない。

「まぁいっか。で、ファル達何で起こしてくれなかったんだ・・・・・・・・・」

そしてギルは一人、放置されたことに自身の立ち位置を見直すのであった。
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