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2-43 偽りの救世主

「誰だお前は!?」

ギルが大聖堂の中心に立っている男に向かって叫んだ。
司祭服を身に纏い、嫌悪感を抱かせる嫌らしい笑みを浮かべた男に、ロロは一歩下がる。

「ほう、これでもプロンテラではそこそこ有名なつもりなのだが・・・・・・・・・私もまだまだ、ということか」

芝居かかった動きでやれやれ、と肩を下げる男。
そこに一歩踏み出し、ナノは言った。

「・・・・・・・・・アカシア」

「さすがに君は知っているか、神の御使いよ」

「ナノちゃん、知ってるの?」

ロロが司祭服の男、アカシアから目を離さずにナノに問いかける。
一呼吸挟み、ナノは語り始めた。

アカシア、つい1年くらい前からプロンテラに現れた謎の司祭。
彼はプロンテラで謎の人型生命体を操り、人々を襲っていた。
襲われた人々は目が虚ろになり、半年目覚めない。
彼は使役するその生命体をグールと呼んでいる。
その目的は不明。
グールは動きが少し鈍く、攻撃力もモンスターに比べればあまり高くないので脅威には見えないのだが、
何よりも恐ろしいのは謎の防御と生命力だ。
冒険者が放った剣戟は謎のフィールドで逸らされ、魔法は当たる前に四散する。
このことを重く見たプロンテラ現王は司祭アカシアを特級犯罪者と認定している。

「つまり、かなりやばいってことか」

「そうね。さすがに特級犯罪者なんて私達には荷が重いわ」

ナノが説明している最中、何故か攻撃をしてこないアカシアを睨みつけながら大聖堂の出口を見る。

「しかし余裕だな」

「何がだね?」

「話が終わるまで待ってるなんてな。いつでも俺達のことを倒せるってか?」

何を言っているのかわからない、といった顔をしたアカシアは少しして手を叩き言った。

「ふむ、お約束ではないのかね?こういう時に口を挟まないのは」

「ってそんな理由かよ!?」

先程まで流れていた緊張感が一瞬で流れ去った。

「別に君達が逃げようか、私には関係ないのでな。私に必要なのは・・・・・・・・・神の御使い、ただ一人」

「神の御使い?ナノちゃんのことかしら?」

先程からアカシアはナノのことをさして神の御使いと言っているがその意図がつかめない。
だいたいにして人々を襲っているのにギルとロロを逃がすというのは納得がいかない。
ひょっとすればアカシアが人々を襲うのにも何か法則性があるのかもしれない。
・・・・・・・・・ギルがそこまで考え、ふと感じた殺気に武器を掴む。
見ればロロも同様に手甲をつけており、臨戦態勢だ。
その殺気の発生源は・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・」

すぐ傍にいる、ナノだった。

「そう、彼女こそが神の御使い。かつて滅びたとある神の置き土産だ。
 不思議に思わないのか?アイドルなんてものを、どうして彼女がしてい・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・黙れ」

明確な敵意。
それを示すためにナノは腕輪からその剣を取り出した。

「ほう・・・・・・・・・草薙か。少々前、我が眷属が消滅したのは神の御使いによってか。
 確かに太陽の加護を得たその剣ならば、我らに攻撃することはたやすいだろう」

「・・・・・・・・・」

大聖堂に殺気が充満する。
アイドルとして人気を集めるナノの姿はなく、そこには特級冒険者としてのナノ・・・・・・・・・<紅蓮の妖精>がいた。

「・・・・・・・・・イグニッション」

その言葉と同時にナノの服が炎に変わる。
まるで炎の化身のようになった彼女は、草薙剣を水平に傾けると言い放った。

「・・・・・・・・・スピード」

瞬間、紅蓮の精霊は加速した。







「ギル!早く逃げるわよ!」

ギルが目の当たりにしたその戦闘は、初めて見る特級と言われる人物達の戦闘だった。
姿こそ目で追えないものの紅蓮の軌跡を残しながら複雑な動きを見せるナノ。
それに対してゆっくりとした動きではあるが完璧かつスムーズな魔力運用によって魔法障壁で神速の一撃を防ぎきっているアカシア。
無意識のうちに握った拳に力が篭る。
これが自分の父がいた領域。
ここ数年の鍛錬で少しは近づいたかと思っていたが、全然そんなことはなかった。
まだ背中すら見えていない。
そこには冒険者としての格の違いが存在していた。

「聞いてるの!?ギル!」

「・・・・・・・・・っ」

ナノはギルにとって大切な人だ。
確かに一ファンではあるものの、知り合いとなった今では大切な友人でもある。
そんな彼女が戦っているというのに俺は何をしているんだ?
英雄の息子?
そんなもの、何の役にもたたないじゃないか。
いくら父さんが強かったとしても・・・・・・・・・俺は、こんなにも無力だ。
足手纏い?
そうだろう。
例え俺が剣を構えてアカシアに攻撃しても意味はない。
逆にナノの足を引っ張るのが精々だろう。

「ギル!」

「わかってるさ!・・・・・・・・・っ!」

間違いなく逃げるという選択肢が今この場で出来るナノへの最大の援護。
ギルは拳を強く握り、ナノがいるその領域を確かに目に写して大聖堂を後にした。






一方、ナノは少しいらついていた。
アカシアという男に先程から手加減なしの斬撃を放っているのだが魔法障壁によって小さい傷すら負わせられない。
冒険者になってから様々な敵と戦ってきたがここまで身体能力ではなく純粋に魔法障壁だけで凌ぐ敵は初めてだ。

「・・・・・・・・・らちがあかない」

忌々しげに呟き、草薙剣をまた一度振りかぶる。

「神の御使いよ。貴方はこの世界の真実を正確に把握している」

「・・・・・・・・・だから?」

だからどうした。
そう言いたげに剣戟の速度をさらに増す。
相手が体術ではなく魔力運用で防ぐというのならこっちはその速度を上回って叩けばいい。
ならば───

「・・・・・・・・・速」

先程から行っていた草薙剣を媒介にした身体強化の術。
それを行うならばスピードではなく速と唱えたほうが強い言霊を持つのは当然。
ならばさらに強い身体強化を引き起こし、彼女の身体は音速にまで近づく。
しかし

「速い速い。神の御使いよ、この世界に義理立てする必要はあるまい?
 私と一緒に来て、別の世界を管理しないかね?」

「・・・・・・・・・ナノは、そんなこと、望まない」

「貴方一人の力じゃ世界は管理できない。歯車は一つでは役立たずのように、貴方の存在もまた無力だ。
 ならば早々に見捨てるほうが建設的ではないかね?」

「・・・・・・・・・」

切りつける手を止め、少し距離をとるナノ。
それを迷いと見たアカシアは一気に畳み込むべく言葉を紡ぐ。

「私とくればこの世界じゃない世界で渡り神として生きていける。滅びの運命を避けることができる。どうだね?私と来ないか?」

手をゆっくりとナノに差し伸べる。
ナノは顔を俯かせ

「・・・・・・・・・・・・・・・い」

「・・・・・・・・・?何か言ったかね?」

そして今度ははっきりと言った。

「・・・・・・・・・くだらない。ナノにはロズだけ。ロズだけが、ナノのご主人様──マスター」

「・・・・・・・・・。まさか神の御使いが恋人ごっことは・・・・・・・・・呆れたものだ。それこそくだらない」

「・・・・・・・・・くだらないかはナノが決める。さようなら、アカシア・・・・・・・・・闇討ちし太陽の剣草薙剣

草薙剣の圧倒的存在感が開放され、鈍く輝きはじめる。

「な!?」

「・・・・・・・・・神剣、草薙剣!」

紅蓮の軌跡にアカシアはとっさに黒い防御魔法を展開するが、ナノにとってそんなことは関係ない。
その力は神剣、たかが魔法障壁など紙のように切り裂く!

「ちっ!」
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