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2-42 明かされる霧

カツカツカツ、と3人の足音が誰もいない裏路地に響く。
エリアE・・・・・・・・・かつてテロで廃墟とかした、世界で一番の発展を見せるプロンテラの負の側面。
今はもう、誰も訪れないはずの場所。
そんな場所をナノは迷うことなく道を進んでいた。
ロロは若干不安気に辺りを見回しつつ歩いており、ギルも無意識のうちに背中に背負っているバスターソードに手が伸びていた。

「・・・・・・・・・」

「ナノちゃん?えっと・・・・・・・・・どこにいくのかな?」

重い空気に耐えられなくなったのか、ロロがとうとう聞いてしまう。
ギルも聞きたいが、聞きたくないという葛藤があったのだが・・・・・・・・・こうなると聞きたくないという気持ちのほうが大きい。
二人はあれからナノに案内されたどこかの空き家で説明をしたのだが、それを聞いたナノがここにつれてきて、今に至る。

「・・・・・・・・・エリアE」

「え?」

「・・・・・・・・・かつてテロ、そして廃墟に。公式ではそうなっている」

「公式では?」

深くエリアEのことを知らないギルはナノに聞き返すが、彼女は一度ギルに視線を投げかけてやがて見えてきた聖堂に目を向ける。
その聖堂はかつてプロンテラ大聖堂と呼ばれ、聖職者が必ず訪れる場所、だった。
今では別の場所に移されているが、ここはエリアE防衛の際に被害を最小限に留めた、英雄達が眠る。
避難勧告がでた時にまず一般人の救助を行い、命を賭けて・・・・・・・・・いや、落としてモンスターの殲滅をした聖職者達。
確かにエリアEは常人は訪れない場所なのだが、月に一度だけ現プロンテラ大聖堂から大人数でここに掃除に来るのだ。

「・・・・・・・・・これ、知っている?」

大聖堂に向かって歩く中、ナノは腕輪から一本の枝を取り出した。
一見普通の枝と何の違いがあるか分からない。
しかしそれが微量の魔力を帯びているのが分かる。

「なにかしら?」

「・・・・・・・・・古木の、枝」

「・・・・・・・・・!?ちょっと!?」

ロロが大声で非難の声をあげた。
ナノが取り出した古木の枝を使用はもちろん、持っているだけでも処罰されるものだった。
この枝を折るとどこからかモンスターを召喚される。
故に町の中に持ち込もうものなら牢獄に入れられても文句が言えない代物だ。

「・・・・・・・・・公式では、これが使われたことになっている」

古木の枝によるテロ。
当時そこまでこの枝が危険視されていなかったのはその特性にあった。
この古木の枝は折ったら即発動。
しかも召喚されるのは自分の目の前。
さらに言えばモンスターが真っ先に攻撃するのは目の前の人物。
自殺用としか思えない程のアイテムだった。
たまに上級冒険者が面白半分で折って半殺しにされたりするが、それでも被害は大きくなかったので危険視はされていなかった。
しかしエリアEにおいてその見通しは甘かったといわざるを得なくなる。
そう、テロはテロでも自殺テロが起こったのだ。
詳細は知らされていないがとある集団が同時に枝を折り、自殺テロを起こしたらしい。
この事態が収束した時、重く見た前国王は古木の枝を一級危険物とし、以前の5倍の値段で買い取っている。
集められた古木の枝は召喚されないように処置をし、処分するらしい。
そこまでゆっくりとナノは話、大聖堂の敷地内に入った。

「・・・・・・・・・だけど、それは表向きの事件」

「表向き?私達冒険者にすら隠蔽される?」

「・・・・・・・・・そう。事実は・・・・・・・・・ミストオブアインヘリヤル」

「ミス・・・・・・・・・?すまん。もう一回言ってくれ」

「・・・・・・・・・ミストオブアインヘリヤル」

「ミストオブアインヘリャル」

「・・・・・・・・・」

ギルは蔑むようなロロの視線と色のないナノの視線にザクザクと何かが刺さるような幻痛を感じた。

「・・・・・・・・・ミストオブ」

「いや、ナノちゃんもういいわ。バカは放っておきましょう」

「ひでぇ・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・ミストオブアインヘリヤル、それは貴方達が見た霧と同じ」

「ちょっと待てよ!つまりここがこうなったのはあの霧のせいだって言うのか!?」

無言で頷き、ナノは大聖堂の扉を開いた。
独特の音をたてつつ見えた大聖堂の中は、ステンドグラスから伸びる光で照らされ、幻想的だった。

「・・・・・・・・・あれはヴァルハラ・・・・・・・・・アインヘリヤルから無差別に戦士を召喚する」

「ヴァルハラって勇敢な戦死者を集めて来るべきラグナロクに備えるオーディンの私兵のことよね?」

「・・・・・・・・・そう。それの暴走」

「いやいやいや。というかまじでヴァルハラってあるのか?」

「何言ってんのよ。あるに決まってるじゃない」

いやロロ。
お前が聖職者でオーディン崇拝してるのは知っているが、少し黙っててくれ。

「・・・・・・・・・ヴァルハラが存在するかしないか、は問題じゃ、ない。
 ・・・・・・・・・要点はそれが起こるか起こらないか」

「確かにそうだけどよ」

実際問題としてミストオブアインヘリヤルが・・・・・・・・・霧が発生し、冒険者が襲ってくるという事態になったのだ。
・・・・・・・・・あれ?

「なぁ、なんでそんなことを隠す必要があるんだ?別に問題ないんじゃ・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

ついにナノは歩みを止め、大聖堂に飾られているオーディン像の前で止まった。
それを見た時、ナノの目に一瞬だけ感情が映ったが二人がそれに気付くことはなかった。

「・・・・・・・・・二人は、気付いた?」

「へ?」

「何がよ?」

「・・・・・・・・・ミストオブアインヘリヤル、その冒険者が死者だってことに」

思い出してみる。
確かにモンスターに襲われないというところはあったものの、その姿は冒険者そのものだ。
今だって話を聞くまであれが死者だなんて夢にも思わなかった。

「いや」

「・・・・・・・・・そう、17年前のエリアEは誰も気付かなかった。・・・・・・・・・ならば襲われた人たちはどう思う?」

「そりゃあ、冒険者が襲ってきた・・・・・・・・・ってまさか!?」

「・・・・・・・・・誰も気付かなかった。誰もが、何かが起こっていると気付きつつ、何も気付かなかった」

オーディン像を見上げていたナノは一呼吸を挟み、言い放った。

「・・・・・・・・・そして始まった。疑心暗鬼にかられた殺し合いが」

それこそがエリアE壊滅の真相。
誰もが隣の冒険者を怪しみ、僅かな容疑で殺し合いに発展する最悪の空気がエリアEには充満していた。

「・・・・・・・・・これが貴方達の知りたがっていた全て。貴方達の感じていた違和感は、あれが生者ではないということ。
 ・・・・・・・・・そして、これが世界の秘密の一端であるということ」

「世界の、秘密?」

「・・・・・・・・・」

世界の秘密。
間違いなくナノは何かを知っている。
それを問おうとして───

「ふふふ・・・・・・・・・やぁ諸君。迷える子羊と、哀れなる神の御使いよ」

いつのまにか大聖堂の中心に立っていた、司祭に遮られた。
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