2-40 ミストオブアインヘリヤル
自らに迫り来る斬撃を受け流しながらファルは苦々しい表情を浮かべた。
対する手に持つ石斧を力任せに振るう女は愉悦の表情を浮かべている。
「なんで冒険者が私達を襲ってくるのよ!?」
「知らねぇよ!」
ロロのもっともな言葉にギルが叫ぶように返す。
さらに周囲をゴブリンに囲まれており、ハンドガンを二丁構えたジーナと杖を掲げたティアマトがそれを殲滅している。
鈍器をもったロロは襲ってきた鍛冶師の格好をした女冒険者と対するギルに支援魔法をかけて援護している。
『かの者を癒せ、ヒール!』
石斧を捌ききれずに徐々に傷を作っていくギルを癒すが、それも焼け石に水だ。
何故ならギルと敵の間には明らかな実力差があり、一撃一撃の早さ、重さが比べ物になっていない。
「ロロ!アレス!」
今まで防戦一方だったギルが叫びをあげて石斧の猛撃をかわしながら首を落とすべく剣を振り払った。
もちろん技術差があるのに無理に隙を作らせたギルの負担は大きく、かすり傷と呼べない深い傷がいくつか刻まれる。
「マグナムブレイクウゥゥゥ!」
そんな文字通り身を削るような一撃はすぐに眼前に戻された石斧によって防がれるが剣を通して放たれた魔力は暴発し、小規模の爆発を起こす。
小規模とはいえ目の前で起こった爆発は完全に無傷とはいかず、敵は吹っ飛ばされた。
そこに待機していたロロがたたみかけ、今まで待機していたアレスが敵に向かって何かを投げつけた。
「これで………」
「終わりよ!」
アレスの投げた小瓶が敵の身体に当たって砕け、そのまま敵を炎で包み込んだ。
そこに追撃としてロロが鈍器を投げて牽制しながら跳んだ。
炎で包まれながらもすぐさま立ち上がって投げられた鈍器を弾き、ギルとアレスを睨みつけるが既に空にいたロロに気付くことなく。
「はあぁぁぁぁっ!」
「!?ちっ!」
敵がそれに気付いた時には既に放たれたとび蹴りは防ぐこと適わずさらに吹き飛ばされ、背後にあった樹に音をたててぶつかった。
「やったか!?」
「ギルはんそれはフラグや!」
「何わけわかんないこと言ってるのよ」
これだけの攻撃をうけて立ち上がれるはずがない。
そう思ったのも束の間、アレスの言葉を肯定するかのように敵は立ち上がった。
「な………嘘でしょ?」
「ちぃ!ロロ、アレス!さが………」
れ、と言う前に敵は踵を返して走り出した。
同時に周囲から襲ってきていたゴブリン達もいつのまにか消えうせている。
「………逃げましたね」
「まぁいいんじゃない?あたいらただ襲われただけなんだからさ」
拳銃を腕輪の中に放り込んだジーナと杖で背中を叩いているティアマトが3人に声をかけた。
どうやらこの二人もゴブリンの撃退に成功したようである。
そしてティアマトが突如頭に疑問符を浮かべ、一言。
「そういやファルファルはどしたん?」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
息を切らせながらも彼女は走っていた。
しかしその表情に苦痛の色はなく、ただ無しか存在していない。
右手にもった石斧から垂れ落ちる血に自身が怪我をしていることを理解しているがそんなことはどうでもよかった。
「………っ!?」
突如、彼女は立ち止まった。
その先にある者を見つめて。
「………レーギャルン」
「やぁ」
彼女は何かに操られるかのように石斧を構えた。
そして叫びながらレーギャルン………ファルに向かって走った。
「哀れだねぇ………何で戦っているのかも、どうしてここにいるのかも理解できない可哀相な魂」
ため息を吐いてファルは腕輪から赤い宝石が柄の中央に埋め込まれた西洋剣を取り出した。
それは青色の刀身を持ち、全ての魂を魅せるようにして鈍く光っている。
「さて、いくよノートゥング」
『judge』
女の声が剣──ノートゥングから鳴り響き、ファルは首を鳴らして言った。
「もちろん───死刑だ」
「さようなら、アインヘリヤル。いずれヴァルハラで………」
消え行く彼女を看取りながら、ファルは言葉を投げかけた。
「何か用かな?ジーナ」
いつのまにこの場に来ていたのか、ジーナはそこにいた。
「………いえ」
何か言いたげな、しかし何も言えないといったものか。
ファルは微かに微笑み、彼女の身体が完全に消えたのを確認すると振り返らずにいった。
「とうとう始まった。必然の滅びが。
だがまだ本当の始まりではない。そう、まだだ………」
「そう、ですね」
「予定通りだ。実に、僕の………否、我らの願いが成就する」
「………」
「まずは………この人物だ。不確定要素はないに限る」
一枚の写真を取り出し、ジーナに見えるように掲げた。
その写真の片隅に名前が書かれていた。
「………計画を第6段階から第7段階へと移行する」
ガルマー、と。
対する手に持つ石斧を力任せに振るう女は愉悦の表情を浮かべている。
「なんで冒険者が私達を襲ってくるのよ!?」
「知らねぇよ!」
ロロのもっともな言葉にギルが叫ぶように返す。
さらに周囲をゴブリンに囲まれており、ハンドガンを二丁構えたジーナと杖を掲げたティアマトがそれを殲滅している。
鈍器をもったロロは襲ってきた鍛冶師の格好をした女冒険者と対するギルに支援魔法をかけて援護している。
『かの者を癒せ、ヒール!』
石斧を捌ききれずに徐々に傷を作っていくギルを癒すが、それも焼け石に水だ。
何故ならギルと敵の間には明らかな実力差があり、一撃一撃の早さ、重さが比べ物になっていない。
「ロロ!アレス!」
今まで防戦一方だったギルが叫びをあげて石斧の猛撃をかわしながら首を落とすべく剣を振り払った。
もちろん技術差があるのに無理に隙を作らせたギルの負担は大きく、かすり傷と呼べない深い傷がいくつか刻まれる。
「マグナムブレイクウゥゥゥ!」
そんな文字通り身を削るような一撃はすぐに眼前に戻された石斧によって防がれるが剣を通して放たれた魔力は暴発し、小規模の爆発を起こす。
小規模とはいえ目の前で起こった爆発は完全に無傷とはいかず、敵は吹っ飛ばされた。
そこに待機していたロロがたたみかけ、今まで待機していたアレスが敵に向かって何かを投げつけた。
「これで………」
「終わりよ!」
アレスの投げた小瓶が敵の身体に当たって砕け、そのまま敵を炎で包み込んだ。
そこに追撃としてロロが鈍器を投げて牽制しながら跳んだ。
炎で包まれながらもすぐさま立ち上がって投げられた鈍器を弾き、ギルとアレスを睨みつけるが既に空にいたロロに気付くことなく。
「はあぁぁぁぁっ!」
「!?ちっ!」
敵がそれに気付いた時には既に放たれたとび蹴りは防ぐこと適わずさらに吹き飛ばされ、背後にあった樹に音をたててぶつかった。
「やったか!?」
「ギルはんそれはフラグや!」
「何わけわかんないこと言ってるのよ」
これだけの攻撃をうけて立ち上がれるはずがない。
そう思ったのも束の間、アレスの言葉を肯定するかのように敵は立ち上がった。
「な………嘘でしょ?」
「ちぃ!ロロ、アレス!さが………」
れ、と言う前に敵は踵を返して走り出した。
同時に周囲から襲ってきていたゴブリン達もいつのまにか消えうせている。
「………逃げましたね」
「まぁいいんじゃない?あたいらただ襲われただけなんだからさ」
拳銃を腕輪の中に放り込んだジーナと杖で背中を叩いているティアマトが3人に声をかけた。
どうやらこの二人もゴブリンの撃退に成功したようである。
そしてティアマトが突如頭に疑問符を浮かべ、一言。
「そういやファルファルはどしたん?」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
息を切らせながらも彼女は走っていた。
しかしその表情に苦痛の色はなく、ただ無しか存在していない。
右手にもった石斧から垂れ落ちる血に自身が怪我をしていることを理解しているがそんなことはどうでもよかった。
「………っ!?」
突如、彼女は立ち止まった。
その先にある者を見つめて。
「………レーギャルン」
「やぁ」
彼女は何かに操られるかのように石斧を構えた。
そして叫びながらレーギャルン………ファルに向かって走った。
「哀れだねぇ………何で戦っているのかも、どうしてここにいるのかも理解できない可哀相な魂」
ため息を吐いてファルは腕輪から赤い宝石が柄の中央に埋め込まれた西洋剣を取り出した。
それは青色の刀身を持ち、全ての魂を魅せるようにして鈍く光っている。
「さて、いくよノートゥング」
『judge』
女の声が剣──ノートゥングから鳴り響き、ファルは首を鳴らして言った。
「もちろん───死刑だ」
「さようなら、アインヘリヤル。いずれヴァルハラで………」
消え行く彼女を看取りながら、ファルは言葉を投げかけた。
「何か用かな?ジーナ」
いつのまにこの場に来ていたのか、ジーナはそこにいた。
「………いえ」
何か言いたげな、しかし何も言えないといったものか。
ファルは微かに微笑み、彼女の身体が完全に消えたのを確認すると振り返らずにいった。
「とうとう始まった。必然の滅びが。
だがまだ本当の始まりではない。そう、まだだ………」
「そう、ですね」
「予定通りだ。実に、僕の………否、我らの願いが成就する」
「………」
「まずは………この人物だ。不確定要素はないに限る」
一枚の写真を取り出し、ジーナに見えるように掲げた。
その写真の片隅に名前が書かれていた。
「………計画を第6段階から第7段階へと移行する」
ガルマー、と。
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