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2-38 裏側

丑三つ時というかなんというか、こんな時間にモンスターのいる場所で寝れるほど新米な彼らは図太くなかった。
どうにも夕方前にゴブリンと戦った時の興奮状態が続いているらしく、まったく眠気は感じられない。
むしろ身体を動かしたいくらいなのだが、それでは交代で寝ずの番をしている意味がない。
ギルの記憶によると自分の番は確か一番最後──ファルとティアマトは最初──で、アレスと組むことになっている。
何が悲しくて男と一晩語り明かさなければならないのか、と言いたくもなるがジーナと二人きりになるよりマシである。
ふと腕輪を起動させて時計を見てみるが、時刻は1時20分。
ギルの出番まで3時間40分もあった。
それまでこうして毛布に包まっているのも苦痛である。

「暇だ・・・・・・」

「・・・・・・・・・うるさいです」

「す、すまん」

間髪入れずにジーナに文句を言われ、口を閉ざす。
というかジーナも起きてるのか。
そう思いながら、テントの入り口付近にいる彼女を見ると

「ぶっ!」

「しっ!静かにしなさい」

「そうやで。今濡れ・・・・・・・・・じゃなかった。濡れ場やで」

アレス、それ訂正してない。
じゃなくて!
何で全員揃ってテントの外を見てるんだよ!?

「お前ら寝ろよ!」

「ふっ、ギルはんこんな面白・・・・・・・・・い現場、見逃せるわけないやろ」

今訂正しようか悩んだけど結局そのまま貫き通したよね。
こらアレス、何勝ち誇ってんだ。
無駄に誇らしげなアレスは放っておき、とにかく皆が見ているものを見てみたほうが早いと思い、外を見てみる。

「はぁ!?」

「─────?」

「────────。────」

そこには仲睦ましげに近い距離で話し合う二人の背中があった。
ぴったりと密着している彼らの位置は、私達恋人ですと言わんばかりの距離感だ。

「な、ななな」

「ね?意外でしょ?」

ロロが同意を求めてくるが、そういうのは隣にいるジーナを見てから言って欲しい。

「・・・・・・・・・」

修羅だ。
修羅が光臨した。

「いやー、怪しいと思ってたのよあの二人。
 ファルも時々ティアのこと見つめてたから、今日あたり何かすると思ってたけど。
 正解だったようね」

「ロロはん、さっき意外って言ったやんな?」

「うっさいわよ!」

「ぐべら!?」

ファルとティアマトから視線を外さずに後ろにいたアレスを蹴り飛ばすロロ。
それでも音が鳴らないのはどんな特殊技術なんだろう。
それはともかく実際あの二人の距離感が近いのはどうも気になる。
今朝においてはそういった雰囲気は微塵もなかったのだが・・・・・・・・・隠していたのだろうか?
思案しているギルを尻目にジーナは突然立ち上がった。

「あと10分ですか・・・・・・・・・誤差範囲内でしょう」

そう呟くと堂々とテントを出てファルとティアマトに話しかけた。
ロロが慌てて止めようとしたが、既に遅かったのは言うまでもない。

「あれ?もう交代?」

「早かったねぇ。でもあたいもそろそろ寝たいかな」

と、呑気に返事を返す二人だが。
                 ねむ
「ふふふ・・・・・・・・・どうぞ気持ちよく永眠ってくださいね?」

微笑みと共に言い放ったジーナだが・・・・・・・・・目はどう考えても笑ってない。
さらに空気がどこか怒気を孕んでいた。

「ジ、ジーナっち?何をそんなに怒ってらっしゃるのでありますか?」

「別になんでもありませんよ?ねぇ・・・・・・・・・ファル、さん?」

「・・・・・・・・・?」

その言葉に心底何のことか分からない、と首を傾げるファルを見てギルは軽く尊敬の念を起こした。
あの重圧の中であんな真似を出来るなんて、ファルすげぇ。
首を傾げたファルを見て毒気を抜かれたのか、ジーナも怒気を抑えて溜息を吐いた。

「もういいです」

「何が?ちょっと待って、考えるから」

「考えなくていいですよ!何記憶掘り出してるんですか!?」

「・・・・・・・・・?」

「ファルさん、寝る!私、寝ずの番!わかりました!?」

何故にカタコト。
しかしその勢いに押されたファルは若干引きつつも頷き、こちらに向かってく・・・・・・・・・ってそれやべぇ!?

「アレスさっさと寝・・・・・・・・・」

「ぷしゅー」

寝るどころか気絶していた。
そういえばさっき蹴り飛ばされてたな・・・・・・・・・。
ファル達がテントに入る数秒の間にギルはこっそりと毛布に包まった。
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