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2-34 dream

がたんごとん。
がたんごとん。
ペコペコ形の魔法機械が荷車を引く振動を感じつつロロはそっと隣で寝ているギルを見る。
寝ていても相変わらずの間抜けな顔を晒していた。
どうやら昨夜はあまり寝られなかったらしく、夜中にランニングに行っていたらしい。
子供か、そうファルが呟いたことにギルは抗議していたがロロも同感だった。
確かにロロは用意を色々忘れていた部分もあるのだが、睡眠だけはちゃんととっている。
お肌に悪いというのもあるが何より初めての実習で実力を発揮できないのも困るものだ。

「そういえば・・・・・・・・・聞きそびれてたのよね。ティアマト、ちょっといいかしら?」

「うん?何よ?」

「先日まで貴方戦闘時は聖職者服着てたわよね?なのになんでレイピアもちながら魔法使いの服着てるのよ」

そう聞くとティアマトは若干首を捻ってから納得したように呟いた。

「あー、この世界そういうところあるねぇ。魔法使いは杖だけ、っていうか」

「ティアマト?」

「あたいにとってはこれが当然なんだよね。こう、職業で決めるのは変だと思うのよねー」

そういえばファルも似たようなことを寮についた日に似たようなことを言っていた気がするなとロロは思い出してから聞いた。

「そもそもそんな簡単に転職できるの?制服が届くのだって数日はかかるのが普通よ?」

「気にしない気にしない」

ひらひらとティアマトは手を振ったのでロロはそれ以上追求するのをやめた。
元々そこまで気になることでもないし、単なる話のタネにふっただけだ。

「それよりギルっち、顔が崩れてるけどいいのん?」

「へ?って、なんてだらしない顔してんのよ!?」








僕はその人にべっとりだった。
何でかは今となっては思い出せない程遠い記憶。
確かその頃くらいにその人はある人に懐かれたんだったっけ。
だから取られると思って、取られたくないと思って、ただくっついていた。
あの人は僕がくっついているにも関わらずいつも通り無表情で母さんと家事をしている。

「こらギル。離れなさい。メフィスの邪魔でしょ」

「やだ」

「ほら、メフィスも嫌ならちゃんと言うのよ」

「問題ない」

「ほら!」

僕は勝ち誇ったように笑い、逃がさないようにさらに身体をくっつける。
困ったような顔をした母さんは溜息を吐いて言った。

「はぁ・・・・・・・・・ギル、独占するのも程ほどにしなさい。メフィスは貴方の抱き枕じゃないのよ」

「いや私は・・・・・・・・・。ターニ・・・・・・・・・」

「母さん、でしょう?メフィスもいつになったら慣れるのよいったい・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・私は問題ない、母さん」

「問題ないわけないでしょう。いつあの人の因子が覚醒するか分からないのよ?
 普通に過ごす分には構わないけど、いつもべったりってのは問題があるわ」

僕には母さん達が何を話しているのか分からなかったけど、何か深刻な話なのは分かった。

「とにかくギルがくっついているとメフィスがちょっと危ないのよ。だから一人で遊んでなさい」

「・・・・・・・・・はぁい」

そう、頷くしかなかった。
視界の端に映った彼女、メフィスの顔が少し困った色を浮かべていたからだ。
無表情の彼女がそういう顔をするということはよほど困ったことがあるのだろう。
完璧には理解していないが子供特有の感覚でギルはそう渋々ながら納得し、家を出る。

「どうしたのギルくん」

「ロロちゃん」

何の因果か家を出たら目の前に従兄妹のロロがいた。
6歳児であるロロだがここは私の庭だと言わんばかりにイズルートの通路を全て把握している。
以前ロロについてイズルートの探検をしたことがあるのだが、酷い目にあった。
というか対面早々どうしたのか、と尋ねられるほど落胆した顔をしていたのだろうか。

「お姉ちゃんが最近冷たいんだ」

「いつもじゃない」

「・・・・・・・・・そうともいう」

正確に言うなら冷たいのではなく無関心といった感じである。
だがそれでもギルにとって姉は大好きだった。

「知ってるよ!ギルくん、そういうのって『しすこん』っていうんだって!」

「しすこん?」

「うん!この前ママがパパと喧嘩してる時に『しすこん』って言ってたんだよ」

「へぇー。僕は『しすこん』なのか。ところで『しすこん』って美味しいの?」

「きっと甘いんだよ」

「そうなのかー」







「!?」

全身に鳥肌が立つように感じ、飛び起きる。

「・・・・・・・・・っは・・・・・・・・・・はぁ、はぁ」

数日前に見た夢を思い出す。
キーワードは、姉。

「メ、フィス?」

今度はやたらはっきりとした夢だった。
だがどうもおかしい。
知らない。
こんな記憶、あるわけがない。
前回は妄想だと片付けたが二回目ともなると自身の記憶を疑わざるを得ない。

「ロロ・・・・・・・・・ロロ?」

あれは・・・・・・・・・ロロに少し似ているが、母さんだろう。
というかその後に幼い頃のロロと会ったので間違いないだろう。
もしこれが実際にあった出来事だと仮定すると・・・・・・・・・いやその前にこんな記憶、覚えがないのだ。
そもそもなんで最近になってこんな夢を見るように・・・・・・・・・

「大丈夫?寝てる時は締りのない顔してたけど、今は酷い顔よ?」

「うおっ!?」

ぽつりと呟いたその名前の本人が心配そうに目の前にいた。
それに驚き後退しようとするが壁に身を預けて寝ていたので少しも動けなかった。
幼馴染で羞恥心とかがある程度麻痺してるとはいえ・・・・・・・・・こんなに近くに女の子がいるのは落ち着かない。

「どうしたのよ?顔、赤いわよ?」

「な、なんでもねぇよ?」

「なんで疑問系・・・・・・・・・」

「う、うるせぇよ!」

顔が熱いのを自覚しながらもふと思いつく。
姉が妄想云々ならロロに聞けばいい話じゃないか。
夢の中でもロロはメフィスという人物をよく知っていたようなので、聞けば分かるだろう。

「なぁロロ」

「何よいきなり真面目な顔して」

「俺って姉なんていたっけ?」

は?
そう言いたげに間抜けにも口が開いたままの状態で硬直するロロ。

「ギ・・・・・・・・・ギル?」

「なんだよ」

「頭、大丈夫?」

まるで鬱病にかかった家族に触れるように、恐々といった様子で尋ねられた。

「!?」

そうじゃないか。
普通に考えたらこう言われるに決まってたじゃないか。
どうかしていた。
夢と現実をごっちゃにするなんて精神的にやばいこと確実である。

「ファル。ちょっとギルが疲れてるみたいだから今日はよく休ませていいわよね?」

「うん?なにそれ?」

「ちょっ!ロロさん!?そこまで深刻にならなくてもいいんですよ!?」
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