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2-19 偽りの助言者

ジュノーでほのぼのと過ごしているであろうお母様、俺は今とても理不尽な目にあっています。

「あ、これも美味しそうね。店員さーん」

「ちょっと待って下さいお姉さま。これも悪くありませんよ」

「ぶっちゃけた話さ、どっちも頼めばいいんでね?どうせ男子達の奢りなんだからさ」

ニヤニヤとした笑みをこちらに向けるのはティアマト。
財布の中身をさりげなく確認してはみたが、足りるかどうか正直微妙である。
隣のアレスなんて壊れた笑みで剣を撫でて………

「って待て!落ち着けよアレス!」

「ふふふ……どうせワイなんて腐ったチョコレートや……」

危ない目つきをしており、間違っても近づきたくない。

「チョコレートって腐るの?いや、腐るんだろうけど………ふむ?」

一方いつものように──といっても今はブツブツ何かを呟いているが──涼しげに本を読んでいるファル。
模擬戦の結果、男子チームはぼろ負け。
対する女子チームは傷一つすら負っていない圧勝。
ロロは当然のように罰ゲームを提案し、トナ校長はそれを承諾。
今の時刻はちょうど9時であり、この店に入ったのは5時前。
お察しの通り、男子の財布を犠牲にして運ばれてくる品々にギルとアレスの顔は確実に青くなっていった。
………アレスは青いを通りこして白くなっているが。

「俺、今月生きられるかな………?」

ふと呟いた一言にファルはさりげなく摘んでいた唐揚げを食べつつ言い放った。

「アレスはともかく、ギルは大丈夫だと思うよ?」

「どうしてだよ。言っておくがな、今の段階で俺はこの週すら越せるか謎なんだ」

この店の支払いはアレスが4割、そしてギルとファルが3割負担である。
一番支払いの多いのがアレスなのは、彼が役立たずであったからである。
それはともかくとしてファルの言葉にギルは相変わらず甘い物を頼み続ける女性陣を見る。
………胸焼けがしてきた。

「だってギルには甲斐甲斐しい幼馴染がいるし」

「お、おお………」

何ということだろう。
俺は今、幼馴染の存在を神に感謝したいほどだった。
これが幼馴染………!

「助かるぜファル。食費はいつか返すからよ」

「………そう来るんだ。まぁ明日辺りで分かるでしょ」

「うん?なんだよ?」

どこか呆れた様子のファルに疑問を感じるがその前に口の中に何かが突っ込まれた。

「ひょ?………ぁ………うあっつぁ!?」

恐らく揚げたてであろう熱い唐揚げを口に放り込まれ、あまりの熱さに椅子で悶絶するギル。

「鈍いって厄介だよね………最近お弁当に何を入れたらいいか質問に来るし、目的が丸分かりなのに何故か隠そうとするし」

「あん?」

「そこまでしておいて自覚はないって、そしてギルはされておいて自覚ないってさ。君、どこのラブコメの主人公なの?」

「はぁ?俺がラブコメの主人公ならまず誰かと俺が友達以上恋人未満な人物がいることが前提だろうが」

「………はぁ」

人の顔を見て溜息とはむかつく野郎だな。
って、甘すぎ!匂いが甘すぎ!

「………ちょっと外の空気吸ってくる」

「いいけど、逃げないわよね?」

「逃げたらロロ達だけじゃなくてアレスにも殺されるから逃げねぇよ」

ロロが逃げ、と言った瞬間背筋が凍りつくような気がしたがきっと気のせいだ。

「ふ………ふひひ」

「………」

きっと気のせいだ、うん。







「はぁ」

ティアマトが選んだ有名らしいレストランから出ると、既に辺りは真っ暗で点々と電灯が並んでいた。
最初はトナ校長がこちらについてこようとしたのだが、突然現れたガルマー先生に無理矢理連れて行かれた。
手際の良さから察するに常習犯らしい。

「さみぃな」

時期は4月で、この時間帯にもなるとまだまだ寒い。
たまに冒険者やプロンテラ騎士団の人が通るがそれでも一般人のほうが圧倒的に多いのが分かる。
昔は街道に冒険者が溢れていたらしいが、今ではこんなものだ。

「占いをしませんか?」

「は?うお!?」

ボーっと人ごみを眺めていたらいつのまにか目の前には灰色のマントをかけた黒髪の妖しい男がいた。
しかも占いをしませんか、と来ると妖しいを通り越して宗教勧誘かとすら思えてくる。
………さすがにそれは邪推か。

「いえ、俺はそういうのを信じていないので」

「ええ、私もです」

………。

「………いったい何だよ」

そう聞くと男は何が面白いのかクスクスと笑いながら名乗った。

「私の名前は………山田太郎とでもしておいてください。ですから太郎山田ですね」

「偽名かよ。というかお前」

「太郎、と呼んでください」

ニッコリと太郎は柔らかく微笑んで言うが言動が全てをダメにしている。

「………太郎はアマツの出身か」

「秘密です。ところで貴方は何を?」

「別に何も」

でしょうねぇ、そう呟いて太郎は横に並んだ。
この変人とあのこれでもかと甘い香りに隣に座るは狂人の如く目がぎらついていたアレスと、どちらがマシなんだろう。
………究極の選択だろうかこれ。

「そうですか。ところで知ってます?真実を知るには全てを知る必要はないことを」

「は?」

「そうですね………例えばよくある、犯人はお前だ!といったお話がありますよね?」

「素直にミステリーって言えよ」

「名前なんてどうでもいいんですよ。伝われば。まぁ、とにかくとしてある人物が犯人だという真実があるんですよ」

「………」

俺にもわかる真実がある。
太郎は聞いてもいないのに急に語り始めた、危ない奴だということだ。
かえりてぇ………

「ですがまだ3歳にも満たない幼子がその犯人を当ててしまう、そんなことがあり得るんですよ」

「随分頭いいのなその3歳児」

「いえ、違いますよ。ただの勘じゃないですか?」

「って勘かよ!?んなもん言えば誰にでも謎解けるじゃねぇか!」

そんなもの、そもそも話として何が面白いんだ。

「謎を解く必要はないんですよ。ただ真実が分かる、例え全ての謎が分からなくても」

「何が言いたいんだ?電波かお前?」

「占いの結果を受信した結果ですが」

「って勝手に占うなよ!?」

「それは失敬」

こいつ、半笑いで謝罪を返されて気がすむとでも思っているのだろうか。

「ただの忠告ですよ。占いの結果の、ね。全ての謎を解かなくても真実に辿りつくことはあります。
 問題はその真実をどういった面から見つめるか、ということです。
 全ての謎を解ければ………いえ、その辺は人それぞれですか」

「何が言いたいんだよ本当に」

「さぁ?それは、貴方が感じるべき真実です。私はいったい何を言いたかったのか。
 そんなことは私にしか分かりません。
 例えここで私が貴方に意図を話したとしても、貴方は私の言いたいことの100%を理解することはできませんから。
 ………まぁ、本当は真実なんて何もない、という真実だってありますが」

例えば
そう呟いて彼は人が行きかう街道へと歩き出した。
直に人ごみに紛れて見えなくなるだろう。
やっと話から開放された、そう思いレストランへと入ろうとした時、その声は聞こえた。

『例えば、貴方が剣を振り続けるその気持ちは真実だと思いますか?』

「っ!?」

振り返るが、既にそこには灰色のマントを着けた妖しい人物はいなかった。
………よし、今度会ったら殴るか。
意味分からない人物だからいいだろう。
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