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2-14 新キャラはなんか濃くて

既にフィールドは混沌と化していた。
泥沼、といっても過言ではない。
互いが互いを潰しあい、だがお互いの司令官へのダメージは皆無。
片や司令官は炎のように、片や司令官は風のように攻める。

「いやさ、なんでそこに無敵要塞ドロセラ置くんだよ。明らか意味ねぇだろ」

「別に何をしても僕の勝手でしょ?あとここにカードを一枚伏せて終わりかな」

「・・・・・・・・・あんたら緊張感ないわね」

「あ、ファルさん。くそ野郎が嬉しそうな顔してますね。たぶん良いカードです」

「ってジーナも何混ざってんのよ!?」

ギルとファルがやっているのはダブルダブル。
わりと人気のカードゲームで、モンスター達を使って相手を倒す戦略シミュレーションだ。
このゲームにレアカードという概念はなく、ただ強いカードは使う制限が酷いだけだった。
それなら製造元が儲からないんじゃ、と思うがそれは素人考えである。
なんとこのダブルダブル、フィールドにカードを置いたら魔法で立体化するのだ。
一部から魔法の無駄遣いとの言葉があったが、そこはそれ、面白ければいいのだ。
とにかくこのカードにかけられている魔法は続いて200回が限度。
それ以上使うとカードが破れる利益優先主義丸出しのゲームだ。
もちろんそんなことをすればカードの補充等で問題が出るがカード屋でカードを有料で交換してもらえるのだ。
なので予備も合わせてデッキを組めばまず破れることはない。

「パサナ(虚弱体質)を進軍させて直接攻撃だ!」

「スキッドトラップ発動。まさか本当につっこんでくるとは・・・・・」

「のうっ!?俺のパサナ(虚弱体質)が無敵要塞ドロセラに成す術なくやられてる!?」

「触手に攻められる虚弱男子ですか・・・・・・・いいですね」

「・・・・・・・・・はぁ」

この面子、とある教室でカードゲームをしているが時刻は既に10時。

「ねぇ」

「はい?何ですかお姉さま」

「クラスってここで合ってるわよね?」

「と、思いますが。あと集合時刻も既に2時間過ぎてますね」

腕輪に送られてきたクラス表を見て来た4人だが、集合時間の8時から長い時間が過ぎていた。
4人が同じクラスということにファルはどことなく作為的なものを感じ取り、しばらくソワソワしていた。
だが自分達以外来る気配のない状況に痺れを切らしたギルがダブルダブルを出してから今に至る。

「誰も来ないな」

「そうだね。でも呟きながらカードを伏せたら見逃してもらえると思ったら大違いだよ?」

「くっ・・・・・・!」

場は膠着状態。
だがどう見てもファルの優勢だった。
というよりギルは遊ばれていることが明白だ。

コト・・・・・・・

「うん?」

ロロが物音に反応して振り返るとそこには机と椅子だけで誰もいない。

「・・・・・・・・・?」

気のせいか、そう思いギルとファルのゲームを見ようと思って向き直ると、再び物音。
いったい何なのか、そう思いつつ後ろを振り向くと

「ひっ!?」

ミカン箱があった。
いったいいつ、誰が、何のために。

「なっ!?」

「うん?・・・・・・・・・あれ何なんだろうね。もういいや、チェックメイト」

「ちょっ!何そのモンスターハウス!?」

ギルをいたぶるのに飽きたファルがギルに速攻を決め始めるのを尻目にジーナはそのミカン箱をじっくりと見た。
心なしがたまに動いている気がするし、何か小さな穴が空いている。

「まったく何よこのダンボール。中に何が入ってるのよ?」

渋々とそのダンボールに空けられている穴を覗き込むロロ。
そして光が入らないそのダンボールの中から見えたのは・・・・・・・・・一対の目。

「ひゃあああああああああああああああああ!」

「な、何ですかお姉さま!?」

「目!目がっ!こっ、こっち見て・・・・・・!」

しかも先程より明確に動いている。
どうやってかは知らないが、少しずつこちらに確実に動いてきている。

「勝ちっと。それで何なのそれ?」

「ファルさん。あれ、生き物が入っているようですが・・・・・・」

「まぁ人間くらいは入れそうだよな」

ガタガタガタとどんどん震えが大きくなり、いよいよ何かが起きる、そんな緊張感が場を支配した。
ギルはいざという時にダンボールを蹴り飛ばす準備をし、ファルは退路をチェック。
さらにジーナはさりげなく見えないように裾の中でハンドガンを持ち、ロロは絶叫寸前だ。

「・・・・・・・・・!・・・・・・・・・・!?・・・・・・・・・っぷはぁ!」

いったい何が出てくるのかと思えば、中からはおんにゃのこが出てきた。

「なぁんだ、ただの女の子か」

「何納得してんのよ!」

「いやさ、爆弾入ってるよりマシだろ?」

「何よ理屈は!?」

後ろでギャーギャー言い争っている二人を呆れ顔で見て、その出てきた子を観察するファル。
緑のショートヘアのその子は何やら空に向かって拝んでいた。
正直、係わり合いになりたくない部類であった。

「ふ・・・・・・・・・ふふふ。ようやく・・・・・ようやく出られた!感謝だよだよ!」

クルリと振り向いて妖しげな笑みを浮かべる緑子。
その狂気すら帯びた笑みに全力で教室を出て行きたい衝動に駆られつつもファルは聞いた。

「えっと、君は?」

「あたいの名前?やーん!ナンパ?ナンパなの?」

「・・・・・・・・・いやだから名前は?」

「でもダメ!あたいはあたいの信じる神に身を捧げるって決めてるの!」

ダメだこいつ、話が通じねぇ。
ギルに助けを求める視線を投げかけるファルだが、その顔は罵倒してくるロロに向けられており、
微塵もこちらを気にしている様子はない。
最後の希望のジーナは面白そうに自体を静観している。

「それで、名前は何かな?」

「うん?あ、そうだね。あたいはティアマト=ルイド。よろしくね!それであんたの名前は?」

「・・・・・・・・・よろしくティアマト」

微妙に視線を逸らしつつ挨拶をするファル。
名前を言えば何かされるわけではないが、何か教えたらまずい気がする。
ぶっちゃけただの被害妄想だが、ダンボールから出てきた彼女、ティアマトはそれほど奇抜すぎた。

「何自己紹介飛ばしてよろしくしてるんですか。あ、これはファルさんです。私はジーナ。
 あっちで言い争っているのはく・・・・・・じゃなくてギルとロロさんです。よろしくお願いします」

「うんうん。よろしくねファルにジーナ・・・・・・・あ、えい!」

何度も頷くティアマトだが、何を思ったのか手元のダンボールを投げつけた。
射線上にいるのは・・・・・・ギル。

「だからさ、例えばあれがミルクだとするめ!?」

「貴方!昨日あたいのこと助けてくんなかったでしょ!名前覚えてるんだからね!」

「な・・・・・・・・・・・・・・な?・・・・・・・・・何のこと?」

身に覚えのないギルとしては首を傾げるばかりだが、ティアマトはその様子にさらにご立腹なのか床を何度も踏みつけていた。
その時ギルは気付いた。
こいつ、胸でけぇ。
しかし次の瞬間、そんなことは頭から消し飛ぶこととなる。

「昨日あたいが廊下にいたらいきなり水鉄砲で攻撃してきたでしょ!?
 かすった頬から血が出たんだから!というかあれ水なの本当に!?」

「・・・・・・・・・はい?」

「まっ、とぼけちゃって!私誰かが貴方の名前叫んだの覚えてるんだから!ギル、って!」

「待て。何のことだ?」

ギルが本気で困惑しているのを尻目にファルとジーナ、さらにロロは置かれているダンボールを見つめた。
そういえば昨日、こんなダンボールが廊下においてあったような気がする。
さらに言えば水鉄砲で弾が貫通していたような気もする。
3人は無言で顔を合わせ、頷いた。

(((黙っておこう)))

真実は時として残酷だ。
本当の事を言ったところでティアマトの標的がこちらに向かうだけで、言う必要性が3人には感じられなかった。

「それでティアマトでいいかな?何でダンボールを被ってたの?」

「あ、ちょっとファル聞いてくれる?実はさ、これ一昨日くらいの話なんだけど」






「ふん、ふん、ふふーん」

気分よく鼻歌を歌いながら裏庭の花壇で雑草を抜いていくティアマト。
長年放置されていたのか花壇には雑草に類するものしか生えていなく、彼女としては腕が鳴った。
これからあらゆる花を育てるのだ。
なに、時間は卒業するまである。
未来に夢を馳せるティアマトは気付かなかった

「あ、手が滑った」

小さな呟きと共に落ちてきたそのダンボールに。
まるで謀ったタイミングかのようにそれはティアマトに覆いかぶさった。






「何か突っ込みどころ満載なんだけど」

ロロの呟きに「ですね・・・・・・」とジーナは同意するがファルは何かを考え込むように顎に手をあてていた。

「第一よ、外せばいいだけだろ?」

「ふん、それは素人考えだよギル!何とこのダンボール、入ったら何故か出れない!」

「・・・・・・・・え、なんで?」

「いやさ、あたいもその辺よく分かんないんだけど。おかげで昼食を二回も逃しちゃったんだよね。
 一回は出られたんだけど・・・・・・・・・」

一回出られたならなんでまた呪われているみたいなダンボールに入るんだ。
そんな視線に気付いたのかティアマトは話し始めた。






子供が何やら景品がどうのとか言っていた。
よく分からないけど何かのイベントらしい。
ほらさ、「やでー!」とか叫んでいる人が廊下を走っていくし。
あたいもついテンションが上がってその後に続いたのよ。
そうしたらいきなり衝撃が走って気付いたらダンボールの中・・・・・・・・何その微妙な顔?





「・・・・・・・・一度出た方法で出られなかったの?」

「それがね、最初は人に助けてもらったから無理だった」

「なんで再びダンボールに?」

「いやぁ、さすがに忌々しかったからってその辺に捨てるのはよくないねぇ。あっはっはっはっ」

ようするに二度目は自業自得らしい。
そんな中ファルはさりげなくダンボールを腕輪に回収していた。
彼はよくよく思い返してみれば窓からダンボールを落としていた。
窓から見下ろしてみてもダンボールしかないので誰もいないと思い、
後で回収に行けばいいと思っていたが行って見ると誰もいない。
なので今の今まで忘れていたのだが・・・・・・これは言うべきではないだろう。

「ひょっとして不幸体質ってやつか?」

「うん?その辺はわかんないけど、確かちょっと前に港で涼んでたら上から嘔吐物が・・・・・・」

「・・・・・・・・・・ちょっと待て。ひょっとしてそれも一昨日の話か?」

それならばギルには心当たりがある。
お願いだから肯定しないでくれ、そんなことを願いつつ聞いてみるが

「よくわかったね」

「・・・・・・・・・」

ロロは「どうすんのよあんた」と問いかけるがギルは少し考えた後、ギルと同じ選択をした。
すなわち、黙秘権の行使。
ジーナもジーナでダンボールごとティアマトを水鉄砲で貫いていたかもしれないので、ただ笑みを浮かべるだけだ。
まったくうちの幼馴染達は・・・・・・ロロはそう言いかけて口が止まった。

「そういえば昨日は屋上に行こうとしたら誰かに階段から突き落とされたね」

「・・・・・・・・・」

思い返してみるが、そんな記憶は微塵もない。
しかし屋上は普段立ち入り禁止なわけで、そう何人も一日に入るとは思えない。
あの時は周囲の状況なんて見る暇もなかった。
そういえば屋上に出た時、ドアの軋むような音と共に何かが落ちるような音がしたような気がしないでもない。
結論

「私達にできることがあったら何でも言ってね?」

笑顔でなかったことにした。







『めちゃくちゃ長くなったな・・・・・・』
「今日はえらく書きましたね。病気ですか?」
『なんでだよ!?』
「いえ、とうとう黄色い救急車を呼ばなければ、と思いまして」
『いや呼ぶ必要は・・・・・・ってなにその顔!?何うずうずしてんの!?ひょっとして呼びたいだけかこんちくしょう!』
「はい」
『あっさり肯定!?』
「それは置いといてですね。新キャラ出てきましたね」
『あー・・・・・・うん。実は見てのとおり、ちょくちょく話に出てるんだけどね』
「今回でレギュラー入りですか」
『不幸少女はもともと考えるキャラに入ってたからね』
「酷い話ですね」
『まったくだ。それにしても嘔吐物落下は溜まり場の人に見抜かれてたんだけどな。お約束だし』
「お約束でそんな扱いを受けるティアマトさん、可哀相ですね。この外道」
『ひでぇなおい。ま、今回は思いのほか長くなりすぎてもう一人のキャラ出せなかったんだけどな』
「いつもの2倍程は書いてますからねぇ・・・」
『なんだよ。まぁカードゲームに関しては今後もちょくちょく出るかもしれない。
 え?ダブルダブルのルール?んなもん細かく考えてねぇよ。というわけでさようなら!』
「さよならです」
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