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主従クライマックス!『タイトル未定』

前書き

これはBALSENがちょっとだけマジになって書いてみたただの小説です。
RO小説ではないので、「ああん?RO小説の書かないBALSENなんてただのタヌキだろ」って人には推奨できません。
タイトルは適等で、まぁ続きは書いたとしても投稿するかは別ですが、それでもいいという方は非常に拙い文章ですが、コーラにポップコーンでもつまみながら不真面目にお読み下さい。
真面目に読むと損します。






誰もが言葉を発さずに静かにその場に座っていた。
しかしその誰もがこれから起こることに同じ未来を予想していた。
一言も喋っていけないのは形式上これが重要な儀式だからだ。
対する彼女はガチガチに緊張しまくって忙しなく視線を彷徨わせている。
金髪ポニテの端整な顔立ち、そしてすらっとしたスタイル、さらに文武両断の彼女の名前は東雲夕菜。
対する俺、朝霧真は静かに目を閉じて正座をし、時を待っていた。
そしてその静かな和室に誰かが入ってきた物音を聞くと目を開け、その人物を見た。

「・・・・・・・・・」

障子を開けて入ってきた白ヒゲのその人物は東雲春樹様。
夕菜のお祖父さんにあたり、東雲家の当主でもある。
春樹様は座っている全員を確認すると一番奥に座り、胡坐をかいた。

「ふむ。真」

真は「はっ」と声をあげて静かに立ち上がった。

「夕菜」

「ひゃ・・・・・・・・・ひゃい!」

高い声をあげて勢いよく立ち上がった彼女を皆は微笑ましいものを見るかのような目で見守った。
春樹様は眉を顰めて静かに問うた。

「して真。決めたか?」

「はい」

「!?シ、シンちゃん・・・・・・・・・」

今日は2月26日。
夕菜の17歳になった日であり、免許皆伝になってから初めての誕生日でもある。

「俺は・・・・・・・・・」

一旦言葉を切り、静かに春樹様を見上げる。

「夕菜を主と認めることは出来ません」











始業式、どこの学校でも校長は長話が好きなのかと思いつつ真は欠伸をした。
校長の話を要約するとこうだ。
新入生に神代学園の生徒らしく接しましょう。
今、孫が反抗期に入っているとか話し始めているが要約するとそんな感じだった。
・・・・・・・・・あ、そこからまた最初にループするんだ。

「真・・・・・・・・・真!おい真!」

うとうとしていると横で退屈そうにしていた男友達の後藤明が声をかけてきた。
こいつはオープン変態で、顔は凄く整っているのだが変態すぎて女子にもてていない人物である。
よくクラスの女子にセクハラとか覗きで袋叩きにされている。

「どうしたんだよ夕菜ちゃん?何か元気ないぞ」

明が心配そうに見るその先にはどこか落ち込み気味の夕菜の姿。

「どうせお前が何かしたんだろ?例えば夜這いしたりとか手篭めにしたりとか・・・・・・・・・・・・じゅるり」

そのシーンを妄想しているのか垂れてきた涎をぬぐってだらしない笑みを浮かべる明。
拒絶反応をおこした周囲の生徒が一歩ぶん離れた。

「何もしてないけど」

「そしてそして風呂場に突入して、やん!真ちゃんえっち!」

「・・・・・・・・・・・・」

明は既に話を聞いていないでトリップしていた。
まぁ問い詰められたところで答えることは出来ないし、出来たとしても茶を濁すだろう。
夕菜の一族は代々何たらっていう超剣術を身に着けており、真の一族は主に仕えて影から支援するんだ。
そして夕菜の東雲家に俺の朝霧家は代々仕えており、今回もまた周囲は俺が東雲家の夕菜に仕えると思ったらしい。
だけど気に入らないことがあった真はそれを拒否、朝霧家を追い出されて今に至る。
こんなことを誰に言えようか、いや言えまい。
朝霧家を追い出したのは真の父で、他の人物はそれを止めたらしいがさすがの現当主の力は強かった。
まぁ朝霧家に関わらず東雲家にも出入り禁止を食らったんだが。
しかし東雲家は朝霧家とまったく逆の構成で怒っていた。
当主の春樹様は「そうか」の一言で解散を命じたが他の重役達からは非難の嵐。
本当の意味で出入り禁止を食らったわけではないのだが使用人に見付かると追い出されるのは間違いない。

「そのおかげで完全に自由になったわけだけどね」

この為に夕菜を拒絶したわけではないが、やはり自由というのは心が躍る。
最悪こうなる事を想定してあの主を決める会議の前に住みか、それにバイト先も見つけていた。
これで毎日夕菜相手に投げられたり殴られたり蹴られたりすることはない。
・・・・・・・・・別にそのことが嫌になって主従を拒否したわけではないのだが。
かくいうわけで俺、朝霧真ははれて自由の身になりました。








「ほげー」

「ゆ、夕菜ちゃん?どうしたんですか?変ですよ?」

東雲夕菜は放心していた。
なんでこうなった、何度もそう自身に問いかけるが答えは返ってこない。
家族同然の付き合いをしていた、いつも一緒にいてくれた真ちゃんが初めて私を拒絶した
東雲家と朝霧家の主従関係は絶対に結ばれるというわけではない。
だが代々主従を続けているともう確定となりつつあって、誰もが真は夕菜と共に生きるだろうと思っていた。
しかしその結果の真の破門。
朝霧家の誰に聞いてもその理由は知らないらしく・・・・・・・・・
いや、一人彼の母親だけが何かを言いたげにしていたが、聞きだせるような雰囲気ではなかった。
私、何か真ちゃんに悪いことした?
思い返してみるがそれらしき事はまったくしていない。
本人に聞き出そうにも前もって念入りに準備を進めていたのか家を追い出された後がまったく分からなかった。
どうしよう・・・・・・・・・もう会えないのかな。
涙がじわりと滲み出し、失意のまま真ちゃんがいたほうを見る。
そう、真ちゃんはいつもこんな感じでやる気がなさそうに、それでいて眠そうに話を聞いて・・・・・・・・・

「って、えええええええええええええええええええ!?」









「ななななな、なんで真ちゃん学校来てるの!?」

朝から呆けていた夕菜が慌てて真のクラスに乗り込んできたのはホームルームが終わった時だった。
冬休みが昨日終わり、登校日である今日は始業式と簡単な報告だけの予定だ。
きっとホームルーム中もこっちにきたくて悶々してたに違いない。
ちなみにだが、夕菜はあの後始業式を妨害したとして生活指導の先生に連れて行かれた。

「なんでって・・・・・・・・・ここの生徒だし」

「いやいやいやいや!そういうことじゃなくてだよ!」

言いたいことは分かっていた。
朝霧家からの支援を失った自分が何故こうやって学校に通っていられるのか。
言ってしまえば、学費とかどうしてんだお前、ということだ。

「うっひょう!夕菜ちゃん萌え!」

「ひぇ!?」

突如沸いた明に夕菜が短く悲鳴をあげてあとずさった。

「落ち着け馬鹿」

「馬鹿!?挨拶しただけなのにこの仕打ち!?」

「・・・・・・・・・」

この馬鹿、本当にそれが挨拶と認識しているのだろうか。
夕菜はそんな馬鹿から最大限距離をとりつつ真に話しかけた。

「えっと、真ちゃん?家とかどうしてるの?」

まず最初に聞かれたのがどこに住んでいるのか、というものだ。
これは今や家なき子になった真のことを考えると誰もが聞くことだろう。

「知り合いのところで泊まらせてもらってる」

「じゃ、じゃあ学費とかどうしてるの?お金、大丈夫なの?」

「知り合いの店で働かせてもらってる」

「あぅ・・・・・・・・・ご飯とかちゃんと食べてる?」

「それは夕菜に言われてもなぁ」

「はうっ!?」

実際何とかという武術一筋でやってきた夕菜の家事能力は最悪だ。
一方東雲家に仕える一族であった朝霧家は武術だけでなく、あらゆる能力を要求される。
その中の一つに料理なんてものもあるので、夕菜に栄養面等で心配されるいわれはない。

「なぁ真」

「何だ明?」

「お前、家出したのか?」

あれ、言ってなかったっけ。
そういや、家を追い出されたことを知っているのは東雲家と朝霧家、それにお世話になってる家だけだな。

「ああ。少し前にな」

実際は家出じゃなくて勘当なのだが、その辺はうちと東雲家のことをよく知らない人間に説明しても分からないだろう。
一般人からすればどこの戦国時代よ、と言われること間違いなしである。

「家出じゃないよ!勘当だよ勘当!」

・・・・・・・・・説明するのが面倒だからあえて訂正しなかったというのに、この娘っ子は・・・・・・・・・。

「は?真、お前何したんだ?確かお前の家って結構由緒ある家だったよな?」

「ただ古いだけだよ。俺、古い考えって性に合わないんだよね」

真らしいな、と苦笑いした明を見てやっぱりかと思う。
明は馬鹿の中の馬鹿であるが、やんわりとこちらが話を誤魔化すとそれに気付いて、それでものってくれる。
おそらく空気や雰囲気といったものに敏感なのだろう。
普段の発言にも関わらずクラスの女子にも敬遠はされているが嫌われていないのはその辺のおかげだろう。
もっとも、そんな明を彼氏にしたいという女子がいるかというのとは別問題であるが。

「ねぇ真ちゃん」

「ん?」

少し考え込んだ真を見て、夕菜は顔を伏せながら彼を呼んだ。
夕菜を見た真は「ああ、くるか」と心の中で呟く。

「何で、私じゃダメだったの?」

それは選んでくれなかった真に大しての憤慨ではない。
選ばれなかった自分への、落胆。
これを言うのはきっと彼女を傷つける。
きっと彼女を怒らせる。
だけど、これを言うのはあの日、彼女と本当の意味で出会った時、既に決まってしまっていた。

「夕菜じゃ駄目だってことじゃない。夕菜だから、駄目なんだ」

「・・・・・・・・・!?」

もしも真が夕菜の欠点をあげ、それを理由に断ったことにすれば彼女は全てをなげうってそれを克服するだろう。
だからこそ夕菜には真の言ったことが理解できなかった。
そもそも彼女はその言われるであろう弱点を克服するつもりで聞いたのだ。
しかし返ってきた言葉は能力どころか自分を指して駄目だといわれた。
それならばどうすれば良い。
否、もし彼の言ったことをそのまま受け止めるならば、もうどうしようもないことになる。

「なんで・・・・・・・・・?」

俯いたまま夕菜は尋ねた。
しかしその声は普段の元気溢れたものではなく、消え入りそうな程小さなものだった。
夕菜の頬を伝う水滴が・・・・・・・・・胸がチクチクしますぜコンチクショウ。
静かに泣き声をあげる彼女を慰めたくなる。
本当の事も言いたくなる。

「・・・・・・・・・」

しかしそれには答えるわけにはいかなかった。
その理由は間違いなく朝霧家への・・・・・・・・・いや、東雲家への裏切りだ。
朝霧家を追い出された自分だが、東雲家を裏切るわけにはいかない。
それがあの後、誰も知らない部屋で自身が春樹様と話した時の誓いだ。
しかし春樹様は笑ってあるゲームを提案した。
そのゲームに勝てれば──を許してくれるとのこと。
許すって何だよ、と心内でつっこみながらも少なからず期待はしているかもしれない。

「夕菜」

だから始めよう。

「・・・・・・・・・?」

きっとどこかにある

「ゲームをはじめようか」

ちょっと変わった学生生活を。
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