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2-7 リベンジ

いつのまに片付けたのだろう、パーティ会場と化していた野外訓練所でギル達は集まっていた。
丸テーブルや簡易椅子は全てなくなり、代わりにいくつかの白いサークルと案山子が立っている。
たぶんこれがデフォルトなのだろう。

「・・・・・・・・・?ねぇギル」

ロロに話しかけられ、ギルは背負ったバスターソードをずらしながら顔だけ向ける。

「何だ?」

「さっきからこっち見られてヒソヒソされてるんだけど、あんた何かした?」

「・・・・・・・・・何もしてねぇよ」

そういうギルであるが、実は心当たりがある。
というか今朝、堂々とパジャマ姿で訓練したりそのまま気付かずに食堂で朝食をとったことが原因だろう。
部屋に戻って気付いた時のあの絶望感、言葉では表現のしようがない。

「何よその間。絶対何か心当たりあるんでしょ」

「疑問じゃなくて断定かよ!?」

実際そうなのだが、何か納得がいかない。
ファルに助けを求めるように視線を送るが、ジーナと何かを話しているのかまったく気付かない。
しかしジーナは気付いたようで、ロロに飛びついた。

「お姉さま!」

「今日は何か妙に注目浴びてるのよね・・・・・・・・・。ジーナ、何かしってる?」

「きっとクソ野郎が寝巻きで訓練してたからだと思いますが・・・・・・・・・」

すると先程まで見事にギルの存在を無視していたロロが道端に吐かれたガムを見るような目でギルを見た。

「うわ・・・・・・ちょっとギル、近づかないでよね。知り合いと思われるじゃない」

「ちょ・・・・・・・・・確かに原因はあるけどよ、そこまで言うのはひでぇ!」

ギャーギャーとギルが叫び、さらに視線を集めるという悪循環に陥っているのをファルは知っているが特に口を出さない。
ただ馬鹿を見て溜息を吐くだけだ。

『あー、あー、マイクテスミャ・・・・・・このマイクが悪いの!』

設置されていたステージに、いつの間にかトナ校長がおり、
何にキレているのかマイクをマイクスタンドごとゲシゲシ蹴っていた。
ステージの端にはオロオロとうろたえる男性教員・・・・・・ペン太先生がいる。

『こ、校長!皆見てます!見てますから落ち着いてくだ・・・・・・・・・』

そう言い掛けてトナ校長が蹴り飛ばしたマイクに当たり、悲鳴すらなく倒れるペン太先生。
その哀れな姿に何事かとざわついていた生徒達は一瞬だけ静まった。

『あ、トマトちゃん。新しいマイクかもんなの』

『ちゃん言うな!俺はもう大人だっての!』

『えー・・・・・・・・・大人で身長120センチくらいってありえないの』

『俺だって信じたかねぇよ!てか120以上はあるっての!というよりお前が言うのかよ!?』

『はいはい、わかったの。いいからマイク渡すの・・・・・・・・・』

ギルには『どうせ120.1センチとかそんなオチなの』そう呟く声が僅かに聞こえた。

『このアマ・・・・・・・・・ほらよ』

『まったくもう・・・・・・トマトちゃんは文句ばっかりなの』

『だったらその呼び方から直せごるぁあああああああああ!』

これ以上ないというほどの重い沈黙が流れる。
ファルですら現状の把握に追いつかず、トマトを振り回しているトナ校長を見つめた。

『うん、いいマイクなの。やっぱりマイクを確かめるには振り回すのが一番なの』

それ絶対確かめ方違う。
ていうより確かめる事が違う。

『みんなグッドモニーングなの!』

超展開に思考を追いやられている生徒達の反応はないが、ステージから見回すとトナ校長は満足げに頷いた。

『さてさて、今日は残念なお知らせなの。非常に、非常に残念なの』

もったいぶったような言葉にざわめきが生じるが意に返さずにトナ校長は続ける。

「いったいなんだってんだよ・・・・・・?」

「さぁ?新入生の僕達には分かりようがないね」

「うん?新入生?」

「気付かなかったギル?集まった人数だけど、たぶん新入生しかいないんじゃないかな」

3学年にしては大分少ないし、そう付け加えられ、ギルは周囲を見回した。
確かに人数がかなり少ない。

『昨日言い忘れてたの。あのゲームの景品は2番以外、つまりサイン色紙と不思議なクスリは一つしかないの』

「・・・・・・・・・」

『だから昨日のゲームはなし、取り消しなの。ごめんね☆』

「はああああああああああ!?」

「な・・・・・・何よそれえええええ!?」

叫ぶ二人の男女。
もちろんギルとロロである。

『あ、決してお酒で酔った勢いで賭けに負けて取られたわけじゃないから、許して欲しいの』

しかも具体的すぎる内容まで付け加えて飄々とした表情で謝った。
もちろん頭は下げずに。

「そうか・・・・・・・・・それなら仕方ないな」

「ってギルも納得してんじゃないわよ!」

「・・・・・・・・・はっ!だ、騙したなトナ校長!」

再びギャーギャー騒ぐ彼らに、いつのまにかファルとジーナは二人と距離をとっていた。
気が付くと騒いでいるのはギルとロロだけではなく点々とどこかで騒いでいる男の声も聞こえた。

「あかんでぇ!そいつはちょっと許しまへんで!わ、わいの色紙がああああああああ!」

・・・・・・・・・ファルは聞かなかったことにした。

『だから、これからゲームをするの。
 トナから取っていった色紙と不思議なクスリを持っている教員、ガルマーから取り返した人に・・・・・・・・・』

一旦深呼吸してからトナ校長はいった。

『その商品をあげようと思うの』

沈黙。

「・・・・・・・・・」

それは大きいのか、小さいのか分からないが誰かが手を挙げ、叫んだ。

「おおおおおおおおおおお!」

そして次々と上がっていく手と叫び声。
数人の生徒はやってられるかという表情でその集団からコッソリと離れた。
しかしそれでも新入生の半分以上は残り、雄叫びを上げている。
その中にはギルとロロが含まれているのだが、
そもそももらえる予定だったものがもらえなくなったことをすっかり忘れているらしい。

『ルールは簡単なの。この校舎にいるガルマーは赤い鷲のバッジを服につけてるの。
 ガルマーには何をしてもいいの。時間は5時まで、さぁスタートなの!』

その声と共にドドドドドと砂埃を巻き上げながら校舎へ突入していく者達。
一応何かしらの行事みたいだからと渋々入っていくファルとジーナ、それに複数の者。
そして下らんと一蹴して寮へと帰り始める者。
数多くの考えはあれど、鬼ごっこのような行事が始まった。






「・・・・・・・・・オカシイと思わないのかタク、パール」

「どうしたんだよガルマのおっさん?」

「ド○のパイロットみたいな名前ですね。それでガルマさんどうかしました?」

赤い縁の眼鏡をかけた女性、パールが鷹を肩に止まらせている男性、タクにツッコミを入れつつ聞き返す。

「何故、私がこんなことをしなければならんのだ・・・・・・・・・」

胸に光る赤い鷲のバッジと、手提げバッグに入っている色紙と薬瓶に戸惑いを隠せないガルマー。
先程の行事を校舎の職員室から聞いていたガルマーは、今日の朝一でトナ校長に渡された紙袋に、謀られたことを知った。
その際にトナ校長は「あ、一応協力は大丈夫なの」と言っていたが、今ならその意味は分かる。

「仕方ありませんね・・・・・・」

「ま、面白そうだよね。それで、どうするよ?」

よほど助けて欲しそうな顔をしていたのかと、ガルマーは自身の顔に触れるが特に変化はない。

「長い付き合いだから雰囲気で分かるよ。ま、面白そうだから手を貸すんだけどね」

タクはそう言って嬉しげに腕輪から自前の弓を出すと弦の張り具合を確かめる。
一方パールは本当に仕方なさげに腕輪から青い石を次々と取り出しては取り出した皮袋に入れていく。
とりあえず後でトナ校長には直訴する、そう思いつつガルマーは一人、姿を消した。






「やぁ、どうもバルセンです」
「あ、どうもこれはご丁寧に・・・・・・ってここどこよ?」
「ここは後書きのネタがなくなってきたバルセンが作った謎空間ですよギル君」
「・・・・・・・・・つっこみ所満載だな」
「いいじゃないか。それで今回、ゲストキャラが数人出てきましたね」
「強引すぎるだろその会話。まぁいいけどよ・・・・・・これはバルセンの所属しているギルドからのゲスト出演だって聞いたけどよ」
「はい、そうですよ?エターナルメモリー、略してエタメモ!」
「何だよその痛々しい略しかた」
「エタメモからバルセンが『小説に出しちゃうけどいいよね!?』という同意のもとに出しちゃう人たちのことです」
「え、その略し方固定なのか?」
「そして今回、ようやくシリアスを抜けて全部コメディができました。シリアスなんてどうせ誰も求めてませんしね」
「でもバルセンはもう少し普段から真面目にしたほうがいいと思うぜ?今日だってレポートの期日明日なのにのんびり小説書いてるしよ」
「とにかく次からは教員3人ヴァーサス!」
「何だよその微妙な発音」
「新入生!俺の心はマックスハートだぜ!」
「意味わからん」
「・・・・・・・・・ギル君さっきからうるさいよ?主人公降板ってもしされたらどんな気分なんだろうね」
「・・・・・・・・・!?い、イヤァ。バルセン様サイコー」
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