2-6 自主訓練
ふと、目が覚めた。
別になんてことはないベッドが変わったから寝つきが悪いだけだろうが、それでも時間を持て余してしまうほどだ。
こっちに来てからは何やら一人で起きている気がする。
「ファルにまた何か言われるな・・・・・・」
普段はギルを起こしに来るファルだが、起きているギルを見ると目を擦ったあと、もう一度ギルを見てこういう。
『・・・・・・・・・今日は不幸な日か』
まったくもって失礼な話である。
だがしかし、ギルがファルの手を借りずに起きた日は大抵何かが起こるのは確かなのだ。
事実、昨日は入学式にも関わらず意味の分からない水鉄砲でのゲームや
アルコール──校長、トナはジュースと言っていた──が公然と置いてあるパーティがあったのだ。
実はギルは優勝者の特典、その中でも特にサイン色紙を楽しみにしていだのが、それはまた明日ということらしい。
隣でファルが疲れたように溜息を吐いたのが印象的で、悪い予感しかしなかった。
加えて今日一人で起きられたという事実。
「・・・・・・・・・まぁいいか」
とにかくファルの手を借りずに早く起きたんだ。
いつもの日課をすることにしよう。
そう思うとギルは壁に立てかけてあるバスターソードを手にとり、寮の外へ向かった。
振り下ろし、薙ぎ払い、突き。
剣とは突き詰めると基本的にこの動作の組み合わせである。
もちろんそれだけでは語れない部分もあるが、剣術の土台といっても過言ではない。
そして父から語られた最強の剣士になる為の一番の効果的な訓練方法。
『これさえ守れば必ず最巧の剣士になれるさ』
そう言っていた父の言葉に期待したギルが聞いた言葉はあまりにも単純で、唖然とせざるおえない方法だった。
父はこういったのだ
『訓練の時間を誰よりも長く、誰よりも濃密に極める。これが最強への・・・・・・・・・・どうしたギル?』
何を言い始める。
最初はそう思ったがそれは当然のことを言葉にしただけで、間違ってはいないのだ。
確かに優れた師がいれば成長は早くなるだろう。
優れた装備があれば実力以上の強さを発揮できるだろう。
しかし最強になるに必要なのはただただ上を見上げる訓練だ。
下を見て満足するような強さではない。
頂上を目指す登山家のような志でもない。
それは見知らぬ果てを目指す旅人、あるいは冒険者のようだ。
「97・・・・・・98・・・・・99・・・・・・100!」
だからといって毎日する素振りは正直だるいの一言である。
基礎的な素振りを終え、ギルは次に型の練習に移る。
父から教えてもらった全ては、それだけである。
技も何も教えてもらっていない、ただ形だけの剣術。
それも当たり前だ。
父がいなくなったのは5年前、その時ギルは12歳。
身体的に無理が出来る年齢ではなく、まだまだ基礎を磨くべき時だ。
両親は最初からギルが冒険者になることに否定的だったということも考慮に入れるべきだろう。
だから父の剣技を教えてもらっていない自分は、自分の技を作らなければならない。
そこまで考えてふと昨日会ったハンサムの顔を思い出す。
クロウ、そう名乗った彼は確かに父から剣を教わったといっていた。
もしかしたらあの人物に剣を教えてもらうことで、さらに先へと進めるかもしれない。
さすがに何度も素振り、そして型の練習はもう飽きたのだ。
王立学園に入ったことでモンスターと戦うかもしれない。
そして模擬試合もするかもしれない。
だけどそれよりも早く、もっと多く、経験を積みたいのだ。
それも全ては
「イズルート・・・・・・バフォメット」
5年前の真実を知るために。
一方、ギルが訓練している様子を上から眺めている人物がいた。
それは彼の幼馴染、ファルだ。
一言で言うならファルは困惑していた。
「・・・・・・・・・なんであんな格好で訓練してるのギルは」
そう、ギルは今パジャマ姿で型の練習をしていた。
実に間抜けであるその光景に、ファルは溜息を吐く。
「ふん。こんな時でもギルギルギルですか」
「・・・・・・・・・いや、そう嫌味を言われてもな」
「うるさいです。2年前に忠告したというのに・・・・・・馬鹿ですね。やっぱり貴方、馬鹿ですね?」
「二度も言わないでね」
暇そうにポチポチと通信機器を弄るジーナに再度溜息を吐くファル。
どうしてこの小娘はここまでツンデレなのだろう。
きっと昔・・・・・・・・・いやまぁ、色々あったんだ、うん。
昔は可愛かったんだけどなぁ・・・・・・そう思ってしまうのは、ファルであろうと仕方ないだろう。
「で、何してるの?」
「兄様に連絡事項です。昨日、クソ野郎に邪魔されたんですよね?」
「また君は・・・・・・別に嫌いなわけじゃないのに敬遠する癖、やめてほうがいいよ?」
「うるさいです」
打ち終わった細長い物体を投げ出してゴロリと仰向けになるジーナ。
だいたい嫌いならファルに二人に近づくななんて警告しない。
「嫌い云々以前にファルさんがギルに近づくと不味いですよね?昨日も言いましたが、馬鹿ですか?」
「・・・・・・・・・」
ファルは一瞬殺気を出して脅そうかとも思ったが、それは昨日やって失敗してる。
というかこの娘っ子、2年間会わないだけで随分と図太くなっていた。
相変わらず二人の時は不機嫌オーラをばら撒いている。
ツンデレってさ、逆なんじゃないかこの子。
皆がいるときは普通なんだけど、二人になった途端ツンツンするし。
・・・・・・あれ?
デレどこいった?
「・・・・・・・・・ジュノーから手紙が届いてるのでまさかとは思っていましたが」
「仕方ないだろう。そういう契約なんだから」
「・・・・・・・・・知りません、もう」
プイと顔を背けるジーナに苦笑するファル。
下では相変わらずギルがパジャマ姿で素振りをしている。
まだまだ平和な朝だ、ファルはそう思った。
別になんてことはないベッドが変わったから寝つきが悪いだけだろうが、それでも時間を持て余してしまうほどだ。
こっちに来てからは何やら一人で起きている気がする。
「ファルにまた何か言われるな・・・・・・」
普段はギルを起こしに来るファルだが、起きているギルを見ると目を擦ったあと、もう一度ギルを見てこういう。
『・・・・・・・・・今日は不幸な日か』
まったくもって失礼な話である。
だがしかし、ギルがファルの手を借りずに起きた日は大抵何かが起こるのは確かなのだ。
事実、昨日は入学式にも関わらず意味の分からない水鉄砲でのゲームや
アルコール──校長、トナはジュースと言っていた──が公然と置いてあるパーティがあったのだ。
実はギルは優勝者の特典、その中でも特にサイン色紙を楽しみにしていだのが、それはまた明日ということらしい。
隣でファルが疲れたように溜息を吐いたのが印象的で、悪い予感しかしなかった。
加えて今日一人で起きられたという事実。
「・・・・・・・・・まぁいいか」
とにかくファルの手を借りずに早く起きたんだ。
いつもの日課をすることにしよう。
そう思うとギルは壁に立てかけてあるバスターソードを手にとり、寮の外へ向かった。
振り下ろし、薙ぎ払い、突き。
剣とは突き詰めると基本的にこの動作の組み合わせである。
もちろんそれだけでは語れない部分もあるが、剣術の土台といっても過言ではない。
そして父から語られた最強の剣士になる為の一番の効果的な訓練方法。
『これさえ守れば必ず最巧の剣士になれるさ』
そう言っていた父の言葉に期待したギルが聞いた言葉はあまりにも単純で、唖然とせざるおえない方法だった。
父はこういったのだ
『訓練の時間を誰よりも長く、誰よりも濃密に極める。これが最強への・・・・・・・・・・どうしたギル?』
何を言い始める。
最初はそう思ったがそれは当然のことを言葉にしただけで、間違ってはいないのだ。
確かに優れた師がいれば成長は早くなるだろう。
優れた装備があれば実力以上の強さを発揮できるだろう。
しかし最強になるに必要なのはただただ上を見上げる訓練だ。
下を見て満足するような強さではない。
頂上を目指す登山家のような志でもない。
それは見知らぬ果てを目指す旅人、あるいは冒険者のようだ。
「97・・・・・・98・・・・・99・・・・・・100!」
だからといって毎日する素振りは正直だるいの一言である。
基礎的な素振りを終え、ギルは次に型の練習に移る。
父から教えてもらった全ては、それだけである。
技も何も教えてもらっていない、ただ形だけの剣術。
それも当たり前だ。
父がいなくなったのは5年前、その時ギルは12歳。
身体的に無理が出来る年齢ではなく、まだまだ基礎を磨くべき時だ。
両親は最初からギルが冒険者になることに否定的だったということも考慮に入れるべきだろう。
だから父の剣技を教えてもらっていない自分は、自分の技を作らなければならない。
そこまで考えてふと昨日会ったハンサムの顔を思い出す。
クロウ、そう名乗った彼は確かに父から剣を教わったといっていた。
もしかしたらあの人物に剣を教えてもらうことで、さらに先へと進めるかもしれない。
さすがに何度も素振り、そして型の練習はもう飽きたのだ。
王立学園に入ったことでモンスターと戦うかもしれない。
そして模擬試合もするかもしれない。
だけどそれよりも早く、もっと多く、経験を積みたいのだ。
それも全ては
「イズルート・・・・・・バフォメット」
5年前の真実を知るために。
一方、ギルが訓練している様子を上から眺めている人物がいた。
それは彼の幼馴染、ファルだ。
一言で言うならファルは困惑していた。
「・・・・・・・・・なんであんな格好で訓練してるのギルは」
そう、ギルは今パジャマ姿で型の練習をしていた。
実に間抜けであるその光景に、ファルは溜息を吐く。
「ふん。こんな時でもギルギルギルですか」
「・・・・・・・・・いや、そう嫌味を言われてもな」
「うるさいです。2年前に忠告したというのに・・・・・・馬鹿ですね。やっぱり貴方、馬鹿ですね?」
「二度も言わないでね」
暇そうにポチポチと通信機器を弄るジーナに再度溜息を吐くファル。
どうしてこの小娘はここまでツンデレなのだろう。
きっと昔・・・・・・・・・いやまぁ、色々あったんだ、うん。
昔は可愛かったんだけどなぁ・・・・・・そう思ってしまうのは、ファルであろうと仕方ないだろう。
「で、何してるの?」
「兄様に連絡事項です。昨日、クソ野郎に邪魔されたんですよね?」
「また君は・・・・・・別に嫌いなわけじゃないのに敬遠する癖、やめてほうがいいよ?」
「うるさいです」
打ち終わった細長い物体を投げ出してゴロリと仰向けになるジーナ。
だいたい嫌いならファルに二人に近づくななんて警告しない。
「嫌い云々以前にファルさんがギルに近づくと不味いですよね?昨日も言いましたが、馬鹿ですか?」
「・・・・・・・・・」
ファルは一瞬殺気を出して脅そうかとも思ったが、それは昨日やって失敗してる。
というかこの娘っ子、2年間会わないだけで随分と図太くなっていた。
相変わらず二人の時は不機嫌オーラをばら撒いている。
ツンデレってさ、逆なんじゃないかこの子。
皆がいるときは普通なんだけど、二人になった途端ツンツンするし。
・・・・・・あれ?
デレどこいった?
「・・・・・・・・・ジュノーから手紙が届いてるのでまさかとは思っていましたが」
「仕方ないだろう。そういう契約なんだから」
「・・・・・・・・・知りません、もう」
プイと顔を背けるジーナに苦笑するファル。
下では相変わらずギルがパジャマ姿で素振りをしている。
まだまだ平和な朝だ、ファルはそう思った。
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