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2-3 愛故の戦い

「ちぃ!」

「ファル!このままじゃ!」

「分かってるよ!でも退却させてくれそうにない!」

まるで逃がさないと言わんばかりに厨房からの道を塞いでいる新入生に頭を抱えるファルとギル。
今は水鉄砲を適当に撃つことによって何とか凌いでいるが、
向こうも給水ポイントまで進行しているので数が劣っているこちらが負けるのは目に見えている。
最初こそ不意打ちで二人倒せたがまだ4人残っていた。
ちなみに水を撃たれたその二人は突如現れた見知らぬ先生に連れて行かれた。
・・・・・・・・・たぶんローグの姿を隠して移動する特殊技術だろう。

「あ、まず」

ギルがポツリと呟き、遮蔽物から飛び出すように転がった。
するとその場所に放物線を描きながら飛んできた水が落ちていた。

「くっ」

最初は気付かなかったファルだがギルが飛び出したのを見て同時に飛び出したので水を浴びずにすんだ。
新入生4人の矢面にたった二人は両手に持っていた水鉄砲を同時に構える。

「はぁ・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・ニノたんとナノたんのサイン・・・・・・・・・・」

「ほちぃ・・・・・・・ハァ・・・・・・・ハァ・・・・・」

「「・・・・・・・・・」」

初めてじっくりと見たその4人は例外なく目が血走っていた。

「・・・・・・・・・俺、あんなだったのか?」

「・・・・・・・・・あそこまでではないけど」

それを聞いてギルは自分を少し見つめなおすように考えてしまう。

「うひひひひひひ。しねぇ!」

「うおっ!?あぶね!」

その男は水鉄砲ではなく持っていた弓矢をギルに向かって放った。
もちろん練習用の矢で先には丸いゴムがついており殺傷能力はないが・・・・・・・・・悶絶するのは間違いない。

「・・・・・・・・・なぁファル」

「・・・・・・・・・なんだギル」

「お前がやってたことと似たようなことやってる人がいるな」

そう、気絶させてから倒せばいいんじゃんというやつだ。

「というかこれ、俺達の歓迎イベントだよ・・・・・・・・・な?」

「そんなこと言うもんじゃないよ。歓迎されている自信がなくなる」

いや、もうそんなものは砕け散っている。

「選択肢は一つだね・・・・・・・・・」

「ああ」

二人は目を合わせて頷きあい、同時に腰を低くした。

「強行突破だ!」

ギルが叫び、唯一の出入り口に向かって走り出す。
・・・・・・・・・・走り出すが

「ってお前も走れよ!?」

走っていたのはギルだけだった。
相手方はまるで捨石かのようなギルに不思議そうに首を傾げるが、水鉄砲を打ち出して迎撃する。
ファルは懐に手を入れてゴソゴソと何かを取り出した。
それは・・・・・・・・・下敷きだった。

「そ・・・・・・・・・それは!」

新入生4人の表情が一瞬にして固まる。
ついでに言えばギルも固まっていた。

「NINO&NANOの下敷き・・・・・・・・・!」

説明しよう。
その下敷きは生産されはしたが何故か世に殆ど出なかったNINO&NANOの希少な下敷きである。
諸説によればNGシーンがプリントされた下敷きなので事務所がストップしたということらしい。
ともなればそこは全国の男達があらぬ妄想を働かせ、それを手に入れようとするのは明白であった。

「まさか・・・・・・・・・なぜそれが、いや。何故貴様がそれを持っている!?」

「ふっ・・・・・・・・・さぁ、通してくれるかな?」

余裕の笑みを浮かべながらファルは一歩一歩新入生に近づいていく。

「それがどうした!ならばこちらも優勝してサインを手に入れるまでっ!」

「ならばこうしよう」

「「「「「なっ」」」」」

カッコが多いのはギルも声をあげたからだが・・・・・・・・・ファルは下敷きを折り曲げていっていた。

「どこで折れるかな?」

「や、やめてくれ!彼女達の顔が真っ二つになってしまう!」

「悪魔!この悪魔め!」

ディープなファンの反応にディープでないギルは複雑そうに見てしまう。
本当に苦しんでるように床でびくんびくん痙攣しているその姿は、気持ち悪いの一言であった。

ピュー・・・・・・・・・

その隙を逃さずに床の彼らに水をかけていくファル。
これが敗者の末路だとでもいうのか・・・・・・・・・
跡に残されたのは濡れた床に倒れる涙を流す男達であった。
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