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2-2 篭城

「・・・・・・・・・」

彼は王立学園のイベントに臨んでいた。
NINO&NANO・・・・・・アイドル、ニノをリーダーとした冒険者のパーティー。
ニノ自身はアイドル歌手になるのが夢だったが──以下略。
とにかく冒険者とアイドル歌手を兼業している人物なのである。
明るくて元気なニノ・・・・・・・・・寡黙でクールなナノ・・・・・・・・・
対照的な二人であるがステージでの二人の息はこれ以上ないほど合っている。
もっともナノがステージに出るのはジュノーのライブの時のみで、
それは彼女の住んでいる場所だからだとファンには噂されている。
しかし不思議と知名度があるにも関わらず彼女の姿をジュノーで見た者はいない。
謎の少女、ナノはそのミステリアスさが売りなのだ。
何が言いたいのか・・・・・・・・・簡単に言えば、彼はNINO&NANOのファンなのである。

「・・・・・・・・・」

こっそりとキッチンを覗き込むと、誰もいないのを確認したあと厨房に入りこむ。
探し物はそう・・・・・・・・・厨房にある水だ。
最初の交戦時に5発程撃ったら何と弾切れしたのである。
それも当然、水鉄砲に水が大量に入るわけではない。
そこそこ入るタイプではあるが調子に乗って適当に撃つと、それこそ弾切れになるのは目に見えていた。
なので彼はその時最も近かった場所、学生食堂の厨房へと向かったのだ。
おそらくは一番篭城しやすく、すぐに弾も装填できるベストポジション。
ここを拠点にすれば敵を倒すのも楽になる。

「ふふふ・・・・・・・・・あははははははは!」

そう、全てはNINO&NANOのサインをもらうため。
ニノのサインだけでなく神出鬼没のナノのサインも入っているものは貴重なのだ。
価値にして10万zはするだろう。
そう、全ては・・・・・・・・・ニノ様とナノ様の為に!

「と、誰でも考えるよね」

「へ?」

突如天井から聞こえた声に思わず上を見る彼。
そして彼の記憶はそこで途切れたのであった。






「ふぅ」

「・・・・・・・・・」

ギルは複雑そうに無言でファルの作業を見つめていた。
今来た少年と同じであろう理由でこのキッチンに来たのだが、
この少年同様天井から聞こえた声に反応した瞬間意識を失ったのだ。
理由は簡単、ファルが厨房で待ち受けていて、彼が来る人々に襲い掛かっているからだ。
ぶっちゃけ直接攻撃がありなのか、という疑問が残るのだがそもそもそういうルール指定はされていない。
だからこそ部屋に水鉄砲を取りに行かなくても他人から奪えばいいのだ。
それがファルの発想だった。

「相変わらずえげつねぇな」

「そう?誰だって最初に思いつくことだと思うけど」

ねぇよ、そう言い放ってギルは気絶した人に水鉄砲を発射してから奥の部屋に押し込んだ。
ファルの作戦のおかげで既に彼らの持っている水鉄砲は10を越えている。
たとえ一丁が弾切れを起こしても別のに替えればすぐにでも再発射可能なのだ。

「だいたいこのゲームの目的は生き残ることだよ?。相手を倒すことじゃない」

そうなのだ。
あの放送で言われたのは生き残ったものが勝者。
断じて最後に残った者が勝つわけではない。
もちろん再放送で何かを言われるかもしれないが、そこはそこ。
ファルにとっての疑問は何人まで生き残ればいいのか。
もしくはあと何分間生き残ればいいのか。

「・・・・・・・・・あのよ」

「なに?」

「腹減ったんだけど」

「そこの冷蔵庫漁ればいいんじゃない?」

そこには学園の食堂の冷蔵庫。
果たしてイベント時だからといって食ってもいいのだろうか。

「いや、確かに食いたいんだけどよ・・・・・・・・・これって他の人も来るんじゃないのか?」

「え」

今更気付いたの?
そう言いたげなファルに思わずギルは視線を逸らした。

「終了の条件が分からないなら確実に通るであろう場所で待ち伏せをして人数を減らすのが得策だよ。
 この学園、個人の冷蔵庫をのぞいたらここにしか食料ないからね」

購買の商品は全て撤去されていたし、と付け加えて腕輪から出したミネラルウォーターを飲むファル。

「それって個人の冷蔵庫に取りに行けばいい話じゃねぇのか?」

「ギル。君の冷蔵庫に食料が入ってるのかい?」

「・・・・・・・・・あー」

そう、料理しない人にとっては冷蔵庫はただの飲み物入れである。

「ならさ、ファルの部屋に鍵かけて篭ればいいんじゃね?そうしたら食料もあるし」

「だいたいそんなに甘くないと思う・・・・・・・・・さっきから監視されてるし」

「え」

ギルは思わず周囲を見回すが、そこには影すら見えない。

「誰もいないが」

「ほらあれ、浮いてるやつ」

ファルが指差した方向にはフヨフヨと浮く・・・・・・・・・あれだ、ファン○ルのような物体がこちらへ向いていた。

「うおっ!?ファン○ル!?」

「なにそれ?・・・・・・・・・あれは魔法機械だね。たぶんあれと視界共有してるんじゃないかな。攻撃性能は皆無みたいだけど」

「へぇ・・・・・・・・・知らない魔法だな」

「オリジナルでしょ。たぶん魔法機械なんじゃないかな?」

失格がどうかはあれで判断しているのだろう。
ふよふよ浮いているそれは見られていることに気付いたのか慌てたように天井の隅に移動する。

「この寮の鍵は全部カードキーだったよな・・・・・・・・・?」

「うん。それがどうかした?」

思案するようなギルにファルは疑問の声を投げかけ、彼は答えた。

「ひょっとしてよ、学園側が全て操作して入れなくなってるんじゃ?」

「・・・・・・・・・なるほど。可能性はあるね」

水鉄砲を持つ持たないに関わらず部屋に篭城されるのはイベントとしてそもそも成り立たない。
そして放送はあれっきり一度も流れていない。
その間に誰かが同じことを考えないはずがなく、おそらくはその手は既に封じられているのだ。

「・・・・・・・・・あ」

「どうした?・・・・・・・・・あ」

彼らがふと見るとそこには6人組の生徒達がこちらに向かっていた。
一人や二人なら不意打ちでなんとかなるが、6人となると勝ち目が薄い。

「・・・・・・・・・不味いな」

「ああ」

そう、最初から篭城に向いているこの厨房は・・・・・・・・・出入り口が一つしかない。
これは不味い、そう思う二人だった。
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