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2-51 第一次○○大戦

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

ファルとジーナは魔女釜の前で呆然としていた。
二人の胸にはほんの一握りの達成感と歓喜、そしてどこまでも大きな後悔だった。

「僕達はなんてものを作ってしまったんだ・・・・・・・・・」

「ええ・・・・・・・・・これはとんでもないものです」

もしこれが世に放たれるようなことがあれば世界は混沌の渦に叩き込まれるだろう。
ならば早くこれを処分しなければならない。
だがどうやって?

「・・・・・・・・・ファルさん」

「うん?」

「解毒剤、作りませんか?」

「いや、処分したほうが早いと思うんだけど」

確かに凄い効果ではあると思うのだが、世の中の人間から壮大なバッシングを受ける可能性がある。
解毒剤なんて悠長に作ってないで処分したほうが安全かつ確実である。

「解毒剤そのものは三日あれば作れると思います」

「・・・・・・・・・そんなに早くにかい?」

「正確に言えば解毒剤ではなく、前に作った正反対の薬ですが」

前に作った、と言えば・・・・・・・・・トナ校長に渡したあれだろうか。
そういえばあの薬、どこにいったんだろう。
二ヶ月以上たってるからすっかり忘れていたが、あれは売るとそこそこの家を建てられるくらいの値段になる。
もちろん材料もそれなりにお金がかかるのだが何よりも大事なのが一日中かかる緻密な作業だ。

「となれば材料集めか・・・・・・・・・」

「はい。上手く集まれば明日には作れると思いますが・・・・・・・・・最悪三日かかります」

「でもこれって下手な兵器より恐ろしいんだよね。これを特訓内容に組み入れればそれこそ皆死に物狂いで戦うと思うけど」

ですよねぇ。
そう言い放ち、腕輪から関係者に材料の問い合わせのメールを入れる。
色々問題があると思うが・・・・・・・・・まぁいいか。
そう思い彼はこの薬をトナ校長に提供することにした。
即ち───胸が小さくなる薬を。






時々、ふざけてると思うんだこの学園。

「というわけで超サバイバル☆どきどき鬼ごっこの開始なの!」

うん、本当にふざけてると思う。

「そう思うよな?ロロ」

「ブツブツブツブツブツブツ」

「・・・・・・・・・。そう思うよなアレス!」

「お・・・・・・・・・おっぱいがちっぱい・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。そう思うよなティアマト!?」

「・・・・・・・・・。あたいもちょっとあれは勘弁してほしいかなぁ」

やっとまともに反応してくれたティアマトにある種の感動を覚えつつ『あれ』をもう一度見据える。

「胸囲減少砲だっけか?何の需要があるんだあれ・・・・・・・・・?」

「女にとっては存在そのものすら許容できない代物であることには変わらないわ」

どこかで見たようなネコ型ロボットの形をしたロボットがこれまたどこかで見たような黒い筒状のものを手にはめている。
音声までは再現できなかったのか、トナ校長の声で「どかん!」という声とともに黒い筒から謎の液体が弾状になって発射される。
なんで姿形は真似できて声は真似できなかったんだよとかいうツッコミも最早無意味だろう。

「ティアマトは逃げないのか?」

「あたいはほら、存在そのものを歪めてセンサーとか誤魔化してるし」

よく分からないが高等技能っぽかった。
とにかくいまだブツブツ何かを呟いているホラーばりのビジュアルになっているロロをどうにかしなければ。
幸いにもロボットは別の人物を追っていき、ここにはいないがいつまでも校庭でノンビリとしているわけにはいかない。
このまま寮に帰って不貞寝したい衝動にかられつつもロロを抱えてギルは走り出した。





ギルは気付いていない。
貧乳派男子が逃亡者達の行方をことごとく遮るのを。
そして王立学園はバイオハザードの如く一つの追跡者によって、阿鼻叫喚の地獄図へと誘われるのだった。






「という夢を見たんだ」

「いや、ギル・・・・・・・・・自分の部屋が無くなったからって現実逃避してないで。現実だよ」

「嘘だっ!!!」

後に第一次貧乳大戦と呼ばれた戦いから翌日、ギルは消滅した自分の部屋の前で呆然としていた。
ちなみにこのネーミングだがアレスが特に深く考えずにつけたところ何故か正式採用されたという謎の経歴を持っている。

「・・・・・・・・・追跡者が俺の部屋で自爆するなんて夢を見たんだ」

「戦わなきゃ。現実と」

「嘘だっ!!!」

「・・・・・・・・・本当に追い詰められてるね、ギル」

呆れた顔で言い放つファルだがギルの耳には最早何も聞こえていない。
ちなみにロロは胸囲減少銃を食らったのでトナ校長の所へ解毒剤をうちにいった。
ぶっちゃけ減ったか分からなかったのだが、言えば確実に首が消し飛んでいたので何も言わなかった。
そこまで思い出してギルはようやく今後についてを考え始めた。
まず第一に部屋が修復されるまで他の人の部屋に居座らせてもらう。
この場合候補はうちのクラスメイトだが・・・・・・・・・。

「ロロは不味いよな。さすがに」

第一に考えたのが幼馴染のロロ。
男女で同じ部屋とか普通にまずい。
冒険者としてならどうとも思わないのだが、日常生活で女性と同じ部屋で寝るなんて恥ずかしくて仕方がない。
同じ理由でティアマトも却下だ。
となると次はファルの部屋だが・・・・・・・・・奴の部屋にはジーナも住んでいる。
どう考えても泊まればお邪魔になるだろう。
となれば残るはアレスだが

「あいつの部屋ってどこなんだ?」

そういえば見たことないな、と思案するが知らないものは仕方がない。
事は緊急を要するのだ。
今日中に寝床を確保できなければ野宿となるのは確実だ。
ということでアレスの所へ泊まるのは保留として

「あとは宿屋か?」

といってもお金にそこまで余裕があるわけではない。
前回のゴブリン討伐で頑張ったのである程度のお金はもらえたがそれでも宿屋に一週間も泊まれば底を尽きるくらいだ。

「・・・・・・・・・あとは知り合いか」

自身が知り合った者の家に押しかける。
ある意味一番快適だろうが何より問題なのは首都プロンテラの中に王立学園はあるといってもかなり遠いのだ。
つまり登校時間を考えるとかなり早く起きなければ・・・・・・・・・待てよ?
朝の鍛錬をランニングにして王立学園まで来て、シャワーをファルかアレスの部屋で浴びれば・・・・・・・・・。
知り合いによってはこれが一番妥当な線なのかもしれない。
となるとまず思いつくのがナノちゃん。
・・・・・・・・・いや、思いつくなよ俺。
一番ダメな選択肢だろそれ。
そして次に思いついたのはペン太先生。
非常勤なのでたまに顔を合わせる程度だが、教え子を放り出すような人ではなかった。
次がアカシア・・・・・・・・・本当に顔見知り程度な上、犯罪者じゃねぇか。
あれ?
よく考えたら俺って王立学園の外に友達がいない・・・・・・・・・?
ナノちゃんは・・・・・・・・・いや、しかし・・・・・・・・・。

「休日とか寮に引き篭もってるからでしょ?」

「そりゃそうだが・・・・・・・・・あれ?声に出てたか?」

「うん。というかアカシアと顔見知りって何したの?確か特級犯罪者だよね」

「・・・・・・・・・」

しまった。
何口走ってんだ俺は。
ファルに誤魔化しながら説明した後、先程あげた選択肢の中から考える。
最有力候補なのがアレス、次いでペン太先生だ。
前者が一番無難に思えるが何よりアレスの部屋だ。
人が住める環境であればいいのだが・・・・・・・・・。
とにかくアレスの部屋を探すべく、ギルは寮を探索しはじめた。
ついでに言うとファルも知らないらしい。
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