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2-50 男の泣き所

王立学園の中で最も強い人物は誰か。
そう聞かれたら大多数の人間はガルマー先生と答えるだろう。
ガルマーが教師として指導する時、冒険者見習い達はその技術の高さに驚き尊敬するからだ。
技術力、判断力、身体能力、魔力。
それらを統計的に見てみると確かに王立学園で最強なのはガルマーで間違いないだろう。

「なのー」

が、ごく一部の人間───特に教師陣はこう答えるだろう。
知る人ぞ知る『世界樹の魔女』、トナ校長こそが王立・・・・・・・・・いや、存在最強であると。

「なのー」

こんなふうに団扇を片手にクーラー全開の部屋のベッドの上でゴロゴロしていても、最強なのだ。

「・・・・・・・・・だらしない」

「あ、キリア。どうしたの?」

「今はナノ」

「あ、キリアキリア!美味しいお饅頭をタクが買ってきたの!一緒に食べるの!」

「・・・・・・・・・」

まったく話を聞いていないトナにナノ───キリアは溜息を吐いた。
そしてふとトナはキリアのほうを凝視し

「あれ?どうしたの?なんだか顔色が悪いの」

「・・・・・・・・・ナガレ=ノクトンと遭遇した」

「あー・・・・・・・・・まだ苦手だったの」

「・・・・・・・・・」

「ナガレは生真面目でいい子なの」

「ありえない」

即答で否定するキリアにトナは苦笑いをながらクーラーを切る。
そしてベッドから降りて腕輪からあるものを取り出す。

「はいなの。これが氷・・・・・・・・・まぁだいぶ圧縮してて術式に治すには時間かかるの」

「・・・・・・・・・?エイボンは?」

「エイボンは何か美味しい気配がするとか言って一月前くらいに失踪したの」

「・・・・・・・・・相変わらず」

エイボンなら解凍、そして術式化なんて一日で出来るだろうがいないのなら仕方ない。
トナやキリアとて彼女の身勝手さは昔からよく知っているのだ。

「なの、次のNINO&NANOのライブのスケジュールなの」

「・・・・・・・・・」

キリアは腕輪経由で送信されるそのデータを確認し、頭の中で今後の予定を組み立てていく。

「それじゃあデートにいくの!」

「・・・・・・・・・職務は?」

「いいのいいの。そんなのタクとパールに任せとけば終わるの。
 今日は久々にちやほやされたい気分なの!」

そう言い放ったトナは自身に供給し続けていた魔力の一部をカットした。
するとそこには変身魔法が解除された彼女の姿が。

「・・・・・・・・・大騒ぎになる」

「大丈夫なの!NINO&NANOのゲリラライブにいくの!」

「・・・・・・・・・話を」

「さぁ出発なの!」

「・・・・・・・・・」

NINO&NANOで天真爛漫であるニノ。
実はトナの素顔であり、校長が副職なんてことを知っているのは極々一部の人間だけだったりする。





ギル=ノクトンは部屋のダンボールをあさっていた。
入学してから既に二ヶ月以上たつというのに全ての荷物はまだ部屋に出してない。
といってもギルが持ってきた私物は武器の手入れ道具だったり冒険者の必需品だったりするものばかりだ。
今日出された課題に必要な材料を見て「そういえば来る前買ったっけこれ」と思い出しダンボールをあさっているのだ。
腕輪に入れればいい話だったのだがこういう細かいものを取り出すのは少し技術がいるのだ。
そういえば昔母さんが四次元ポケットに手を入れてお目当ての道具がうんたらかんたら言ってたけどなんだったんだったんだろう。
とにかく腕輪というものは便利なようでいて実は魔法使い向けでもあるものだ。
なんせ格納領域の座標を決めて取り出したりするのには細かな魔力設定が必要で、
小道具を入れようものならそれこそ魔法を使うレベルでの繊細な作業が必要である。
腕輪が支給されはじめて数百年。
その間必需品となった腕輪は人々の魔法技術のレベルを格段に引き上げたがそれでも使い始め1年にも満たないものには難しいものだ。
ギルは一応食料袋と傷薬とバスターソードの領域を腕輪に設定しており、大雑把に操作しても取り出せるようにしてある。
・・・・・・・・・まぁその設定をしたのはファルだが。

とにかくだそのような理由で腕輪ではなくダンボールに入れて寮に送ったギルだが、その作業もファルに任せたのだ。
あれ?

──ファルに任せすぎのような・・・・・・・・・まぁいいか。

そしてその事件は起こった。





「な・・・・・・・・・」

お目当ての材料がないので別のダンボールを開けると、そこには絶句せざるを得ない代物が存在していた。
まさにこのダンボールはパンドラの箱。
開けてはならない、災厄が潜んでいた。

「・・・・・・・・・」

それはいわゆる成人未満お断りな本達。
そしてその傍にひっそりと、しかし確かな存在感を示している『Diary』と書かれた日記帳。
前者はとりあえず忘れることにして後者の表紙をめくってみることに。


はち月なな日すい曜日 はれ
きょうはさーかすをみにいった
ばひゅーんてなってぴょーんとはねてとってもたのしかったです
またいきたいです


「うおおおおおおお!?」

なにこの羞恥プレイ。
駄目だ、これを読むと間違いなく俺はダメージを食らう。
1ページから既に身体がかゆくてたまらない。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

何事もなかったかのようにその日記帳をダンボールに戻してガムテープも張りなおす。
さらにマジックペンを取り出して箱に『危険物』と書いてすっと端のほうに追い寄った。
そして腕輪を取り出して通話機能を呼び出す。
通話中という文字が腕輪の上に表示され、『sound only』というスクリーンと共に繋がった。

「ファル!なんで黒歴史を俺の箱にいれた?!」

『・・・・・・・・・意味はわからないけど、落ち着いて。何の話?』



少年説明中




「ということだ。俺の日記まで入れることないだろ?つうかなんで他の本も何で隠し場所知ってるんだ!?」

『いや、ベッドの下とかありきたりな場所で隠してるといわれても・・・・・・・・・』

「のおおおおう!?」

いやこんなことの為に通話したわけじゃなかった。
とりあえず本題を、と前置きしてからファルに聞いてみることにする。

『今日の課題で・・・・・・・・・ね』

「ああ。ファルなら分かるんじゃねぇのって思ってな」

『・・・・・・・・・?』

そう聞いた瞬間に何故か沈黙するファル。
なんで?
そう思ったのも束の間

『さっきから何か勘違いしてるみたいだけど、僕はギルの引越しに何の関与もしてないよ』

「・・・・・・・・・え?」

『君の母親が荷造りしてたっけ。・・・・・・・・・ああ、だからあの時お礼なんて言ったんだ。
 何もしてないのにいきなり感謝されたから何かと思ったけど、荷造りを僕がしたと思ってたんだね』

ギルにはその声はまったく届いてなかった。
男には泣いていいことがいくつか存在する。
これは泣いていいことのはずだ。

「もう・・・・・・・・・ゴールしていいよね?」

『・・・・・・・・・そうとうショックだったみたいだね』

まぁ僕にはよく分からないけど。
そういい残して通話はきれた。
正直これ以上話す余裕がなかったのでありがたいといえばありがたいのだが・・・・・・・・・
淡々と自分のベッドの下から取り出した青少年向けの本をダンボールに詰める母親の姿を想像して

「うわあああぁぁぁぁぁ!?」

絶叫しながらベッドの上でジタバタと暴れ始めた。
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