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最近これROブログというか小説ブログと化してね?と思うバルセンです。
一番需要のなさそうなものをメインにするなんて・・・・・・・・・。
ROは所属ギルドに先日入った新人さんも合わせてETにいったくらいですねぇ。
最早ET専用になりつつ!

ARに関しては戦闘パートというか、そういうのはしばらくお休みになります。
日常パート等が多くなりそうですねー。
というかアカシア戦、書くの忘れてたぜ・・・・・・・・・まぁいっか。
こういう場合、やってないフラグだし。
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2-45 プロンテラ

腕輪の情報、その中のメールシステムを呼び出しては読み、落胆する。
そんな動作を何度も繰り返していた。
その人物───ギルは彼女からの返信を待っていた。
あの燃える教会の中、一人残った彼女のことを。

「・・・・・・・・・はぁ」

あの後衛兵に話すと何の説明もなしに特級ランクの事件として口止めされた。
どうやらプロンテラ騎士団のほうも何かしらの情報を受け取っていたようで、ギルが通りにたどり着いたその時、対策は練られていた。
ナノのことが心配だったのでしつこく食い下がると、既に犯罪者に対抗できうる人材を送ったらしい。
その人物のことも聞きたかったが、機密がどうとかで教えてもらえなかった。
しかしその時衛兵はブツブツと悪態をつきながら不満を漏らしていたので、案外知らないのかもしれない。
そこまで考えて、再びメールシステムの呼び出し。
受信メールに一件も入っていないのを確認し、また落胆する。

ふもっふ!

腕輪の画面を再び閉じようとして鳴った音。
メールが届いた時に設定された音だ。

「・・・・・・・・・・!?」

焦るようにメールの受信した内容を確認する。

『前を見ろ』

「・・・・・・・・・前?」

「ああ。馬鹿にしてんのかてめぇ。俺の授業がそんなに退屈だってか?」

メールの通り前を向くとそこには青筋を浮かべたトマト先生の姿が。
腕輪をはめた右手を軽く顔の前に挙げているのを見るに、腕輪の情報を展開しているようだ。
ふと受信したメールの送信者を確認する。
そこには『トマト先生』の5文字が。

「何度呼んでも返事しないなんて、いい度胸じゃねぇか。ああん?」

・・・・・・・・・俺、死んだかも。






スコップで何度も地面を突いては掘る。
既にそれだけの深さ、広さで掘ったかは分からないが今日一日中掘っていたのだ。
そろそろいいんじゃないだろうか、と思いずっと下を向いていた顔を上げた。
首の骨が鳴る音を感じつつ背伸びをする。

「こんなものかな?トナ、どうだい?」

「わたしに言われてもさっぱりなの」

「じゃあキリアは?」

「・・・・・・・・・これくらいで」

キリアは僕の問いかけに小首を傾けながら答えた。
どうやら自信がないようで、若干表情に不安が滲み出ている。

「あとは埋めるだけなの!」

「いや待ってくれ。今埋めたら何のために掘ったのか分からなくなる」

「そこに平原があるからなの」

「それ何て落とし穴魂」

そう・・・・・・・・・これから僕達はここに彼らを入れる。
墓を、作る。
それに最後まで反対していたトナのことだ。
これも一応、自分がまだ反対であることを示すための小さな抵抗なのだろう。
一方キリアはボーッと地面を眺めて話には参加していない。
何を見ているのかと思い、近づいてみるとミミズがうねうねと蠢いていた。
・・・・・・・・・相変わらずのマイペースである。

「あとは風の魔法でぶちこむの」

「いやいやいや!そんなことしたら死体四散するから!余計に大変になるから!?」

僕にとって彼らは家族だった。
小さな村、小さな力しか持たない村だったけど、僕にとってそこは間違いなく故郷だった。
・・・・・・・・・本当ならイライラしてトナの言うことを実行したいのだが、さすがにそこまでするのは良心が痛む。





あれからその辺に転がっている死体を魔法で浮かせながら作った墓穴に放り込む作業が始まった。
その間、僕は魔法が使えないので静かにその様子を見守っている。
魔法を使えないというより一般的な魔力を用いた魔法らしい魔法が使えないのだが。

「これで最後なの」

やっぱり最後まで反対していたトナは、少し乱暴に墓穴にその死体を放り投げた。

「・・・・・・・・・いい?」

「・・・・・・・・・ああ」

それを見たキリアがこちらに許可を求め、僕はそれを許可する。
キリアは一度頷くと魔法を使って端にどけておいた土を流し込むようにして墓穴にかぶせていく。
正直な話、ちゃんと火葬してあげたいのだがこんな場所で燃やすと悪臭が酷いだろうし、何より数が多い。
家族ならそんな労力があろうと話は別なのだろうが、僕は既に家族ではない。
そう、家族であったのもここが故郷だったのも、全て『だった』なのだ。
そんな思考をしていると既に埋め終わったのかキリアが僕の裾を引っ張っていた。

「・・・・・・・・・どうする?」

「そうなの。これからどうするの?」

これから、か。
・・・・・・・・・。

「そうだ」

僕達は一度失敗した。
いや、一度じゃないだろう。
何度だって、失敗した。
その度に前に進んできた。
それはまるで御伽噺の英雄達のように。
それはまるで御伽噺の勇者達のように。
それはまるで・・・・・・・・・一つの家族のように。
まだ諦めるには早い。
僕達は世の中に絶望するにはまだ早すぎる。
だから僕は・・・・・・・・・僕達は

「ここに僕達の国を作ろう!」

「・・・・・・・・・なの?」

「・・・・・・・・・?」

二人とも心底不思議そうに首をかしげている。
トナが僕のことを不思議思考回路と言っていたが、たぶんそれのせいだろう。

「僕達が家族に受け入れられないなら僕達が家族を作ればいい。だから僕達がここに家族を作ろう!」

大きく手を広げて、この何もない広い平原を示す。

「・・・・・・・・・不思議思考回路すぎるの。キリア、こんな男さっさと見限ってわたしと静かに暮らすの」

「ひどい!?」

トナがそういうのはある意味当然だと思う。
彼女にとって家族はキリア一人であり、他はどうでもいい存在なのだ。
僕に彼女が協力しているのはキリアとの絆だけ。
だからこんな時、最後に決めるのはキリアなのだ。
僕達はキリアから始まった。
だからきっと、これから始めるのもキリアからなのだろう。

「・・・・・・・・・ロズ。貴方が言うなら」

「・・・・・・・・・なの」

面白くなさそうにトナが顔を背け、しゃがみこみながら地面に何かを書いていた。
と思うとすぐに立ち上がり、びしっとこちらを指差し言った。

「それで名前は何がいいの?まさかロズウェル帝国なんてふざけた名前、言わないよね?」

いや、さすがにそれは言わないが。
・・・・・・・・・しかし名前か。

「そうだなぁ・・・・・・・・・」

そういえば遥か昔に見た、預言書に記されたとある国の名前。
ノルンの名を冠する預言書にあった、最も栄えるであろう国の名前。
僕は自然にその国を、最も栄えるであろう最高の国の名前を言った。

「『プロンテラ』!栄え続ける国、プロンテラを作ろう!」







「・・・・・・・・・なんだこれ」

気付けば夕暮れの教室に一人放置されていたギルは寝起きではっきりしない意識の中、今見た夢の内容を思い出そうとする。
しかし具体的な内容は思い出せず、漠然としたストーリーのみしか残っていない。
なんだか懐かしい夢を見たような、自分ではない誰かの夢を見たような。
そう、あれは確かに自分の夢ではなかった。
では誰の・・・・・・・・・えっと、どんな内容だったっけ。
思い出そうとするもその記憶の忘却は掌から零れ落ちる水のように止めることはできない。

「まぁいっか。で、ファル達何で起こしてくれなかったんだ・・・・・・・・・」

そしてギルは一人、放置されたことに自身の立ち位置を見直すのであった。

2-44 宿敵

迷路のようなエリアEを拙い記憶を元に大通りへと向かって走る。
ギルもロロもちらちらと後ろを確認するが、見えるのは赤く染まった教会のみ。
めっさ燃えてるがな。

「何よその口調」

「・・・・・・・・・なんでもない」

どうやら口に出ていたようで、ロロにツッコミをくらった。
ナノちゃんから聞いた話によると聖職者的には結構大事な建物だったみたいだが・・・・・・・・・いいのだろうか。
といっても戻って消火活動をしたとしても全焼するのは目に見えているし、だいたい特級冒険者に近づいてはいけないという格言がある。
その心は戦闘中の特級冒険者の殆どは広域を殲滅する方法を持っているからである。
このことに因んで特級冒険者は街中で戦ってはいけない。
・・・・・・・・・あれ?
ナノちゃん、戦ってたよな・・・・・・・・・いいのだろうか?
よく考えたら処罰されるんじゃ

「ナノちゃんは大丈夫か?」

「何よ。心配しても仕方ないでしょ。私達は足手まといなんだから」

いや、そうじゃなくて。
そう言いかけて、口を閉ざす。
言ったところでどうしようもないのだ。

「とりあえず俺達は衛兵にこの事を伝・・・・・・・・・!?」

視界に一瞬だけ黒い影が横切ったのが見えて足を止める。

「・・・・・・・・・」

ロロも気付いたのか周囲を警戒するように構えている。

「・・・・・・・・・」

来るなら、来い。









「あれ?」

どうしてあんなところにギルっちとロロっちがいたんだろうか。
・・・・・・・・・デート?

「こんな廃墟でデートなんて、ムードが・・・・・・・・・・いや、案外誰もいないから燃え上がる、のかしらん?」

まぁどうでもいいか。
そうティアマトは結論付けてファルが言っていた燃えている建物を目指す。
ティアマトの姿は少女趣味、というより一歩間違えればゴスロリの魔法少女服。
彼女は今、空を飛んでいた。

「一応認識阻害魔法を使ってるけど、魔法使い達にはどれだけ効果があるから分からないからねぇ」

だから出来るだけ低く飛ばなければならない。
もちろん地上を走るという選択肢もあったのだが、出来るならこんな格好を知人には知られたくない。
もし地上を走っていたらギルとロロに遭遇していたであろうから、ある意味決断は正しかったといえる。

「ようやく見つけた。最後のアカシア・・・・・・・・・」

燃え行く協会に確かに因縁の敵の存在を感じる。
ファルは確かに自身に協力してくれた。
ならばあとは・・・・・・・・・

「穢れを払うだけ!」








その頃ナノは草薙を振り下ろした格好のまま動かずに思案していた。
確かに自分はアカシアを切り裂いたはず。
致命傷は与えられなくてもダメージは確実に与えられた・・・・・・・・・はずだった。

「・・・・・・・・・なぜ?」

目の前に倒れているのはグールと呼ばれるアカシアの眷族。
斬られたはずのアカシアはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべ教会の十字架の上に立っていた。

「この世界ではオーディンが信仰されている。にも関わらずその奇跡を使えないようだが、私は違う。
 我が神は私を見捨ててない。アザトースは我を救い給う!」

「・・・・・・・・・別の魔法。別の技術」

つまるところ、渡り神───異世界からの来訪者にこの世界の理は通用しないということか。
ならば、とナノは頭の中で今の攻撃をどうやって逃れたかを考える。
確かに自分は魔法障壁を切り裂いてアカシアに攻撃を加えた。
が、実際に切り裂いたのはアカシアの眷属のグール。
考えられる可能性としては斬られる瞬間にグールと入れ替わった。
もしくは最初から戦っていたのはグールで、アカシアは何かしらの手段でグールの戦力を底上げしていた。
いや・・・・・・・・・これは

「人に囚われている神の御使いよ」

「私の糧となるがいい」

「何心配することはない」

「その力は我らが神、アザトースに捧げられる」

「神にその命を返せるのだ」

「これ程光栄なことはあるまいて」

自身を囲うように何人ものアカシアが現れる。
口々に勝手な事を言うが、それに反応する余裕がナノにはない。
甘く、見すぎた。
異世界の来訪者を、未知の魔法技術を持つ者を。
そんな考えに同調するかのように纏っている炎の勢いが僅かに衰える。
間違いない、このままだと確実に負ける。

「・・・・・・・・・」

もしアカシアがナノのことを油断していれば話は違っただろう。
が、神の御使いを相手にするアカシアに油断は欠片も存在しない。
であるならば退却が一番確実なのだが、エリアEを大火事で焼き尽くすわけにはいかない。
イグニッション状態であるならば音速を超えることも可能なのだが、火事の大元だ。
草薙を通した身体能力ではアカシアを撒けるかは微妙である。
これがもう片方の身体・・・・・・ならば話は違ったのだが、この身体ではあまり力を出せない。
だからこの神剣である草薙の剣で力を上げていたのだが・・・・・・・・・それすら通用しない相手なのだ。
ならば・・・・・・・・・彼女が来るまで時間稼ぎするのが妥当だろう。
規格外には規格外をぶつけるのが一番だ。

「・・・・・・・・・『万物の王』の信仰者」

「・・・・・・・・・?何故それを知っている。神の御使いとはいえ、異世界の情報、その中の偉大なる神の名を知覚できるはずがない」

「・・・・・・・・・」

「神の御使いよ。ひょっとしたら君は別世界の生まれなのではないのかね?」

その問いにナノは答えない。
教会には静かに、彼女の身体から生まれでる炎のバチバチとした音が鳴り響く。
無言を肯定と見たのかアカシアはそのまま問い続ける。

「であるならば君は・・・・・・・・・クトゥグアではないのかね?」

クトゥグア───アザトースに仕えるナイアルラトホテップと敵対する炎の化身。
炎の精の王。

「つまり君はアザトースに仕える私には協力できない、と?
 しかしならば疑問が残る。クトゥグアほどの力を持つものが矮小な人間に何故協力を・・・・・・・・・っ!?」

その時、一人喋っていた十字架の上に立っていたアカシアが表情を変えて教会の入り口へと身を投げた。
十字架から離れた瞬間にそこへ訪れたのは容赦のない砲撃。
黒い、黒い光線の嵐。

「なるほど。時間稼ぎであったか」

その懐かしい魔力を感じ、ナノが何を考えてあんな発言をしたのか理解した。
もちろん彼女が炎の精霊王であることを否定する気はなかったが、それにしては気になることがあったのだ。
クトゥグアは炎の化身そのもの。
ならば剣で戦うなど、無意味でしかない。
『生ける炎』であるクトゥグアは身体そのものが武器なのだから。
つまり何かしらの理由で弱っているか、ただのブラフか。
いやそんなことはどうでもいい。
そう、来てしまったのだ彼女が。
アカシアにとっての怨敵、そして天敵が。

「さて魔法少女ティア、穢れを払うかな」
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