どうも、BALSENです。
本日更新しなくていいんじゃね?という誘惑に耐えつつやる事ないので早めに更新。
ついでに、先日溜まり場であった会話をネタとして投下
GM:TEさんは攻めだねぇ
TE:(*ノノ)せめられr
BAL:TEさん、攻められる男、と
はい、この時点で
危機感を覚えたあなた、その防衛本能に従って戻るを連打することを推奨します。
丸い人:ばるさん、受け決定だからね
酒の人:あぁ、納得
BAL:
この俺が受け!?×で言うと後ろだと!?GM:TAさんはどっちもいけそうな・・・。丸い人さんは、人数の関係で攻めね。
だって受けばっかになるんだもの( ゚Д゚)・・・・・・・・・
この会話、察しのいい人はお気づきになられただろうか。
察せられない人はその心を決して穢れることなく、生きてください・・・・・・。
それだけが、私の願いです。
酒の人:人数あわせて・・
TA:人数合わなくてもいいからGMさんの好きなように・・・
GM:ん~~でも攻めかなぁ
さらに発展する会話。
ぶっちゃけこれ、止めなくていいのか?と若干思いつつ「明日のブログネタにしようか」と鬼畜なことを考えるバルセン。
身内ブログだからいいよね!
GM:ん~、ばる×TAorTA×ばる でいっか
BAL:まさかの被害集中・・・
そこに我らがギルド廃人四天王の某狭間の住人も同意しはじめる始末。
というか、「でいっか」って投げやりすぎないか・・・?
そしてやってくるこのギルドの良心、・・・・・・・・・だと思ってた人、上等兵がやってきた。
我らがギルドマスターが一言。

GM:
このGの男キャラを受けと攻めに分けて!!酒の人:バルさん総受け
・・・・・・・・・俺ってそんなに受けに見えるのだろうか。
やたら受けを推奨され・・・・・・・・・あれ?
まて、俺ちょっと待て。
攻めとか受けとか、そもそも俺
そんなことに興味ないだろう。
そもそも前提条件が間違っている。
同意するギルドの女性陣。
そしてギルドの良心だと思っていた上等兵さんも同意する。
TAさんが近寄ってきたら意味のない危機感に襲われる始末。
だめだ・・・・・・早く何とかしないと。
ぶっちゃけた話、自分がふと呟いた一言がここまで広がるとは思わなかったんだ・・・・・・。
許してくれギルドの男性陣・・・・・・。
名前は変えてお送りしますが、関係者には
すぐに分かると思います。
RO内で彼らを見かけた時、優しい視線で見守ってあげてください・・・・・・
おまけ

リーンの依頼クエで倒したダンデライオ・・・・・・・じゃなくて、ダンデリオンメンバー。
凄く・・・うるさかったです。
スポンサーサイト
見張り・・・・・・いつもなら「お姉さま」と言いながらロロの後ろを歩いていたジーナはどこへいったのか。
腕輪の振動で交代の時間になったことを知ったギルが最初に見たのはそんなジーナの不機嫌な顔だった。
ロロはというと、焚き火の光で手元を照らしながらファッション雑誌らしきものを読んでいる。
それでいいのかとつっこみたいが、言ったところで無駄だろうと思いそのまま声をかけて入れ替わった。
ロロ達がテントに入っていったあと、打撃音のような音と共にアレスがテントから放り出されたが、概ね予想通りである。
「お・・・・・・鬼や」
ギルとて一人で見張りをする気はないのでアレスを起こそうとしたのだが、まったくおきる気配はなかった。
仕方ないので一人で見張りをしようと思ったのだが・・・・・・・・・女性陣が叩き起こしたようだ。
「アレスが悪いだろ」
「何で起こしてくれへんかったんや!?」
「いや、起こしたけどアレスが起きなかったんだろ。自分の面倒は自分で見ろ」
と言ってもギル自身も毎日ファルに起こしてもらっているのだが、まったく気付いていない。
「はぁ・・・・・・優しく起こしてくれる彼女、できんかなぁ」
「妄想はいいからさっさとこっちに座れ」
いつまでテントの前で寝そべってる気だ、そう睨みつけるとアレスは仕方なさそうに立ち上がった。
「へいへい」
ズルズルと芋虫のようにこちらに這い寄ってくるその姿に、
焚き火にくべてやろうかと一瞬思ってしまうがこんなのでも仲間だ。
例えスケベでマヌケでいいところが一つもなくても・・・・・・・・・くべようか。
「ちょっ、待ちや!なんでワイを持ち上げ・・・・・・・・って、なんで火の前に立つんや!?」
「いや、焼こうかと思って」
「いらんわボケ!」
ギルは暴れはじめたアレスを背後に放り投げ、腕輪の中から剣を取り出した。
そして手元に置くと、腕輪の中からチーズを取り出した。
「もぐもぐ・・・・・・いるか?」
「いらんわ。チーズなんてもう食い飽きたわ」
「ふぅん?ということは崑崙にでもすんでたのか?」
チーズの産地といったら崑崙であり、ギルの食べているそれも崑崙の品である。
ファル曰く名産品らしいのだが、たまたま見かけたので買っただけで、別に好物というわけではない。
「んなわけないやろ。ワイはアインブロックに住んでたんや」
「アイ・・・・・・・・・?」
「アインブロックや。知らんか?」
アインブロック・・・・・・・・・ギルはその名前に聞き覚えがなかった。
詳しく聞いてみようとしたが「面倒や」の一言で断念。
今度ファルに聞いてみようと決意し、腕輪からコーヒーを取り出す。
「よっと」
カップに軽く魔力を流すと、冷えていたコーヒーがしばらくして沸騰する。
魔法機械、その知識を持つものは自動魔法砲台等の戦闘用だけでなくこんな日用品も作っている。
これもその中の一つで、たまたま市場で見かけたものをギルが衝動買いしたものである。
鼻歌混じりで家に帰り、ミルクをホットミルクに変えようとしたが壊れていてファルに治してもらったのはいい思い出だ。
「へぇ。それ便利そうやな」
「だろ?」
こういった魔法機械は総じて相場が高いのだが、ギルが買ったこれは300zと格安。
一般的な日用品・・・・・・・にしては少し高いが、相場の半分以下なのは間違いないだろう。
その結果壊れていたので、案外安かったのはその辺が理由なのかもしれない。
「ワイのいたところではそんな便利なものなかったからな」
「そんなに田舎なのか?」
「へ?あー・・・・・・・・・そんなことないと思うけど、どうなんやろな」
今や魔法機械はミッドガッツ王国のあらゆる場所へと普及している。
それは200年程前に起こった商人達の反乱の事件によるもので、今や家庭に魔法機械があるのは珍しいことではない。
ギルも含め、仕掛けをまったく理解できなく壊す人も少なくはないが。
「・・・・・・・・・母さん、今頃どうしてるかな」
魔法機械を見てふと思い出すのは母親のこと。
今頃機械音痴の我が母は何をしているのだろうか。
「そういや、ギルはんの父は何してる人なん?」
「死んだ」
「・・・・・・・・・す、すまん」
ズズ、とコーヒーを啜りながらの一言に気まずげに視線を逸らすアレスに首を傾げる。
「何で謝るんだ?」
「へ?」
「珍しいもんでもないだろ。今時片親とか孤児の人なんて」
もっともそれとバフォメットを追う気持ちは別物であるが。
「ま、まぁそやな。んで母親はどうなんや?」
「さぁ?どこにいるんだろうな………」
「は?」
思わずギルを見るアレスだが、その顔には負の感情は見当たらない。
「俺がジュノー出る時にどっかに旅行に行ったみたいで………まぁどっかで元気にしてるんじゃないか?
たまに怪しい薬を作るのはやめて欲しいもんだけどな」
「怪しい薬って何や?」
「・・・・・・・・・聞かないでくれ」
過去様々な騒動の原因となった母のことを思い浮かべると目から汗が出るのは気のせいだろう。
「あれ?」
二人で話していると、何かに気付いたようにギルが声をあげた。
「どないしたん?」
「霧が………」
気付けばギル達のテントを含めて周囲が霧に覆われていることに、二人は気付いた。
森といっても樹海ってほどのものでもないし、雨はここ最近降ってない。
この辺りが特殊な環境なのか?
そう思った時、テントの入り口が勢い開かれた。
「これは………ファルさん」
テントから顔を出したジーナは何かに驚いたように目を見開き、ファルを呼んだ。
「なんだいジーナ?………これは」
ジーナと同様の反応をしてからファルは舌打ちをして叫んだ。
「起きろティアマト、ロロ!囲まれた!」
「おいファル何を言って………」
「ギルは戦闘準備!」
「あ、ああ」
いったい何の剣幕だ、と問う前にファルは焦ったように指示を出していた。
ファルは頭に疑問符を浮かべながらも戦闘準備をする仲間を見つめて、早すぎるとつぶやいた。
誰もいないテントの中、ファルは荷物を急いで腕輪に放り込みながら考えていた。
今はまだ5月の後半………こんなにも早くこの現象が起こるとは思わなかった。
「『ミストオブアインヘリヤル』………か。どうだ?」
ファルが呟いた一言に反応するかのように『彼女』は語りかけた。
『イエス。98%の可能性でミストオブアインヘリヤルと断定』
何もない虚空から響く声、その結果にファルは忌々しいと思いながらテントを出た。
「・・・・・・・・・早すぎる。何かが干渉している・・・・・・・・・?」
「─────!?────!」
「ちっ、もう始まったか!」
丑三つ時というかなんというか、こんな時間にモンスターのいる場所で寝れるほど新米な彼らは図太くなかった。
どうにも夕方前にゴブリンと戦った時の興奮状態が続いているらしく、まったく眠気は感じられない。
むしろ身体を動かしたいくらいなのだが、それでは交代で寝ずの番をしている意味がない。
ギルの記憶によると自分の番は確か一番最後──ファルとティアマトは最初──で、アレスと組むことになっている。
何が悲しくて男と一晩語り明かさなければならないのか、と言いたくもなるがジーナと二人きりになるよりマシである。
ふと腕輪を起動させて時計を見てみるが、時刻は1時20分。
ギルの出番まで3時間40分もあった。
それまでこうして毛布に包まっているのも苦痛である。
「暇だ・・・・・・」
「・・・・・・・・・うるさいです」
「す、すまん」
間髪入れずにジーナに文句を言われ、口を閉ざす。
というかジーナも起きてるのか。
そう思いながら、テントの入り口付近にいる彼女を見ると
「ぶっ!」
「しっ!静かにしなさい」
「そうやで。今濡れ・・・・・・・・・じゃなかった。濡れ場やで」
アレス、それ訂正してない。
じゃなくて!
何で全員揃ってテントの外を見てるんだよ!?
「お前ら寝ろよ!」
「ふっ、ギルはんこんな面白・・・・・・・・・い現場、見逃せるわけないやろ」
今訂正しようか悩んだけど結局そのまま貫き通したよね。
こらアレス、何勝ち誇ってんだ。
無駄に誇らしげなアレスは放っておき、とにかく皆が見ているものを見てみたほうが早いと思い、外を見てみる。
「はぁ!?」
「─────?」
「────────。────」
そこには仲睦ましげに近い距離で話し合う二人の背中があった。
ぴったりと密着している彼らの位置は、私達恋人ですと言わんばかりの距離感だ。
「な、ななな」
「ね?意外でしょ?」
ロロが同意を求めてくるが、そういうのは隣にいるジーナを見てから言って欲しい。
「・・・・・・・・・」
修羅だ。
修羅が光臨した。
「いやー、怪しいと思ってたのよあの二人。
ファルも時々ティアのこと見つめてたから、今日あたり何かすると思ってたけど。
正解だったようね」
「ロロはん、さっき意外って言ったやんな?」
「うっさいわよ!」
「ぐべら!?」
ファルとティアマトから視線を外さずに後ろにいたアレスを蹴り飛ばすロロ。
それでも音が鳴らないのはどんな特殊技術なんだろう。
それはともかく実際あの二人の距離感が近いのはどうも気になる。
今朝においてはそういった雰囲気は微塵もなかったのだが・・・・・・・・・隠していたのだろうか?
思案しているギルを尻目にジーナは突然立ち上がった。
「あと10分ですか・・・・・・・・・誤差範囲内でしょう」
そう呟くと堂々とテントを出てファルとティアマトに話しかけた。
ロロが慌てて止めようとしたが、既に遅かったのは言うまでもない。
「あれ?もう交代?」
「早かったねぇ。でもあたいもそろそろ寝たいかな」
と、呑気に返事を返す二人だが。
ねむ
「ふふふ・・・・・・・・・どうぞ気持ちよく永眠ってくださいね?」
微笑みと共に言い放ったジーナだが・・・・・・・・・目はどう考えても笑ってない。
さらに空気がどこか怒気を孕んでいた。
「ジ、ジーナっち?何をそんなに怒ってらっしゃるのでありますか?」
「別になんでもありませんよ?ねぇ・・・・・・・・・ファル、さん?」
「・・・・・・・・・?」
その言葉に心底何のことか分からない、と首を傾げるファルを見てギルは軽く尊敬の念を起こした。
あの重圧の中であんな真似を出来るなんて、ファルすげぇ。
首を傾げたファルを見て毒気を抜かれたのか、ジーナも怒気を抑えて溜息を吐いた。
「もういいです」
「何が?ちょっと待って、考えるから」
「考えなくていいですよ!何記憶掘り出してるんですか!?」
「・・・・・・・・・?」
「ファルさん、寝る!私、寝ずの番!わかりました!?」
何故にカタコト。
しかしその勢いに押されたファルは若干引きつつも頷き、こちらに向かってく・・・・・・・・・ってそれやべぇ!?
「アレスさっさと寝・・・・・・・・・」
「ぷしゅー」
寝るどころか気絶していた。
そういえばさっき蹴り飛ばされてたな・・・・・・・・・。
ファル達がテントに入る数秒の間にギルはこっそりと毛布に包まった。
寝ずの番、というか見張り中でティアマトは欠伸をかみ殺していた。
中央の炎の向こうにいるファルという青年は暇そうに首からぶら下げている古ぼけた鍵を弄っている。
番というもの全般が二人で行われるのにはそれなりの理由があり、それは一人一人に役割があるからだ。
片方が報告しなければならないが、その間番がまったくいなくなるのも問題なわけで。
つまるところ、寝ずの番はペアで行われるものであることに異論はないのだ。
しかしティアマトはこのアミダクジで決められた結果に冷や汗をかいていた。
交代までたった2時間という短い時間だが、それでもこの青年とだけは二人きりにはなりたくなかった。
それにティアマトにとってこの沈黙は辛いものだ。
不謹慎だがゴブリンが襲撃してくれたほうが気楽なものだった。
「ティアマト」
「ふぇ?あたい?」
「他に誰がいるの?」
そうだ、と言わんばかりに声をあげたファルに首を傾げ、警戒しつつ答える。
「何?」
「こんな機会でもないと話せないと思ったからね。少しズルをさせてもらったよ」
「ズル・・・・・・・・・?」
いったい何の話だろう、そう思い問いかけようとしファルの言葉に息を飲んだ。
「驚いたよ。こんな世界に渡り神・・・・・・・・・いや、異世界人が訪れるなんてね」
「・・・・・・・・・!?」
なんで、どうして。
そんな疑問が頭に浮かび、瞬時に杖を出現させる。
真横に置いておいた今回の狩りにおいて使った剣を蹴り飛ばし、構えた。
「あんた・・・・・・・・・何者?」
「僕?そんなのどうでもいいんじゃない?別に君をどうこうしようって話じゃないから」
「・・・・・・・・・それで話って何よ?」
杖を向けられても動く様子のないファルだが、それでも警戒を解くことなく構えたままティアマトは問うた。
微かに微笑んだファルは何の澱みもなく提案した。
「こんな世界に来るくらいだから君にも目的はあるんだろうね。
簡単な取引さ。僕のことを手伝う代わりに、僕も君のことを手伝う。簡単でしょ?」
「無理よ。私が追っているのはこの世界の住民じゃ勝てないわ。足手まといよ」
「それがそうでもないんだな。君が追っているのは・・・・・・・・・『これ』でしょ?」
ファルが握った手を差し出すように開いた。
「な!?あんた・・・・・・・・・死にたいの!?というかあんたが倒したの!?」
「そうだよ。暴れん坊だけど抑えられないことはないし。これでわかった?」
「・・・・・・・・・そうね。あんたが戦力になるってことは分かったわ。
だけど、あんたはあたいに何をさせたいの?」
確かにファルが戦力になる、あるいは彼の交友関係で戦力になる人物がいることは確実だろう。
ティアマトにとって一人で出来ないことはないのだから好条件じゃない限りこの提案を受ける気はなかった。
しかし
「クリスマス・・・・・・・・・12月25日の大異変の時、ちょっとしたことをして欲しい。
簡単な仕事なんだけどこの世界の。いや、僕の知り合いには頼めないことなんだ」
「・・・・・・・・・大異変?」
「君も気付いてるんじゃない?この世界の歪みを。違和感を」
「・・・・・・・・・?」
「?ああ、そうか。魔法の体系が違うから異世界人といえど、分からなくても仕方ないか。
実はこの世界はね」
近づいてきたファルにビクッと反応して攻撃しそうになるが、何とか堪える。
そして耳元でファルが・・・・・・・・・この世界の秘密を呟いた。
「・・・・・・・・・え?」
離れていった彼だが、未だにその言葉は耳から離れない。
今、彼は何て言った?
「ちょっと待ちなさい!ありえないわ、そんなこと!」
「だよねぇ。馬鹿馬鹿しいよね」
思わず叫び声のようなものを上げたティアマトに対してファルは苦笑い。
そのすました反応に抗議したくなったが今はそんな時ではない。
「そんな状態ならこの世界はとっくに滅びているはずよ!?」
「まぁね。でも今は何とかなっている。そしてそれが大異変を境に何ともならなくなる」
「そもそも大異変って何よ?あなた、何を知ってるのよ?」
「・・・・・・・・・」
彼はニヤリと笑い、呟いた。
「偽りの神様が作られ、世界は救われる」
彼の言葉は、この世界での私の物語の始まりだった。
昨日更新すると言っていたバルセンですが、実はそんな約束していたことをつい8時44分くらいに思い出しました。
いやぁ・・・・・・こんなこともあるよね。
さてAR、まともな戦闘かと思いきやたかがゴブリンなので実力差がありすぎ、蹂躙になってしまいました。
ちなみにこの世界の住民、別にモンスターとか人を殺すのに何の抵抗もありません。
さすがに近しい人が死ぬのは嫌いますが、犯罪者をかばったり等をするのは基本聖職者だけで、だいたいの冒険者はさくっと殺しちゃいます。
こっちの世界でいう、害虫に殺虫スプレーかけるような感覚ですね。
やらなきゃやられる、を素で行く世界のうえに人間達の領域がモンスターに侵されてきているのでそのような余裕がないわけですね。
ついでに言えば犯罪者に対する裁量は国王によってかなり代わります。
番外編の女子風呂覗きの話の後編ですが、別に忙しいとかじゃなくて単に忘れていただけです。
・・・・・・・・・別に面倒だから放置してたわけじゃないよ?
さてROの話は・・・・・・・・・相変わらずハンターで頑張ってます。
だが月曜日に作りはじめて土曜日現在で94になり、さすがにだれつつ・・・・・・・・・。
この感じだと3次になるのは来年っぽいかなぁ。
さてさて、来週のサ○エさんは~・・・・・・・・・じゃなくて、次の更新日はたぶん火曜日?めいびい。
え?寒いギャグだって?
うち日記は基本的に思いついたこと垂れ流してるだけで、だいたい書いたこと修正してないからそういうこともある。
つうかRO内でも自重してないしうち。
もんもんもん。
そんなもやもやした思いを感じつつも目の前のそれから目を離さない。
というか自分の父親の話だったら俺だって聴く権利あるだろ、今更そう思うが今言ってもとぼけられるだけだろう。
ファルがスオウ先輩に何かを呟く前、あそこが分かれ目だったとギルは感じていた。
・・・・・・・・まてよ?
そんなに有名なら調べればすぐに出てきそ・・・・・・・・・・・
「ギル!ぼーっとしてんじゃないわよ!」
「おっと」
2頭身くらいの、小さく様々な武器をもつゴブリンの攻撃を軽く避けてそのままバスターソードを振りぬく。
敵から目を離さなくても考え事をしていたら意味がない。
ちらりとロロのほうを見るとそこには仮面ごと殴り倒され、ひび割れた仮面や、仮面ごと陥没した頭が雑草のごとく並んでいる。
内臓のほうが破裂しているのか、お腹が妙に膨らんでいるゴブリンも・・・・・・・・・・いや、深く考えまい。
「っは!」
目の前のゴブリンが振りかぶった斧を下ろす前にその手、頭ごと一閃。
僅かな手ごたえと同時にそれらが飛ぶのを見るとさらに踏み込み別のゴブリンを切る。
実際始めての実戦なのだが、ギルはこれを物足りなく感じていた。
身体の作りが頑丈ではなく、元々下級モンスターであるゴブリンは正直ロロのように蹴り飛ばすだけで倒すことが出来る。
それをわざわざ両手剣で斬り飛ばしているのだから、手間と感じるのも無理はないだろう。
言ってしまえば折り紙を刀で切っているようなものなのだ。
パンッ
乾いた音とセットで共にすぐ近くで何かが倒れる音がする。
少し離れた場所にいるジーナの仕業だろうが、何故こっちの敵ばっかり撃っているのだろう。
さっきから流れ弾がこないかヒヤヒヤするのだ・・・・・・・・・
パンッ
「ひぃっ!?」
撃ち損ねたのか、何かが頬を掠めていく感触。
頬を触ってみるとツーッと赤い何かが垂れていた。
恐る恐るジーナのほうを振り向くと、そこには銃身をこちらに向けているジーナさん。
・・・・・・・・・あの?
「ごめんなさい。わざとです」
「ですよねー!・・・・・・・・・って殺す気かぁ!?」
一瞬納得しかけたが、納得したらダメだろこれは。
・・・・・・・・・って、あのぅ?
その傍ででっかい炎弾を貯めている方はなんで手をこっちに向けているんでしょうかファルさん。
『解き放て、赤の衝撃。ファイアーボール』
「って死ぬわまじで!?」
迫ってくる炎の弾に身を投げるようにしてそれを避けるギル。
実際はこんな大げさに避けなくても当たりにいきさえしなければ当たらないルートだったのだが、
炎の弾が迫ってくるのを見て焦らない人間がいるだろうかい、いやいない。
チュドーン、と何かが着弾・・・・・・・・・というか爆音を聞きながら受身をとり、そのまま着地地点にいた相手を大袈裟斬り。
しかし敵のど真ん中に突っ込んでしまったのか、周囲には結構な数のゴブリン。
武器ごと真っ二つにしたのを確認すると、そのまま剣に魔力を流し込み、勢い良く地面に突き刺した
「マグナムブレイク!」
自らを中心に小規模の爆発が置き、ゴブリン達を弾き飛ばす。
爆発が収まった直後に飛び掛ってくるゴブリンがいるが、それにもギルは反応し
「遅い!」
剣を抜き取った反動のまま回し蹴りを放つ。
足に気持ち悪い何かが砕けるような感触が伝わり、顔を顰めるがすぐにバスターソードを振る。
父の教え、相手の動きをよく観察し、敵の攻撃の始点を潰す。
ゴブリンの短刀が浅くこちらを切り裂こうとしたのをバックスッ轍鮒で避け、勢い良く一回転しながらなぎ払い。
「まだまだいける!」
「うへぇ・・・・・・・・・」
可視範囲にいるゴブリンを殲滅し、しばらくの警戒の後にギルは力が抜けたように座り込んだ。
周囲の安全確保から帰ってきたジーナとティアマトはそのままスオウと何か話していた。
「死ぬかと思ったわ・・・・・・・・・」
「お前のせいだろ!」
アレスの一言に全力でギルがつっこんだ。
何故ゴブリンの大群と戦闘することになったのか、それはアレスが原因だ。
周囲を警戒しつつ動いていたギル達だが、突如立ち止まったアレスが叫んだ。
『あの蝶は・・・・・・・・・ハガルや!』
『って、何で走るんだよ!?』
『止まりなさい!』
『ワイはもう誰にも止められんでー!』
後から聞いた話によると、ハガルという蝶はコレクターの間で数十万で取引されているらしい。
だからといってモンスターの大群の中につっこむのはやめていただきたいものだ。
しかもその原因となったアレスはゴブリンから逃げ惑うだけで、役に立たなかった。
スオウは監督の立場から手を出さず、ティアマトは良く分からない。
そういえば見てないな、と思いファルに聞いてみると。
「ティアマト?僕、彼女の戦い見てたけどギルより強かったよ」
「そうなのか?」
「うん。それに熟練者って感じだったし。彼女、僕みたいに資格とらずに冒険してたんじゃないかな?」
冒険者の資格を持っていなくても冒険をすることは可能だ。
もちろん一人なら正規の冒険者のように様々な場所に出入りしたり、
手軽に物品を換金できないのだが、ファルのような事例もある。
例え非正規の冒険者であっても正規の冒険者にくっついていけば問題なく冒険者として振舞えるのだ。
つまりティアマトはそういった非正規の冒険者をやっていたのではないかということだ。
「それに比べて・・・・・・・・・」
ギルがジト目で見ると、アレスは慌てたように言った。
「しゃあないやろ!ワイは元々非戦闘員なんや!」
「じゃあ何で実習来てるんだよ。普通免除じゃねえの?」
「・・・・・・・・・ワイやって意味わからんわ」
ちなみにアレスが目指している冒険者は主にパーティの支援を目的としたものらしい。
パーティの主な換金交渉や補給等が主な役割で、凄腕になるとギルドに雇われたりもするとか。
そんな後方支援担当のはずのアレスが実習に連れてこられている事は学園の不手際としか思えない。
それ以前に出発する前に気付け、とギルは思ったが言わないのは優しさから・・・・・・・・・
というわけではなく、単純に言うのが面倒だっただけだ。
「血ってきもちわりぃな。着替えたくなるな」
「そうね。出来るなら早いところこの服脱ぎたいわ」
得意レンジが近距離なギルとロロは真っ赤に染まった自身の服を見て溜息を吐く。
雨でずぶぬれになった、肌に吸い付く感触はその時のそれに似ているが雨より酷い。
何せ血は水より遥かに粘性があり、ベトベトするのだ。
そういえば、と授業で服から血を抜く魔法の理論を言っていた気がするが・・・・・・・・・今、その理由が良く分かった。
「あら?」
ボーっとスオウとティアマト、ジーナを見ていたロロが疑問の声をあげた。
「あん?どうした?」
「ティアの服、血ついてないわ。・・・・・・・・・なんでかしら?」
「んなわけねぇだ・・・・・・・・・本当だな」
ギルは見ていないがティアマトは剣で戦っていたと聞いている。
ならば返り血を浴びていないのはおかしいはずだが、現にティアマトの服は今朝集まった時と何ら変わらない。
「ちょっと私聞いてくるわ。さすがにいつもこうなるのは耐え難いもの」
「俺にも後で聞かせてくれよ」
「あんたも来るのよ馬鹿!」
「この辺からは降りていくよ」
「そうだね。そろそろ彼らの縄張りだ」
監督役の先輩、スオウの言葉にファルが答えるとギル達は荷物を簡単にチェックしてから荷車を降りた。
「ところで戦い方を聞きたいんだけど。特に女の子とか女の子とか女の子とかの」
「正直ですね・・・・・・・・・煩悩とか欲望に」
スオウはどうやらオープンスケベといった部類の人間のようで、たまに顔が崩れているのが今日だけでも数回見れた。
そしてその視線の先には絶対に女性がいるのだ。
実に顔は整っているスオウ先輩であるが、絶対に女性にもててないのは予想できることである。
「あ、そういえば名前そこの二人しか聞いてないね。戦闘スタイルを教えてくれ!電話番号も是非!」
「駄目だこの人。ま、あたいはティアマト。今回はレイピアで戦う予定だよ」
そう言ってレイピアを見せるように抜くティアマト。
スオウはそれを見て頷き「で、お前は?」とギルを見た。
「俺はギル。見ての通りこの剣で・・・・・・・・・」
「ちょっと待ち。ぎる?ひょっとしてギル=ノクトンか?」
ギルの名前に心当たりがあるのか一度ギルのセリフを遮って問い直すスオウ。
「あ、ああ。そうだけど、どうしたんだ?」
「・・・・・・・・。そうか」
「・・・・・・・・・?」
というか何で俺の名前を知ってる、そう聞こうとしたが恐々とスオウはファルに向かって質問をしていた。
「じゃあ君は噂の・・・・・・・・・というかEクラスだから3人の誰かが、か」
「どういう噂かは知らないけど、不正入学したとか女性を複数侍らしているとかそういう噂なら僕のことだね。
もっともその噂が本当かどうかは別だけどね」
なんでそんなに自分に関する噂を知っている、とアレスとティアマトが驚きの表情を浮かべた。。
普通噂というのは本人に流れないのが普通で、友人経由でそれが伝わることはあれど、Eクラスにいたってそれはない。
何故ならEクラスは王立学園でも特殊な立ち位置に属し、他のクラスとの交流といえるものがないのである。
もっともこの時期ならそれはEクラスに限らず交流は入学式の時のみしか存在しなかったが。
だが元から長い付き合いのギル達はファルが実はプロンテラを牛耳ってたとしても驚かない話であった。
そう彼らが思うのにはとある事件が由来するのだが、それはまた別の話だ。
「あー、私はロロ。一応手甲で戦うわ。支援魔法は初級程度ね」
「わいはアレス。・・・・・・・・・あれ?なんでワイ実習に出てるんやそういえば」
「今更かよ、おい」
「・・・・・・・・・ワイ入学時に後方支援担当って聞かされたはずなんやけど。
だから間違っても直接戦ったりしない・・・・・・・・・あれ?」
「なるほど。つまり剣は腰にぶら下げているが、素人なのか?」
スオウはペラペラと冊子を確認しつつ何かメモ書き記していく。
「僕はファル。魔法を使える剣士だね」
「私はジーナです。銃を撃ちますので、私の前に立つと危険ですよ」
「大丈夫。俺はむしろ後方に立ってそのスカートの中身を覗きたい」
「・・・・・・・・・私の背後に立つと撃ちますよ?」
さりげなく腕輪に手を置いていつでも銃を取り出せるようにしたジーナに冷や汗を浮かべてスオウは声をあげた。
「まず最初は周囲の安全を確保しつつ水辺で拠点を作る。本格的な実習はそれからだよ。
さて女の子は俺の後ろについてきな!」
無駄にポーズを決めながら頭に唾つきの帽子をかぶっているかのように手を頭上におくスオウ。
しかし女性陣はそんなスオウを完全に無視してEクラスの面々同士で簡単な陣形を話し合っていた。
「ふっ、俺の格好良さに直視できないってか」
いい加減鬱陶しくなってきたジーナはスオウの耳元──スオウは「フラグきた!」と叫んでいた──でこう囁いた。
「黙っててください○○」
「○○?・・・・・・・・・!?ちょっ・・・・・・・・・それはいくらなんでも酷くない!?」
何を言われたのか、そこには涙目で抗議する男の姿が。
「・・・・・・・・・?ロロ、何言ったのよ?」
「お姉さま、女の子の口からそんな恥ずかしい事言えませんよ」
「いや・・・・・・・・・いいや」
スオウに向かって言ったことを聞こうとしたが、ギルは考えることをやめた。
こちらをチラリと見たジーナの目が怪しく光っていたからだ。
たぶん、喋ったら、酷い目にあう。
「まず最初は拠点を探すか。ファル、どんなところがいいんだ?」
「ゴブリン相手ならベストは洞窟だけど。この辺そんな場所ないだろうし、見晴らしの良い場所かな」
「ちょっと待ちや。見晴らしの良い場所だと奇襲に気付きやすいけど、逆に丸見えやで?」
「だけどこの辺の地形だと・・・・・・・・・」
「あたいはむしろ住家を乗っ取る・・・・・・・・・」
「いえしかしその方法では・・・・・・・・・」
ファルに話しかけたのだが、いきなり話し合いが始まった。
もともとファルが何とかしてくれるだろうと何も考えに聞いたので、その会話に加われるはずもなかった。
仕方ない、一人寂しく
「私、何言ってるのかわらからないわ」
・・・・・・・・・二人寂しく結論が出るのを待っていよう。
「あ、そうだ」
そういえば何で自分の名前を知っていたのか聞かないと。
スオウはちょうどブツブツと虚空を頬を赤く染めながら見つめていた。
都市の中だとうっかり通報してしまいそうなくらいの怪しさだ。
「スオウさん」
「バニーさんがやはり・・・・・・・・・って何か?」
「・・・・・・・・・。何で俺の姓名知ってるんだ?」
「スルーされたな。それはそれでちょっとお兄ちゃん寂しいぞ」
「いやどうでもいいから」
「そうかな?まぁいいか。何で姓名を知ってるか、だっけ?」
コクリと頷くとスオウは首を傾げた。
「むしろ、何で自覚がないのか分からないな。君だって君のお父さんがどんな人物か知らないわけじゃないだろう?」
「・・・・・・・・・そういやそうだった」
「え、その反応。まさか忘れてたの?」
「あ、ああ」
本気で驚いた表情をしたスオウにギルは嫌な汗が額を伝うのを感じた。
たぶん心の中で評価が低くなっていることだろう。
「セタ=ノクトン。23年前、ゲフェンの塔地下の討伐において単独で特級モンスターを倒した冒険者」
「・・・・・・・・・あれ?」
「君は自覚が薄いかもしれないけど、下級生の間じゃEクラスを除いて君のことだいたい皆知ってるよ?」
「いつのまにか有名人!?」
「さらに君は知らないと思うけど、冒険者の間でも結構有名だよきみ?」
「規模がさらに大きくなった!っていやいやいや!そうじゃなくて単独で特級モンスターを倒したって何だよ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?え?」
自分が父から聞いた話では、自分以外に二人の人物と倒したと聞いたが・・・・・・・・・。
スオウは何を言っているのか分からないと思った後、まさかの可能性に思い当たって聞いた。
「君、セタ=ノクトンの息子だよね?」
「あ、ああ」
「実の息子だよね?」
「へ?ああ、そうだけど」
「・・・・・・・・・。セタはね・・・・・・・・・・・・」
「待って」
その時、話し合いをしていたはずのファルが急に二人の間に強引に入った。
話を中断されたギルは不満そうに文句を言ったが、ファルはそれを全て無視し、スオウに何かを呟いた。
「・・・・・・・・・。・・・・・・・・・」
「はい?そんなことありえるのん?」
「・・・・・・・・・」
「はいはい。そんなわけでギル=ノクトン!」
話し終えたスオウは大声でギルを呼んだ。
いったい何だ、そう聞く前にスオウは言った
「忘れろ!」
「は?」
「うん、だから忘れてね?」
がたんごとん。
がたんごとん。
ペコペコ形の魔法機械が荷車を引く振動を感じつつロロはそっと隣で寝ているギルを見る。
寝ていても相変わらずの間抜けな顔を晒していた。
どうやら昨夜はあまり寝られなかったらしく、夜中にランニングに行っていたらしい。
子供か、そうファルが呟いたことにギルは抗議していたがロロも同感だった。
確かにロロは用意を色々忘れていた部分もあるのだが、睡眠だけはちゃんととっている。
お肌に悪いというのもあるが何より初めての実習で実力を発揮できないのも困るものだ。
「そういえば・・・・・・・・・聞きそびれてたのよね。ティアマト、ちょっといいかしら?」
「うん?何よ?」
「先日まで貴方戦闘時は聖職者服着てたわよね?なのになんでレイピアもちながら魔法使いの服着てるのよ」
そう聞くとティアマトは若干首を捻ってから納得したように呟いた。
「あー、この世界そういうところあるねぇ。魔法使いは杖だけ、っていうか」
「ティアマト?」
「あたいにとってはこれが当然なんだよね。こう、職業で決めるのは変だと思うのよねー」
そういえばファルも似たようなことを寮についた日に似たようなことを言っていた気がするなとロロは思い出してから聞いた。
「そもそもそんな簡単に転職できるの?制服が届くのだって数日はかかるのが普通よ?」
「気にしない気にしない」
ひらひらとティアマトは手を振ったのでロロはそれ以上追求するのをやめた。
元々そこまで気になることでもないし、単なる話のタネにふっただけだ。
「それよりギルっち、顔が崩れてるけどいいのん?」
「へ?って、なんてだらしない顔してんのよ!?」
僕はその人にべっとりだった。
何でかは今となっては思い出せない程遠い記憶。
確かその頃くらいにその人はある人に懐かれたんだったっけ。
だから取られると思って、取られたくないと思って、ただくっついていた。
あの人は僕がくっついているにも関わらずいつも通り無表情で母さんと家事をしている。
「こらギル。離れなさい。メフィスの邪魔でしょ」
「やだ」
「ほら、メフィスも嫌ならちゃんと言うのよ」
「問題ない」
「ほら!」
僕は勝ち誇ったように笑い、逃がさないようにさらに身体をくっつける。
困ったような顔をした母さんは溜息を吐いて言った。
「はぁ・・・・・・・・・ギル、独占するのも程ほどにしなさい。メフィスは貴方の抱き枕じゃないのよ」
「いや私は・・・・・・・・・。ターニ・・・・・・・・・」
「母さん、でしょう?メフィスもいつになったら慣れるのよいったい・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・私は問題ない、母さん」
「問題ないわけないでしょう。いつあの人の因子が覚醒するか分からないのよ?
普通に過ごす分には構わないけど、いつもべったりってのは問題があるわ」
僕には母さん達が何を話しているのか分からなかったけど、何か深刻な話なのは分かった。
「とにかくギルがくっついているとメフィスがちょっと危ないのよ。だから一人で遊んでなさい」
「・・・・・・・・・はぁい」
そう、頷くしかなかった。
視界の端に映った彼女、メフィスの顔が少し困った色を浮かべていたからだ。
無表情の彼女がそういう顔をするということはよほど困ったことがあるのだろう。
完璧には理解していないが子供特有の感覚でギルはそう渋々ながら納得し、家を出る。
「どうしたのギルくん」
「ロロちゃん」
何の因果か家を出たら目の前に従兄妹のロロがいた。
6歳児であるロロだがここは私の庭だと言わんばかりにイズルートの通路を全て把握している。
以前ロロについてイズルートの探検をしたことがあるのだが、酷い目にあった。
というか対面早々どうしたのか、と尋ねられるほど落胆した顔をしていたのだろうか。
「お姉ちゃんが最近冷たいんだ」
「いつもじゃない」
「・・・・・・・・・そうともいう」
正確に言うなら冷たいのではなく無関心といった感じである。
だがそれでもギルにとって姉は大好きだった。
「知ってるよ!ギルくん、そういうのって『しすこん』っていうんだって!」
「しすこん?」
「うん!この前ママがパパと喧嘩してる時に『しすこん』って言ってたんだよ」
「へぇー。僕は『しすこん』なのか。ところで『しすこん』って美味しいの?」
「きっと甘いんだよ」
「そうなのかー」
「!?」
全身に鳥肌が立つように感じ、飛び起きる。
「・・・・・・・・・っは・・・・・・・・・・はぁ、はぁ」
数日前に見た夢を思い出す。
キーワードは、姉。
「メ、フィス?」
今度はやたらはっきりとした夢だった。
だがどうもおかしい。
知らない。
こんな記憶、あるわけがない。
前回は妄想だと片付けたが二回目ともなると自身の記憶を疑わざるを得ない。
「ロロ・・・・・・・・・ロロ?」
あれは・・・・・・・・・ロロに少し似ているが、母さんだろう。
というかその後に幼い頃のロロと会ったので間違いないだろう。
もしこれが実際にあった出来事だと仮定すると・・・・・・・・・いやその前にこんな記憶、覚えがないのだ。
そもそもなんで最近になってこんな夢を見るように・・・・・・・・・
「大丈夫?寝てる時は締りのない顔してたけど、今は酷い顔よ?」
「うおっ!?」
ぽつりと呟いたその名前の本人が心配そうに目の前にいた。
それに驚き後退しようとするが壁に身を預けて寝ていたので少しも動けなかった。
幼馴染で羞恥心とかがある程度麻痺してるとはいえ・・・・・・・・・こんなに近くに女の子がいるのは落ち着かない。
「どうしたのよ?顔、赤いわよ?」
「な、なんでもねぇよ?」
「なんで疑問系・・・・・・・・・」
「う、うるせぇよ!」
顔が熱いのを自覚しながらもふと思いつく。
姉が妄想云々ならロロに聞けばいい話じゃないか。
夢の中でもロロはメフィスという人物をよく知っていたようなので、聞けば分かるだろう。
「なぁロロ」
「何よいきなり真面目な顔して」
「俺って姉なんていたっけ?」
は?
そう言いたげに間抜けにも口が開いたままの状態で硬直するロロ。
「ギ・・・・・・・・・ギル?」
「なんだよ」
「頭、大丈夫?」
まるで鬱病にかかった家族に触れるように、恐々といった様子で尋ねられた。
「!?」
そうじゃないか。
普通に考えたらこう言われるに決まってたじゃないか。
どうかしていた。
夢と現実をごっちゃにするなんて精神的にやばいこと確実である。
「ファル。ちょっとギルが疲れてるみたいだから今日はよく休ませていいわよね?」
「うん?なにそれ?」
「ちょっ!ロロさん!?そこまで深刻にならなくてもいいんですよ!?」
やっとRO小説の移転作業おわりました。
長かった・・・・・・・・・ARはこの辺からどんどんギル達が事件の渦中に巻き込まれていきます。
バトルも多くなり、本格的な冒険・・・・・・・・・はないけど、明確な敵も出てきます。
ARがいったい何の略か、それは本編を読んで行くうちに判明することになりますぜ兄貴!
まぁ勘の良い人はなんとなく気付いてそうだけど・・・・・・・・・ちなみにステ表ですが、正直ネタバレなのでのせるのは避けたいんですよ。
が、もし希望者がいるならネタバレ部分を除いてのっけることにします。
能動的にやりたいと思う作業じゃないんだぜ・・・・・・・・。
RO内の話はというと相変わらずハンター育成ちう。
ブラディウムゴーレム美味しいです。もぐもぐ。
次の更新日はたぶん日曜・・・・・・・・・いや、土曜に九時でいいや。
狩りといい更新といい、ムラがありすぎるバルセンでした。
トナ校長に引き連れられて向かった場所は学園の敷地、プロンテラとの境界にある正門の前だった。
既にAクラスからDクラスの面々は全員集まっているらしく、それぞれのパーティーで雑談をしていた。
「なぁファル」
「なんだい?」
ギルがその光景を見て一言。
「Eクラスって少なくないか?」
「今頃その疑問!?」
普通に考えると新入生達は水鉄砲でバトルロワイヤルやガルマー先生との勝負である程度顔を見合わせている。
さらに言えば新入生歓迎パーティも機会に入っている。
その事をファルが話すと何かを考えるかのように俯き、ふと顔を上げた。
「そういえばNINO&NANOのサイン色紙どうなったんだ?」
「一体何なのよ突然・・・・・・・・・。というか何今になって思い出してんのよ。馬鹿?」
「ロロっち、あたいらも忘れてたんだから強く言えないんじゃ?」
「・・・・・・・・・そうね」
実際ガルマー先生にフルボッコにされて景品とかどうでもよくなっていたのは確かだ。
だいたい今にして思えばトナ校長とガルマー先生がグルだったのは明白である。
景品にしても本当にあったのかすら疑わしい。
「ワイは欲しかったな・・・・・・・・・色紙」
「あれ?アレスっちも何とかのファンなの?」
「何とかってなんや。NINO&NANOや!」
「はいはい・・・・・・・・・これだからオタクは」
ボソッと小さな声でティアマトは呟き、誰にも聞こえていないことを確認すると再び質問した。
「で、そのファンなの?」
「違うわい。ワイは商人やで?これに変えるんや」
これ、と指を輪っかにし、アレスはニヤリと笑った。
「なんせNINO&NANOは神出鬼没でライブ以外はまったく会えないんや。
おかげで探し出すのに苦労したんやけど・・・・・・・・・」
「ちょっと待ってください。探し出すってなんですか探し出すって」
「・・・・・・・・・。言葉の綾や!決してストーカーとかいうんじゃなくてやな・・・・・・・・・」
「最低だな」
「最低だね」
「最低ね」
「最低ですね」
「最低だよ」
「ぬおおおおおおおおおおおお!」
全員に白い目で見られ、膝を折り両手を後頭部に回して挫折ポーズ。
ふと気が付くとEクラス以外のクラスから妙な視線を感じ、ファルが見るとそこには変人を見る目をした1年生達。
まだ変態を見る目じゃないだけマシだろうかと思考しつつもトナ校長が小さい体をブンブン振り回して
注意をしている姿を見る。
ぶっちゃけた話、誰も聞いていない。
「Aクラスはエルダーウィローだっけ」
「あん?ファル、クラスで狩る対象が違うのか?」
「当たり前ね。全員で狩るなんて大袈裟すぎるわ。別に殲滅運動じゃないのよ?」
そりゃそうだ、とギルは納得。
モンスターとて、生きてるのだ。
殲滅なんてしたら生態系が崩れてしまうのが現実だった。
もっとも現在封鎖されている下水に住んでいる黒いモンスターGの殲滅運動は非常に活発なのだが・・・・・・・・・。
やはり見た目か、見た目なのか。
「君達がEクラスかな?」
「はい?そうですけど・・・・・・・・・貴方、引率の上級生ですか?」
「敬語なんて面倒だからいいよ。・・・・・・・・・女の子にはむしろ罵られたい」
見知らぬ狩人服を着こなし弓を担いでいる金髪の男にファル答えると、ギルが眉を顰める。
ちなみに上級生の男がポツリと呟いた一言は誰にも聞こえなかった。
「上級生、いたのか」
「ええ、実在したのね」
「あんたら、上級生がいたことぐらい、あたいだって知ってたよ?
そもそもこの時期、上級生は遠征で昇級試験やってんのよ」
そうなのかー、とギルとロロが口を揃えて言う姿にティアマトは溜息を吐いた。
この二人はよくも悪くも周りにあまり興味がないらしい。
だからこそ二人は今でも幼馴染でいられるのだろう。
ギルとロロは知らない。
二人が恋人同士という学園中で確信されつつある噂が横行していることを。
「まぁあたいには関係ないけどね」
ティアマトとしてはこの二人がくっつこうがくっつくまいが、自身にはまだ何の関係もない話である。
クラスメイトとしては興味半分なのだが、そんな半端な事で人の恋愛事に首を突っ込む気はない。
むしろ気になるのは───
「スオウさんですか。よろしくお願いします」
「ところで日程だけど、スオウさん良いかな?」
この二人だ。
ファルとジーナ、今もこの二人の関係をティアマトはまったく把握していない。
断言するがこの二人に甘い空気が流れたことは一度もない。
しかし雰囲気はまるで運命共同体と言わんばかりに長年連れ添ったような二人。
むしろ戦友、といったほうが正しいがそれでも何か違和感が残る。
「むー」
「ティアマトはん、どないしたん?」
「うるさい黙れ」
「心配しただけなのに何で罵られるんワイは!?」
一年生達が待ちに待った実習の日、校舎は異様に静まり返っていた。
冒険者になる為の大きな一歩目であるこの日は王立学園の生徒にとって人生の中でも重要なイベントであるのは間違いない。
ギルでさえもファルが起こしに行く前から起きていて、中庭で素振りをしていた。
ジーナが窓から中庭で普段やらない自主鍛錬をしている多数の生徒に呆れていたが、
むしろファルとジーナが冷めすぎているだけである。
その証拠にE組の面々は彼らを除きトナ校長が来るのを静かに待っていた。
「・・・・・・・・・」
そういえば、とジーナはある事を思い出してファルを見つめた。
付き合いが長くなければまったく分からないが、心ここにあらずといった様子でファルは本を読んでいた。
・・・・・・・・・・いや、読んでいるように見えて先程からずっとページが捲られていない。
やはりナノちゃんおかえりパーティという名の宴会で振り回されて疲れたのだろうか。
今思ってもあのパーティは恐ろしかった。
聞いた話だがあのトナ校長ですら翌日は二日酔い寝込んでいたらしい。
あのパーティ自体は店を貸切にして行われたが人数は10人かその程度。
にも関わらず翌朝になると裸で地面に倒れている男女が半分──うち3割が白目をむいて痙攣していた──もいた上、
所々に嘔吐物が残留して店内の臭いは最悪。
そのうえいったい何のノリで作ったのかドブのようで何か泡立っている謎の飲み物がテーブルに置かれていた。
早々に隅のほうに避難していたジーナは早くに目覚め、店内の状態に顔を顰めつつ厨房に行くとそこには
先程の謎の飲み物で『ようじょ』とタイルの床に書いたペン太先生が気絶していた。
今思えばガルマー先生を始めとする教師陣が参加を拒否したことがよく分かる。
よく思いだしてみるとパーティ中に厨房のほうから鳴き声が聞こえてきたような・・・・・・・・・。
そして今疲れているファルだが・・・・・・・・・現状を把握した瞬間三角座りで落ち込んでいた。
いったい何をしたのか聞いてみたが、嫌がられたので結局は聞いていない。
「ほけー」
魂が抜けた状態のようなファルであるが、幼馴染を起こしたり朝飯を作るといった日課はこなしていたし大丈夫だろう。
・・・・・・・・・本を読むのはひょっとして日課なのだろうか。
「やっほう皆なの!ぐっどいぶにんぐなの!」
「先生。それは夕方です」
「もうジーナちゃん細かいの。今日は筋肉馬鹿達が待ちに待った実習日なの!
ゴブリンの討伐に行くけど、準備は大丈夫なの?」
「おう、武器はちゃんと持ってきてるぜ」
「ええ、ちゃんと篭手を持ってきたわ」
「ワイはまぁ自前の持ち歩いてるし」
3人が元気に武器を持っていることを主張するが、それを聞いたティアマトとジーナが小さく首をかしげた。
「えっと・・・・・・・・・武器だけ、ってことわないよな?あたいは他にもちゃんと色々持ってきてるけど」
「私もちゃんと腕輪に入れてきましたが・・・・・・・・・まさか武器以外何も持ってないなんてありませんよね?」
何の話か分からない3人はお互い顔を見合わせ、ギルが代表して聞いてみた。
「なぁ、武器以外って何か必要なのか?」
「なの?討伐場所は歩いて半日かかるから一泊泊まりなの。確かに言ったの」
「確かテスト終わった後にちょちょいと言っただけだからギルっちとか聞いてないかもねぇ・・・・・・・・・」
寝てたし。
そうティアマトが付け加えると、ロロは無言で立ち上がり教室から走り去っていった。
おそらくすぐに準備をして戻ってくることだろう。
「ギルっちとアレスっちは行かなくていいのかい?」
「うん?まぁ消耗品はファルに借りればいいし、
冒険者なんだから毎日着替えなきゃいけないってわけでもねぇしな」
「そやな」
冒険者というのは実際過酷な職業である。
狩場で呑気に着替えなんてしていて殺されたなんて事例もたまにあり、
さらに風呂なんてものは拠点から離れると当然なく、濡れたタオルで身体を拭く程度だ。
その場合も当たり前だが身の安全は確保しなくてはならず、そんな場所を作ることは難しい現状だ。
冒険者になって最初の嫌な出来事はが血まみれになっても安全を確保できるまで着替えられないことだろう。
「どうせこの剣士の服だろうしなずっと。替えも何着か腕輪に入ってるし」
「ワイはこのだっさいダボダボの商人服やで・・・・・・・・・ごっつ暑いんやけど、色々仕込んでるしなぁ」
二人の言うことは一般市民からすればあれだが、冒険者からすれば当たり前の感覚だった。
「寝袋はどうするのよ?」
「ファルに借りるけど」
「ファルはんに借りるわ」
「いえ、さすがにファルさんも寝袋をいくつも持ってるとは思えないんですが」
「夜番の時に借りれたらそれでいいし、借りれなかったら地面で寝るからどうでもいいぜ」
「そろそろロロちゃんも帰ってくるだろうから、皆準備するの!」」
墓碑の前で話し合うのも何なので、ということで喫茶店に場所を移したギル達。
その間ジーナとナノの女性陣からギルに向かって冷たい視線が向けられていた。
奇行を行った自覚のあるギルとしては目を逸らしつつ露店を見渡すフリをするしかない。
今回ナノはフードコートで顔を隠していなく、周囲から視線を集めていた。
当の本人はそんなことに慣れているのか気付かないフリで・・・・・・・・・いや、案外本当に気付いていないのかもしれない。
さらに当然といえば当然なのだが、現役アイドルと一緒に行動している男二人は何なのかという視線も集めている。
「・・・・・・・・・胃が痛ぇ」
「幼馴染の気持ちには気付かないくせにこういう視線には敏感なんですね」
「あん?何かいった?」
「なんでもありませんよ」
いや、ならその蔑む視線なんだよ。
そう言いたい衝動を抑える。
ヘラヘラと笑うクロウに若干苛立つがこんな所で喧嘩をすればさらに注目を集めることは間違いないだろう。
「というかよ、お兄様ってなんだよ?兄弟なのか?」
ジーナがクロウに向かって言ったお兄様という言葉。
そういえば今までジーナから家族の事を聞いたことがなかったな、と思いなおす。
「そうですよ?無能ですが」
「・・・・・・・・・ひどいね」
「事実でしょう。彼に比べるとあなたは数段劣りますし」
「彼と比べられると全ての人類が劣っていることになると思うんだけど」
ここでもジーナは毒舌少女としての本領を発揮していた。
実の兄に向かっても容赦なしである。
妹に暴言を吐かれたクロウはのらりくらりと反論しつつも表情は落ち込んでいた。
「というかファルはどうしたんだよ?」
ギルがアレスから聞いた話によるとこの二人は会う人物が・・・・・・・・・って同一人物とは限らないのか。
「ファルかい?彼なら昼過ぎに別れたけど」
「ジーナは?」
「私とファルさんがセットみたいに思ってるみたいですが、私達だって別行動くらいしますよ」
それもそうだ、と思いギルは次に一人ボーっとしている少女へ視線を向ける。
異常なほど長い髪をしたナノである。
「で、ジーナとクロウはナノちゃんとどういう関係なんだ?」
実際ギルが一番気になっていたのはこのことである。
もちろん野次馬根性的なものもあるのだが、何よりもギルはNINO&NANOのファンでもある。
「ナノとは幼い頃からの知り合いなんだ。
最近こっちに越してきたみたいだからお祝いをかねて誘ったんだけどね」
「・・・・・・・・・。お、おお。そうか」
クロウの呼び捨てに一瞬だけ殺気が湧き出たがすぐにそれを収める。
自分がファルやロロと幼馴染のようにジーナとクロウはナノと幼馴染なのだろう。
「ということはニノちゃんとも?」
「そうですよ?もっとも、彼女は昔からプロンテラに住んでいますが。
今回も誘ったんですが最近面白い玩具を見つけたらしく、街では全然見かけませんが。なんでも大人の玩具だって言ってましたが」
「大人の玩具?・・・・・・・・・ゴクリ」
「変態ですね」
すっごい蔑んだ目で見られた。
「ところでナノちゃんあんまり喋らないけど、どうかしたのか?」
するとこの会話を聞いていなかったのか「何?」と言いたげに首を傾げるナノ。
「元々ナノはあんまり喋るのが得意じゃないからね。ナノが自分から嬉々として喋るのなんて・・・・・・・・・・」
「お兄様?」
何言い出してんだワレ、背後にそんな文字を幻視したクロウとギルは唾を飲み込み、平静を装う。
「・・・・・・・・・まぁとにかくある人以外と楽しく話す場面なんて私は知らないね」
「まさか・・・・・・・・・恋人?」
「・・・・・・・・・ちがう」
ナノが一言否定し、また暇そうにし始める。
「今日はナノの為にパーティを開くんだ。だから料理が出来るまでフラフラしてるんだけどね」
「そろそろ戻ったほうがいいでしょう」
「え?・・・・・・・・・ってまだプレゼント買ってないじゃないか!?」
「自業自得です。だいたい気を惹きたいからって宝石店を巡るほうが間違ってると思うんですが」
「むぅ・・・・・・・・・やはり花束だろうか?」
ひょっとしてクロウはナノに好意を抱いているのだろうか。
そしてこの会話を聴いているのか聴いていないのか反応のないナノ。
「お兄様?ナノに手を出したら殺しますよ?」
「早いもの勝ちだろう?」
「ナノと付き合おうなんて、無駄なことですよ」
「分からないじゃないか。1%でも可能性があるなら私はそれにかけるさ」
何なんだろうかこの会話。
ひょっとしてナノはそこまで難攻不落なのか。
それとも一度ふられている?
つい気になってそれを聞くと
「ああ、うんそうだね。今朝の63回目の告白もふられたさ」
「63・・・・・・・・・凄いっすね・・・・・・・・・」
ギルの呟きに答えたクロウはそういえば、と思い出しながら聞いて見る。
「まぁね。ところで知ってるかい?渡り神がこの世界に来ているという話を」
「クロウ」
「おや?これは言ってはダメかい?」
「・・・・・・・・・だめ」
渡り神?
聞き覚えのない単語に疑問を覚えるがそれを遮るようにナノはクロウを睨みつける。
といってもナノが睨みつけても周囲には可愛いくらいにしか思われないが。
「ふむ。忘れてくれたまえ」
「いや、忘れろって・・・・・・・・・」
んな強引な。
・・・・・・・・・何にせよ、こんな会話をしているからそろそろ周囲の視線が痛くなってきた。
それに気付いたのか気付いていないのか思い出したようにクロウは言った。
「さて、そろそろ戻る時間かな?またいつか会おう」
「ですね。ギルさん、また休み明けにでも」
「・・・・・・・・・・ばいばい」
それぞれの言葉を口にして3人は去っていった。
いつか書くARのステータス表の予行演習にかきました。
ARのを今書くと激しくネタバレになるんだ・・・・・・。
なので続きを書く予定のないこっちのステータスを書くことに。
ちなみにこのステータス表は某バトルロワイヤルのステータスを参考にかきました。
花乃音
属性:地
破壊力 F(B)
スピード F(B)
射程距離 E
持続力 F
精密動作性 F
魔力総量 S
成長性 D
( )内は身体強化使用時
姉のかわりに召喚された世界を救いし勇者(代理)。
もちろん代理召喚なので一般人。
もちろん代理召喚なので主人公補正は低い。
もちろん代理召喚なので戦闘技能、および経験はゼロ。
大事なので3回も同じような文が続いてしまうほど、一般人。
だって、女の子なんだもん。
『不敗の聖女』 E
勇者として召喚された女性が身につけるステータス補正。
が、花乃音は代理というか姉に騙されて召喚されたので補正は皆無。
唯一補正されたのが魔力のみという悲しい結果である。
『身体強化』 S
破壊力とスピードのランクを上げるスキル。
これだけは才能があるのか、何と4ランクも上げる。
が、元々の性能がへっぽこなので強化し終えた後は酷い筋肉痛に襲われ、丸一日動けないこと必須である。
『望血せし必勝の聖剣』 S
二人の小人によって作られた持ち主を問わず勝利をもたらす聖剣。
本来の勇者ではない花乃音はこの聖剣を抜けず、鞘のまま殴り倒している。
実は花乃音はこの剣を誤解しており、姉もこの剣を一度しか抜いていない。
それはティルフィングが2度まで持ち主に勝利をもたらすが、3度目にこの聖剣で戦えば、持ち主は自らの聖剣によって滅びることとなる。
かつてこの剣を使った勇者の大半の死亡理由が、3度鞘を抜いての聖剣使用である。
ちなみにこの聖剣の特殊能力として切り付けた相手の傷を癒せなくするという呪いを有している。
これらのことから一部では魔剣と呼ばれることも多い。
S:桁外れ
A:超スゴイ
B:スゴイ
C:一般兵器並
D:苦手
E:超苦手
F:人間以下
最近ハンターを作って転生させるがために必死狩りしてるバルセンです。
久々の主従クライマックス1話とAR5話ぶん、更新しました。
主従クライマックスのほうはストックはあるけど書いてないんだよね最近。
だってなんとなしに主従クライマックスのこと考えてなんとなしに展開思いつかないかぎり、自発的に書こうとは思わないんだもん・・・・・・。
え?RO話はどうしたって?
だからハンターを・・・・・・・・・ネタ?
ないよそんなの。
ならば仕方ない!
今日講義中に何故か思い出したしょっぱい会話を・・・・・やっぱやめとこう。
虚しくなる。
次の更新は金曜日の九時で~。
余裕があるときは時間の更新日を告知しておいてやろう!バルス!
「ふふふ・・・・・・・・・真ちゃん。大丈夫だよ。ちゃんと私の力を示してみせるから・・・・・・・・・ふふふふふふふふ」
ひぃ。
そんな短い悲鳴を気合で押さえ込み、完全に気配を断って去っていく足音を聞く。
真の脳裏に浮かぶ一言、どうしてこうなった。
いやたぶんゲームのことを考えすぎて東雲家の当主としての実力を見せ付けることを思いついただけだろう。
よく考えればこういう展開になるのは自明の理で、なんで想定しなかったんだ俺の馬鹿、と真は頭を抱えた。
「・・・・・・・・・にゃ?・・・・・・・・・・・・見つけた♪」
ぞくりと背筋が凍りつき、本能の感じるがままに逃走。
敵に背中を見せて、これでもかというくらいの逃走。
いや、だって夕菜に勝てるわけないし。
「真ちゃん待って!私の実力~」
「違うわっ!不正解だ!」
「きっと正解だよー」
「だから違うというておろうに!」
このお嬢さん、どうしても俺を殴らないと気がすまないのだろうか。
力を誇示する為か、暗器が飛んでこないのは不幸中の幸いだろう。
『ゲシュタルト崩壊!ゲシュタルト崩壊!』
ポケットに入っていた携帯電話が鳴り響き、後ろを気にしつつ耳にあてる。
ちなみにこの着歌は国に裏切られゾンビ化した少女がハンドガンを両手に国家に復讐する深夜アニメのオープニングである。
「なんだよ!?」
『いや、なんだよって言いたいのこっちなんだけど』
明だった。
「うっさい死ね!死にそうなのに電話なんてかけてくんな!」
『は?死ぬって・・・・・・・・・おおげさだろ』
しぃっと!
もういいからお前黙れ!
「教室で何か壊れてるだろ!?夕菜がさっき蹴り飛ばしたあれ!」
『ロッカーがひしゃげてるけど、別にそんなに気にするようなことじゃねぇだろ?
確かに女性にしては力が強い気がするけど』
「・・・・・・・・・」
一応、手加減はしてくれていたらしい。
なら立ち止まって話せば分かってくれるか?
そう期待を込めて首だけ振り向いてみると
「ふふふふふふ」
「・・・・・・・・・」
うん、無理。
あたし、鷹取梓はキョロキョロと教室を見渡した。
さっきまで夕菜ちゃん、席に座ってたはずなんだけど・・・・・・・・・どこ行ったんでしょう?
「あれー?」
昼休み前の4時限目に登校してきてしかも授業中ブツブツ何かを呟いていたので心配だったのだが。
そういえば数学の授業だったんだけど、先生怯えてましたね・・・・・・・・・。
とにかく礼をして頭を上げたその時には既に夕菜ちゃんはこの教室から消えていた。
真さん絡みでしょうか?
夕菜ちゃんたまにそのことで暴走しますから、本当に心配なんですが・・・・・・・・・。
とにかく夕菜ちゃんが暴走してるなら親友のあたしがちゃんと止めてあげないと!
だよね!と自分を励ますように手をぎゅっと握り締め、真さんの教室へと向か・・・・・・・・・・
「ふふふふふふふ」
「落ち着け夕菜!だから不正解なんだって!」
「大丈夫大丈夫。私にお任せだよ!」
「任せられるか!絶対殴り飛ばす気だろお前!」
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
「いただきますです」
数秒後、そこには弁当箱を広げて一人食べているあたしがいた。
撒いた・・・・・・・・・だろうか。
とりあえず近くに気配はないが、相手はあの夕菜だ。
安心何かできるはずがない。
とある空き教室の壁に張り付きながら溜息を吐いた。
「・・・・・・・・・どうしよう」
素直に逃げるのも一つの手だが、その場合午後の授業を全てさぼることになる。
そして何より明日も追いかけられる可能性が高い。
となれば何とかして夕菜を倒・・・・・・・・・したらまた明日も狙われるな。
つまり何とか夕菜を正気に戻してお話をする必要があるのだが、どうすればいいだろう。
「かーごーめー、かーごーめー。籠の中の鳥はいついつでやーるー」
・・・・・・・・・あの、夕菜さん?
何でそんなホラーばりの歌を歌いながら私めのことをお探しになっちゃってらっしゃるのでしょうか。
こっそりとドアから顔を出して様子を見てみたいが、そんなことをすれば確実に見付かる。
実際先程からこの辺をウロウロしているのだ。
たぶん勘だろうが、それこそが夕菜の、東雲家の最大の武器。
トン、トン、トトンと不思議なステップを奏でていた足音が去っていく。
真はすぐにドアを開け、忍び足で周囲を伺いながら移動する。
同じ所にい続ければ見付かるのは間違いないわけで・・・・・・・・・
「真ちゃん♪」
「・・・・・・・・・でたぁ!?」
背後から聞こえた声に振り向かず、全力で走る。
すぐに追いかける足音、しかも今度は少しずつ追いついてきている。
・・・・・・・・・あれ、そういえばこの道って
「行き止まり!?」
ブレーキ音を鳴らしつつ振り返ると、そこには不敵な笑みを浮かべる夕菜の姿。
「夕菜落ち着け。お前は勘違いしている」
「大丈夫大丈夫。真ちゃんはちゃんと私の力を実感してね?」
「大丈夫じゃないだろ絶対!?というか話を聞けっ!」
これは不味い。
死ぬか生きるか。
デッドオアアライブ。
「真ちゃん構えて」
あなた、構えたら間違いなく襲い掛かってくるでしょ。
と考えるも構えなくても間違いなく襲われるので、仕方なしに覚悟を決める。
拳は緩めに握り、袖の中から警棒を取り出し伸ばす。
女の子相手になんて酷い、と言われても仕方ないが正直これでも勝率は1%いくかいかないかくらいだろう。
・・・・・・・・・よし!
「さあ来い夕菜ああああ!俺は実は一回殴られただけで死ぬぞおおおお!」
その後、夕方過ぎに真は保健室で目覚めて何事もなく帰っていった。
「あっはっはっはっはっはっ!し、真君!君は僕を殺す気かい!?」
「・・・・・・・・・だから言いたくなかったんだよ」
帰りが遅くなったのでも里枝さんに事情を聞かれ、それを大地が聞いて今に至る。
もちろん里枝さんに話すのは渋ったのだが片手に包丁を持ちながら笑って聞かれると言わざるを得ない。
料理中だったみたいだけど・・・・・・・・・美人がやると凄く怖いです。
「お兄ちゃん大丈夫?」
「夕菜も手加減してたみたいだからね。鈍痛はするけど平気かな」
「どんつう?」
「えっと、鈍痛って言うのは・・・・・・・・・」
疲れていた真は夕食を食べてすぐに横になろうと思ったのだが、凛に話をせがまれていた。
というか大地、二日連続でこんなに早く帰ってきて平気なのか。
仮にもエリートじゃないのか。
「そうそう。父さん3月に纏まった休暇とれそうなんだけど、どこかいくかい?真君も一緒に」
「いくー!」
凛が元気に手をあげ、それを見て真は癒されていた。
今日はどこか殺伐とした一日だったなぁ、と振り返ると殺伐というより恐怖にまみれていた一日だったことに気付く。
「真君は予定大丈夫なの?大地さん、真君の予定も考えてあげないと」
「あ、いえ大丈夫です。大地、何日くらいとれそう?」
「一週間だよ」
・・・・・・・・・偉い人がそんなに休みとっても平気なのか?
いやこれでも大地はなかなか腹黒いところがあるし、きっと大丈夫なのだろう。
「俺が旅行先決めようか?コネあるから」
「うん、それじゃあ真君に任せようかな?ただあんまり高いところはやめてね」
「平気だよ。候補に考えているところは貸しがあるし、タダで泊まらしてもらえると思う」
「ほんとかい?それは嬉しいね」
朝霧家の仕事で色々な場所を巡っていたので、顔はやたら広いのだ。
それより今気になることは夕菜が明日、どういう反応をするかだ。
・・・・・・・・・また出会い頭に襲われなければいいのだが。
その晩、朝霧家の正門を自前の鍵で入る者が二名。
一人は死んだ魚のような目で面倒そうに歩いている黒髪ショートの少女。
もう一人のアホ毛つきの黒髪ポニテ少女は超元気いっぱいにスキップして歌いながらくるくる回っている。
「ただいまかえりましたであります師匠!!」
「………ただいま」
「愛様もっと元気よく!ただいまぁ!で、あります!」
「………ただいまぁ」
「語調ちょっと変えただけじゃないですか!?」
ポニテの少女はわーわーぎゃーぎゃー玄関で騒ぎながら何かうずうずしている。
そして奥から足音が聞こえるとアホ毛をくるくる回してテンションをあげていく。
逆にショートの少女、愛はため息を吐いてその人物を待った………が
「おかえりなさい二人とも」
「はれ?奥様?………はっ!?カーラ・マクシリア、ただいま帰還しました!」
「………ただいま」
「愛様さっきからその言葉しか言ってませんよね!?」
カーラにつっこみに愛は面倒そうな顔をする。
彼女は極度のめんどくさがりなのだ。
「………兄さんは?」
「そ、そうです。師匠はいったいどこへ!?ハグは!?再開のハグはお預けでありますか!?」
落ち着けと愛が背中をさするがカーラは目にみえて落ち込んでいく。
「えっと………あのね、二人とも。落ち着いて聞いてほしいんだけど」
「兄さんが勘当されて」
「そのまま親方様が奉納の舞を変わりにして」
「父さんが風邪で寝込んだ?………というより兄さんが………」
驚きに身体を震わせる愛の肩に手をおき、優しく声をかけようとする。
「あ、愛様………」
「………兄さんが、妹離れするなんて」
「そっちでありますか!?」
確かに真のシスコンっぷりは有名な話だが、妹としてまずそこに目をつけるのはどうなんだろう。
「あれ?ところでク・リトルリトルのメンバーはどうしたのですか?先ほどから気配すらしないのですが」
キョロキョロと辺りを見回し、いつもならどこかに潜んでいるク・リトルリトルのメンバーがいないことに気付くカーラ。
それを聞いた愛の顔に多少の驚きが現れ、母に視線で問いかけると気まずそうに言われた。
「………真様じゃないならやめるって言って、出て行ったわ」
「………」
子供かよ、そう言いたげな親子であるが言ってもどうにかなる連中ではない。
そもそも、だ
「ですよねぇ」
カーラもそれに頷いているのだ。
その反応を予想していた愛だが、それでも現在の朝霧家の現状を考えると頭が痛くなる。
「………ようは、あの女がゲームに勝てば兄さんは帰ってくる」
「まぁカーラはどっちでも構いませぬが。師匠以外に付く気はありませぬー」
日課の訓練を終えるとギルはシャワーを浴び、室内でゴロゴロしていた。
父親の言に従うならばこういう時こそ自主訓練をするべきなのだろうが人間とはこんなものである。
であるからして自らをより高みへと導くのは難しいことなのだが。
そして悪いことにギルはそれを自覚しながらさぼっている、いわゆる駄目人間の部類だった。
せっかく補修を免れたというのに、補修をしていたほうが明らかマシだ。
「暇だー」
なら訓練しろよ。
そんなツッコミを天国にいるであろう父が入れているのを幻視しつつ本棚の漫画のタイトルに目を通す。
…………読む気起こらないな。
「アレスでも呼んで覗き………ってアレスはティアマトとデートだっけ」
実際はだいぶ違うのだが、説明を面倒がったファルが簡潔の述べた説明が今のギルの認識のそれだった。
へー、あの二人がなぁ、となんとなしに二人がいちゃついている場面を想像してみる。
『おはようハニー!いい朝だね!』
『そうねマイケル。とってもいい朝だわ』
『おー。君の瞳はふつくしい………』
「無理だな」
彼女を作ったことがないギルの想像力ではこれが限界だった。
というか誰だこれ。
「ファルでも呼んで日課のナンパ………って誰もツッコんでくれないな」
いつもなら『ギル、馬鹿?そんな脳みそだから普段僕とナンパしているなんて夢を見るんだよ』と、
心を多少抉るツッコミとともに呆れた表情をするファルがセットなのだが。
確かファルは誰か人と会う約束をしているだとかで今朝早々に出て行った。
ジーナも同じ用事で出て行ったのだが二人で出て行かなかったのは何なんだろう。
ひょっとして一緒じゃないのだろうか。
・・・・・・・・・デートの待ち合わせ?
「ロロは………大聖堂の礼拝と掃除にいったんだっけ」
何でも最近魔法少女と名乗る人物が大聖堂で暴れまわったらしく、大聖堂が散らかっていたらしい。
あまりの瓦礫の多さに日分けして片付けていたのだが今日はその片付けの最終日で、
それにロロは礼拝ついでに手伝っているらしい。
ミッドガルドではオーディン信仰が主流だがギルとしてはぶっちゃけどうでもいい。
やる事がないなぁ、と数分呆ける。
「………。………。………あ」
そこでようやく思い出した。
飛行船でイズルートについてから行くと決めていた父のお墓参りを忘れていたのだ。
どうせ暇なんだから行くか。
運がよければロロを除くイズルートに言っている4人に会えるだろう。
そう思い、ギルは立ち上がった。
王立学園がテスト休みで休日といっても世間では普通の平日である。
イズルートの中央にある謎のモニュメントの周囲を囲うようにして商品を広げている商人達は多いが、
休日ほどの賑わいは見せていなく、昼頃ということもあってさらに人通りも少ないような気がした。
冒険者の腕輪をつけているギルは様々な商人に呼び寄せられながらも目的の場所まで歩いた。
商人達にとっても冒険者というのは主な取引相手だ。
だからこそ彼らは客寄せをする時、まず相手の腕を見る。
冒険者には魔法機械や発掘品、魔法薬等の冒険に使う類のものを勧めるのだ。
といっても駆け出しの、しかも学園生のギルに収入の良い冒険者が常用するようなものを買えるはずがないが。
ふと中央広場を見回すギルだが、イズルートにいるらしいファル達の姿は見当たらない。
イズルートにある三つの武器屋を巡るとアレスとティアマトに会うだろうが、別に探すまでもなかった。
「実習が始まれば嫌というほど顔を合わせるだろうしな」
ファルから教わった話だが、王立学園の実習は基本的に8人パーティを組んで行うらしい。
といっても6人しかいないE組だと確実に今いるメンバーでパーティを組むことになるだろうとは彼の弁だ。
実習に関してを思い出しつつ表通りをしばらく歩くと少しだけ開いた公園のような場所へと出る。
遊具や砂場といったものはまったくなく、代わりに奥にはポツンと寂しげに石碑がたっている。
その下には数々の花がおかれている。
バフォメット襲撃事件、それの被害者達の墓碑だった。
本当はただの名前を彫っただけの墓碑だ。
そして無数に刻まれた名前、その中の一つだけにギルは視線を向ける。
セタ=ノクトン・・・・・・・・・彼、ギル=ノクトンの父親だ。
「・・・・・・・・・」
別に言葉を向けに来たわけじゃない。
花を供えに来たわけでもない。
ただ、来ただけだ。
本当に死んでいるかも分からない為に墓碑なんかへ、本気で黙祷をするわけでもない。
この墓碑は確かにイズルート半壊時の犠牲者を書き綴ったものであるがそれが本当に死んでいるかというのは別問題である。
無数に書かれたその名前にサッ視線を走らせる。
新たに削られ、消された名前がいくつかあった。
そこに書かれていた名前は死んだと思われていた人たちであった。
バフォメットが放った魔法は一瞬で建物を破壊し、人は蒸発した。
ならば行方不明者がそれによって死んだと思われるのは当然ことなのかもしれない。
だからこそ────だからこそギルは今も父の死を疑っていた。
あの父が死ぬわけがない・・・・・・・・・それは幼い頃から見てきた父の姿から想像できないからだった。
確かにどんな冒険者だって魔法をまともに受ければ死ぬ。
例えモンスターが作ったお粗末な武器であってもまともに殴られれば死ぬ。
だがしかしギルの父はそんなレベルをはるかに超越していた。
かつてゲフェンの地下を制圧した───ドッペルゲンガーとヴァンパイアを打ち倒した父が死ぬわけがない。
もちろんそれだけならただの妄信だろう。
だけど確かに父は───
「ぐっ!?」
途端、バフォメットの前に立つ二人の姿がフラッシュバックとして現れる。
「またか・・・・・・・・・・!」
これこそが───この光景こそが彼が父の死に疑問を感じている正体だった。
その二人、父の背中と黒いポニテの女性の後姿は既に事切れたバフォメットの前で不敵に笑っていた。
突如思い出したこの映像が本物ならば、バフォメットに父が殺されているはずもなかった。
そして父の死体が見付かったわけでもなく行方不明、それ故に墓碑に刻まれた父の名。
ファルにその事を話したことはあるが───彼はただ知らないと言わんばかりの態度だった。
彼のその考える能力を当てにしてしつこく聞いてみた所、推測でよければと言ってくれたのがこれだった。
『もし君の父親が生きているとしたら、なんで行方不明になっているの?
ここからは生きていることが前提で話すけど───』
もし生きているならば父はこちらに戻れない状況にあるということだ。
例えば、とファルはいくつもの例をあげて戻れないに値する納得のものをあげ、最後に言った。
『君のその記憶だけでは何も分からない。ただの推測だってことは忘れないでね?』
もちろんそんなことは分かっていた。
冒険者の中でセト=ノクトンを知らない人間はいない程の有名人が少なくとも王国にいる可能性はだいぶ低いらしい。
ならばいる場所は王国の暗部、例えばエリアEのどこか。
もしくはもう閉じてしまってはいるがかつて魔王モロクがその道を作ったとされる異世界。
知っている遠い街や、まだ見ぬ新しい国や街。
状況は分からないがいる場所はそのいずれかしかない、とファルは結論を出した。
ならばと冒険者になり、世界を歩きわたる。
冒険者になるという決意はさらに固くなり、今に至った。
そこでふと思う。
「あとどれくらい待てばいいんだ?」
その決意は一年前の話。
そして冒険者としてちゃんと活動できる時期は最低でも王立学園を卒業する1年と10ヵ月後。
・・・・・・・・・あれ?
そういえば王立学園って二年生だよな。
そのわりには学園で先輩らしい姿とか見ないのだが・・・・・・・・・いったいどういうことだろうか。
たぶんこれをファルに聞くと「まだ気付いてなかったの?」と蔑んだ目で見られるに違いない。
「じーざす!」
「どうしたんだいギル君?いきなり叫んで」
「馬鹿なんですよ兄さま」
「・・・・・・・・・」
二つの声に振り向くとそこには3人・・・・・・・・・見目麗しい女性二人を侍らせているイケメンやろうが一人。
「えっとクロウだっけ?それにジーナと・・・・・・・・・ナノちゃん!?っていうか兄さまって何だよ!?
それとナノちゃんつれて歩いてるからっていい気になってんじゃないぞごるぁ!」
「彼、情緒不安定なのかい?」
「ええ。残念ながら」
「ちょっとジーナさん何を仰いますか!?」
クロウの問いかけに本当に残念そうに呟いた一言に全力でつっこむがクロウの自分を見る目は可哀相な人を見るそれだ。
長い黒髪を持つ今日は素顔を晒したナノも若干冷たい目で見ていたのは、見なかったことにする。
・・・・・・・・・・悲しくなんかないやい。
カチ………カチ………カチ………
時計の針が時を刻むと同時に教室へこれ以上ない重圧をかける。
授業中は気にならないその音に今、彼らは神経質になっているかのように何度も時計を見つめてしまう。
「あと5分なのー」
テスト、最後の科目、魔法基礎理論。
教室の場は既に二つのグループに分かれていた。
もう終わってますよと言わんばかりに寝たり見直しをしたりしている勉強出来るグループ。
一方色んな意味で終わってますよと言わんばかりに絶望的な表情をしつつ必死に手元の用紙を見るグループ。
ちなみに意外にもアレスは前者に入っていた。
ファル曰くアレスは理解力はいいのだが記憶力に問題があるらしい。
なのでテスト前まで徹夜で猛勉強していたアレスは力尽きたのか机で爆睡していた。
「そこまでなの!」
ぺしぺしと机を叩く音が鳴り、ひとりでに答案用紙が浮かんでトナ校長の下へと飛んでいく。
ギルとロロは未練がましく飛んでいく答案用紙を見送り、他の面々はやっと終わったと疲れた表情で立ち上がった。
「終わった………」
「ええ………終わったわね」
どこか煤けた様子の二人を放置してティアマトとジーナがファルの席へと向かった。
何かをファルに言おうとしたジーナだが、ティアマトがいることにすぐに気付いた。
「ティアさん、ファルさんに何か用事があるんですか?」
「だね。本当ならギルっちかロロっちにでも話そうと思ったんだけど、あの様子だからファルファルに話そうと思ってね」
「僕に?」
いったい何なのか、そう考えるが特に心当たりはなかった。
「いやさ、テスト休みが終わると実習入るでしょ?だから良い武器屋がないか聞きたかったんだけど」
「なんで僕に?」
「ギルっちとロロっち、この前学園出てたみたいだからさ。
仮にも冒険者なら武器屋くらい覗いてるかなと思ったんだけど」
なるほど、筋は通っているがあの二人がそんな計画的に動けるわけがないとファルは思った。
ジーナも同感らしく苦笑いをしている。
「ティアさんはどこのギルドに入るつもりですか?」
「んー………アコライト、聖堂にでも入ろうと思ってたんだけどちょっと厄介になったのよ」
「厄介?大司教に暴力でも働いたの?」
「あたいもさすがにそんなことはしないわよ」
笑って首を振るが、理由を話さない辺り本当に厄介になったらしい。
「扱いたい武器はもう決まってます?」
「んー、ここは正道らしくサーベルみたいなものがいいかな」
「となればイズルートのほうが品揃えがいいですね」
ジーナは数多くある武器屋を頭に思い浮かべながら話すと、ティアマトは嬉しそうに笑った。
何でも道は把握したらしいが肝心の店は全然頭に入っていないらしい。
心当たりがあるなら連れて行ってほしいと頼み込むティアマトにジーナはファルに目配せした。
そしてファルが頷いたのを確認すると言った。
「テスト休みの二日目にファルさんと一緒でいいなら構いませんよ」
「………あれ?ひょっとしてデートだった?」
それは少し悪い気がすると付け加えるが、ファルは構わないといった。
「デートじゃないから大丈夫。ちょっと人と会う約束をしてるんだ。
だから昼前までしか案内できないけどいい?」
「十分十分。あたいのことは放っておいて、二人でいちゃいちゃしてなよ」
「だからデートじゃないんだけど」
「わかってるって」
絶対分かってない。
そのにやけ顔はなんだ。
小一時間問い詰めたいがどうせ無意味なので必要以上につっこまないことにする。
「しかし武器屋か………それならアレスも連れて行ったほうがいいんじゃないかな?
いや、むしろアレスに連れて行ってもらったほうがいいだろう」
「うん?なんで?」
アレスを推すファルに邪魔者扱いされているのかと思ったが、どうもそういうわけではないようだ。
ティアマトはジーナを見るが、むしろ納得といった表情をしている。
「アレス!ちょっときてくれないか?」
その呼び声にムクリと顔をあげてキョロキョロと辺りを見回すと、目があったファルの所へ来るアレス。
寝起きなのか多少目つきが悪く、欠伸もしている。
「なんや?」
「ティアマトが武器屋に行くらしい。案内をお願いできるかな?」
「はい?なんでワイに?」
心底わからないといった様子のアレスに溜息を吐いてからファルはいう。
「鍛冶師の子供なら剣の目利きくらい楽勝だろう?」
「へぇ。アレスっち、そうなのかい?」
「………いやちょっと待ちや」
待てと右手を一旦前に出してからいった。
「その情報どっから出たん?」
「単に親父さんとは知り合いだっただけだよ。たまに会ってたし、アレスともその時何度か会ってたんだけど?」
「え………ほんま?」
コクリと頷くファルに脳内から昔の記憶を発掘し始めるが、どうも記憶にない。
「んー………そういうことやったら」
「ほんと!?アレスっちありがとん!もうキスしちゃうわ!」
「ひぃっ!?やめい!それは罰ゲームや!」
「失礼しちゃうね。あたいのキスはいらないってか!?」
「当たり前やろ!」
堂々と言い返したアレスだが、ティアマトの反応がどうもおかしかった。
何か怖い物を見るかのような目でじょじょに後ろへと下がる。
「まさか………男色?」
「なんでや!?」
裏庭で砂まみれになった俺に、彼女は言った。
その言葉に俺は当たり前じゃないかと思ったが、それでも彼女の雰囲気にただ飲み込まれていた。
「約束、できるかな?」
「・・・・・・・・・うん」
手に持っている木刀を杖のようにして震える足のかわりに支える。
対する彼女は息切れすらせずに救急箱を取り出していた。
いつからだったろう。
俺の目標が父を超えて彼女になったのは。
まだ父の域にすら達していない自分が彼女と共に戦いたいと思うのは子供の幻想なのだろうか。
だがそれでも俺は一度見たあの強さを手に入れたくて、ただ彼女に頼み込んだ。
戦う術を教えて欲しい、と。
「帰ろうか、ギル」
「うん、姉さん」
「なっ!?」
布団を蹴飛ばして一気に上体を起こす。
何だ今の夢は。
こんなの知らない、知るわけがない。
そもそも姉などギル=ノクトンの世界には存在しなかった。
ならば自分が夢の中で姉と呼んだあれはいったい誰だ。
今はっきりと夢で見た内容なのに顔や声といったものがまったくといっていいほど思い出せなかった。
狐に化かされた気分であるが、すぐに頭を冷やす。
夢、しょせん夢だ。
「姉さんって・・・・・・・・・俺どんだけだよ」
隠された性癖というべきか。
まさか自分が姉属性を好むとは・・・・・・・・・。
「脳内姉って・・・・・・・・・」
ギルが口に出したその言葉がさらに自分を深く傷つけたのは言うまでもない。
また、封印が解けた。
ギルが忘れてなければならない過去。
それを封じる為、幾重にも張り巡らせた封印の一つがまた内側から砕け散る。
そのことを感じ取った者、ファルはゆっくりと目を開けた。
「はぁ・・・・・・・・・日に日に強くなるな」
溜息と共に愚痴を吐き、窓の外を見上げる。
今日は新月、モンスターの魔力が最も弱くなる日。
その日、ギルの力は最も強くなる。
ならばこそ封印がまた一つ解けるのも仕方のない話なのかもしれない。
「ん・・・・・・・・・」
「久々なのにな」
隣で寝ているジーナがさらに深く布団をかぶろうとそれを引っ張る。
今夜は特に仕事もなく平和な夜だった。
そうでなければ夜中まで勉強会なんてするわけがない。
新月の日は万が一に備えて待機しているのだが、やはりというか封印が解けれることが多かった。
「・・・・・・・・・まぁいいか」
このままだといつ全てを思い出すか、そう考えたら無意味なことに気付くとまた眼を閉じた。
未来はもう決まっているのだから。
「なのー」
「・・・・・・・・・」
「なのー」
「・・・・・・・・・」
「なのー」
「・・・・・・・・・」
カーン、カーン、カーンと定期的に音を響かせながらそれを作るトナ校長とエイボン。
神殺しのシステム、アル・アジフ。
エイボンはそれをアルと呼んでいるが、その一号は既に彼女に渡した。
その彼女は先日、無数の剣を操る少年と交戦したとかでこちらに感想を言いに来た。
エイボンいわく結論としては成功である。
しかしこれはトナ校長や彼女以外、絶対に耐えられるものではないと主張した。
とにかく一号を彼女に渡したのでトナ校長が使うもの、二号を作らなければならない。
エイボンとしては彼女の戦闘データを元に改良したいらしいがトナ校長はとにかく使いたいのだ。
ただの落ち着きのない子だが。
「何を設定しようかなー、なの。コード、アル・アジフなの!」
「そのまま」
「コード、コードなの!」
「・・・・・・・・・」
「何か反応してなの」
ぷう、と頬を膨らませながらも手元の作業を止めないトナ校長だが、エイボンはそれを無視。
その性格を知っているトナ校長は仕方なく作業に没頭した。
入学式から約1ヶ月、そろそろ暖かくなり始めた環境が眠気を誘う。
もちろんE組もその例外ではなく数人が夢の世界へと旅立っていた。
「このタイプのモンスターは大抵通る場所に目印をつけるから・・・・・・・・・」
「ふわぁ・・・・・・・・・」
堪え切れず出た欠伸を片手で隠しながらチラリとロロは横を見た。
そこには死屍累々と言うべきか、E組の面々がだらしなく机に突っ伏していた。
「ぐがー」
大きなイビキをかいてモンスターの図鑑を盾にしながら寝ているのはギル。
赤毛の髪がちらちらと図鑑の上で動いているが一目見て寝ているのが分かった。
そしてその後ろにいるのはアレスだ。
アレスはばれることを考えていないのか堂々と腕を枕に寝ていた。
よく見ると机に水溜りが・・・・・・・・・
「って汚いわね」
涎が水溜りを作っていた。
その水溜りに突っ伏しているアレスは授業が終わる頃にはくさくなっているだろう。
絶対に近づかないで置こうと心に誓いつつロロはそのまま真後ろの人物を見る。
ぼーっと窓を見ているジーナだが、完全に意識はなく、おそらく眠っていた。
目はあいたままなので本当に眠っているのかは分からないが。
そして一番前に座っているティアマトとファル。
後姿なので寝ているかどうかは判断し辛いのだがファルからは寝言が聞こえた。
「やめ・・・・・・・・・それは入らない・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
何の夢を見ているか問い詰めたいところだが今は授業中だ。
ティアマトは起きているらしく板書されたことをノートにきっちり纏めていた。
そしてそれぞれを観察していたロロだが真面目に授業を受けているかというとそれは間違いだ。
(意味分からないわね)
単に授業についていけていないだけだった。
そんなこんなで講師をしているタクは完全に現状に気付いているが特に何も言っていない。
そもそも冒険者というのは子供の遊びではなく、一から教えるような丁寧な授業は普通やらないのだ。
冒険者にとって情報とは命であり、特にモンスターの情報を多く知っているならば楽に討伐できるのは間違いない。
それでもこの授業を聞いていない者は授業内容を予め完璧に理解しているかまったく理解できていないかである。
ファルとジーナは見た目通り前者だろうがティアマト除く残りは完全に後者だろう。
「ん、今日の授業はここまで」
タクの一言に反応した面々が机から立ち上がり、腕輪に図鑑を押し込む。
「よく寝たぜ」
なんで授業終了の言葉にはすっと反応するんだろうな、と思うがもはや条件反射といっても過言ではない。
「ん、んー・・・・・・・・・今日は早く終わったんやな」
そういえば、とロロは懐から時計を取り出してみてみた。
確かにいつもより10分ほど早い。
「何言ってるの?当たり前じゃないか」
「は?ファル何か知ってるのか?」
「だってさ」
言葉を一旦区切って、ファルは言った。
「明日からテストだし」
「「「うそぉ!?」」」
「さらに言えばテストで赤点とると来週の連休が追試で潰されます」
三人の悲鳴が学園に響き渡った。
「というわけで第一回、勉強会を開始するわよ!!」
「ロロはん、どこ向いて喋ってるの?」
ファルの部屋でEクラスの面々は教科書を片手に集まっていた。
隅のほうでは「何で僕の部屋で・・・・・・・・・」としかめっ面で呟いている部屋主がいるが、スルーされていた。
「えっと、テスト範囲は下級モンスターの生態と冒険、それと魔法の基礎知識だな。
ファルとジーナとティアマトは何が得意なんだ?」
「僕達が教えることが前提で話が進んでるよね、その聞き方。
まぁいいけどさ・・・・・・・・・僕は出来れば魔法のほうは遠慮したいかな」
「それじゃあ私は魔法のほうを担当しますね。本当は魔法機械のほうが楽しいんですが・・・・・・・・・はぁ」
「あたいは一応全部いけるけど、ファルファルが生態で、あたいが冒険を担当すれば効率良いっぽね」
なるほど、とさりげなく自分の教科書を一通り見て分からないところを確認しだす三人。
当然ギルも机の下でさりげなく教科書を確認するが・・・・・・・・・正確なテスト範囲が分からなかった。
ロロとアレスもテスト範囲を知らなかった仲間なので同じように冷や汗をかいている。
ファルとジーナとティアマトは同時に溜息を吐いた。
「だからね、魔力を含んだゼロピーは・・・・・・・・・」
モンスターの体内の不純物の塊であるゼロピーだが、それ自体に魔力が含まれることは稀だ。
というのも魔力が不純物として認識されなければゼロピーに混入されないからだ。
確かに稀ではあるのだが含まれている魔力は微量な上に珍しい質なわけでもない。
それこそ魔法の媒体としては魔法の触媒によく使われる青い石より遥かに低かった。
「というわけよ。分かった?」
「・・・・・・・・・グー」
「寝てんじゃないわよ!」
「かぴぱら!?」
殴り飛ばされ、赤くなった頬を撫でるギルにさらに追撃を加えようかと構えをとった瞬間、ギルは土下座をした。
「すいませんでした!」
「ま、いいわ。だけど本当にこれ魔法薬に使ったの?
魔力を含んだゼロピーって保存も面倒だから使い道がなかったと思うけど・・・・・・・ギル、騙されてるんじゃない?」
言われて思い出すのは保健室に所狭しと置かれたホルマリン漬けの○×△と狂喜を帯びた笑み。
「・・・・・・・・・否定できねぇな」
だからといって放棄するわけにもいかず、店を回ってみるがどこの店にもなかった。
むしろ何に使うんだと尋ねられたくらいだ。
空が赤く染まり始めた頃に溜息と共にロロは呟いた。
「駄目ね。その保険医の人に聞いたほうが早そうね」
「俺もそんな気がしてきた・・・・・・・・・うん?」
「ギル、どうかし・・・・・・・・・あの子、大丈夫かしら」
ギルの視線を辿ってみるとそこには三角座りをして噴水の隅で黄昏ているフードをかぶったちっこい人影。
フードからはみ出ている黒い髪は長く、地面にぺたりと力なく並んでいる。
フードコートにデニムを着ており、背丈から判断するに15歳前後だろうか。
「髪、長いな」
「ええ、長いわね」
立てば腰どころか地面にまでつきそうなほど、ロングなその人影はこれ以上ないほど途方にくれていた。
道行く人々も気になってはいるが周囲に張られている負のオーラに近づけないでいる。
「はぁ。・・・・・・・・・どうしよう」
お前本当に途方にくれているのか、と問いたくなるほど感情のこもっていない溜息を声を出すフード。
声から察するに女の子のようだが髪が長くフードで顔が見えないので恐怖を撒き散らしている。
ぶっちゃけると近づきたくない部類だ。
「あなた、どうかしたの?」
「!?ロ、ロロ!?」
よし、帰るか。
そう思った瞬間声をかけたその人物がいつのまにか隣から消えていることに気付いた。
関わらないと決心したにも関わらず話しかけるロロに頭痛を感じる。
このまま置いて帰ろうかとも思うがそんなことをすれば後日殴られることは目に見えている。
「俺達でよければ力になるぜ?」
「・・・・・・・・・はぁ。貴方達じゃ無理」
「ひでぇなおい。こう見えても俺達は───」
「・・・・・・・・・冒険者。腕見れば分かる。はぁ」
「・・・・・・・・・」
しかしどこかで聞いたことがあるような声だ。
記憶の中から引っ張り出そうとするギルだが、どこかが引っかかる。
ジュノーの知り合い連中でもなければ学園の連中でもない。
「こういうのは私が適任よ。ギルは黙ってなさい」
「そしてまた女の子を毒牙にかけるのか」
「うっさいわよ!」
姉御肌のロロはひたすらもてていたのだ。
同性に。
「私はロロ、んでこのボンクラがギルよ、あなたの名前は?」
「おいボンクべりあっ!?」
ボンクラってなんだよ、と抗議の声を上げようと思ったらギルはいつのまにか地面に伏していた。
顎に残る鈍い痛みとロロの手から出ている煙が全てを物語っていた。
「・・・・・・・・・ナノ」
少女が呟いたその一言に不死鳥の如く復活した。
まさか、まさか、まさか、その3文字が脳内を埋め尽くす中でギルは少女を凝視した。
「ナ、ナノちゃんだと!?って待てロロ何で構える」
「あら。視姦は罪よ?」
「あんまりだプトン!?」
「うっさい!また殴るわよ!」
「な・・・・・・・・・殴ってから言うな」
荷物をぶちまけながら転がったギルをフンと鼻で哂ったあとロロはくるりとナノに向き合う。
「ナノちゃん、有名人なの?」
コクリと頷いたナノだがその動作は小さい。
「それで何が困ってるの?」
「・・・・・・・・・別にいい。ナノの問題だから」
「そう。困ったことがあったら何でも言って頂戴ね?これ私の番号だから」
ロロは再び頷いたナノに微笑みかけて頭を撫でた。
まるで微動だにしないナノだがその視線は手元の紙に向けられていた。
「俺の番号も・・・・・・・・・!ってなんで破るロロ!?」
「不純な何かを感じたからよ」
「ひでぇ!俺だってナノちゃんと知り合いたいんだ!」
「却下」
悲しみの叫びをあげるギルを一瞥したあと、クイクイと裾を引っ張られる感覚に再びナノに向き合うロロ。
いったいどうしたのだろうと声をかける前にナノは立ち上がって言った。
「これはこっち」
「へ?」
「魔力を含んだゼロピー。ナノ、知ってる。案内する」
「本当?でもいいの?」
「別にいい。困った時はお互い様」
「な、ナノちゃん何ていい子なの!」
もう妹にしてあげる!とわけの分からないことを言いながらさらに頭を撫でるロロ。
抵抗しないまま撫でられているナノの様子を見てギルはロロに心底羨ましそうに視線を向けているのだった。
「ここ」
「・・・・・・・・・ナノちゃん、本当にここなの?」
引き攣った笑みを浮かべながらロロが聞くが、ナノは頷いたので間違いではないらしい。
ちなみに一通りの少ない路地に入ったあたりからナノはフードをはずしており、
艶やかなその髪を地面スレスレまで伸ばしている。
顔は・・・・・・・・・フードを外した瞬間興奮の絶頂に達したギルが鼻血を出していた。
「アルケミスト専門店。隠れた名店」
「いやでも看板の変わりに骸骨置いてあるし。隠れてねぇだろ」
「・・・・・・・・・?」
「隠れてますよね!これぞ、名店って雰囲気だな!」
小首を傾げたナノに心臓を打ち抜かれた衝動を感じながらギルは弁明した。
店に入ろうとしたロロを服の端を掴むことによってとめてからナノは言った。
「入っちゃ駄目。マスター」
「へ?ナノちゃんどうしたの?」
「魔力を含んだゼロピー。会員ナンバー1384番」
カランコロンと何かが転がる音がしてナノは店のポストの髑髏に手を入れた。
「はいこれ」
「・・・・・・・・・何だよこれ?」
「魔力を含ん」
「いやそうじゃなくてだな・・・・・・・・・入ったらどうなるんだ?」
手にもったそれをロロに渡してから少したって、ナノは言った。
「大変なことになる」
「大変なことって何だよ!?ていうかやっぱり見た目どおりの店かこんちくしょう!」
「だけど本当にナノちゃんがいて助かったわね・・・・・・・・・ありがとね、ナノちゃん」
「構わない。そろそろ行かないと」
別れの挨拶を済ませたあとナノはフードをかぶって表通りへと向かっていった。
「いい子ね・・・・・・・・・守ってあげたくなるような可愛さだったわ」
「まさに現役アイドルってオーラだったな」
「・・・・・・・・・アイドル?」
「いやだからNINO&NANOのだな」
「・・・・・・・・・本当に有名人だったのね」
トントンと石畳を歩く音が暗闇に鳴り響く。
プロンテラの裏通り、さらに言えばアサシンなどがよく使うプロンテラ騎士団が把握しきれていない道。
もちろんそんな場所に民家なんてあるわけがない。
そこはかつてモンスター召還テロにより半壊したエリアE。
半壊といっても話は数十年前なので今では見る影もないが、人が住んでいないのも事実。
現在のエリアEは無人で動く工場やならず者の隠れ場があるくらいだった。
「ようやく見つけたで」
「・・・・・・・・・」
そこで人殺しが起きることは珍しくなく、同時に殺し合いが起こることも珍しくない。
そう、彼らのように。
「心配せんでええ。ワイは・・・・・・・・・女の子には優しいんや」
「・・・・・・・・・」
「苦しまずに・・・・・・・・・死ね」
茶髪の男、アレスが無表情で呟くと同時に腕輪から無数の剣を取り出した。
その無数の剣は一人でに宙に浮いて標的に剣先を向ける。
黒い髪の彼女は地面スレスレの髪をゴムで一纏めにして後ろに垂らすと剣の柄を取り出した。
「コード、大禍津日神」
その言葉と共に剣の柄から伸びた謎の刀身にアレスは眉を顰める。
「不吉な黒髪に不吉な神の名・・・・・・・・・ほんま忌々しいわ。なぁ」
アレスは宙で待機していた無数の剣に命令をくだしてから言った。
「ナノはん」
無数の剣が彼女に向かって殺到した。
どうもバルセンです。
1.8倍、終わりましたね。
バルセンはこの期間中に影葱を98の0%から98の52%にしました。
といっても三日くらいしか活動してませんでしたが・・・。
その間・・・・・・というかだいぶ放置してましたね、このHP。
なので次の更新日を告知することに。
え?今日更新しろ?
・・・・・・・・・なんとなく面d、いえ、なんでもありません。
次の更新日は明日、つまり20日の水曜日の9時くらいです。
だいぶ更新できなかったので小説のほうもかなりのせるので、読むなら目次のほうからどうぞ。
ただ・・・・・・・・・日記のネタどうしよう。
おもいつかねぇ
更新にムラのあるBALSENです。
さて先日説明しなかったET内容についてちょちょっとお話しましょう。
我がギルドマスターが・・・・・・・・あ、そういえば一応代理なんだっけ。
まぁいいや。
とりあえず自分が所属しているギルドは土曜日にETをPTで登ります。
最初こそ教授がいないだの支援たりてないだのありましたが今では
廃人ギルドの皆さんの成長によってメンバー的には充実しています。
そしてR前はヒバムおじさんが倒せませんでしたが、R後はレンジャーのワンワンとSpp無双によってイフリート様までいけるようになりました。
ほら

え?死んでる?
あはは、バカだなぁ。
これはタヌキ寝入りと言ってだな・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・。
ま、まぁEQで全滅したんだけどね(´・ω・`)
おのれイフリート!
例え私を倒したとしても第二第三のタヌキが現れ、貴様をタッヌタヌにするだろう!
貴様のせいでこの世界は破壊されてしまった!
・・・・・何か混じったな。
今日の溜まり場風景
BAL「SRSでがんば」
ギルドマスタ「SRSって何?雨降らすやつだっけ?」
BAL「違うよ。SRSってのはテツさんの固有スキルだよ」
ギルドマスタ「テツさnだけが使えるの?」
いえす!
BAL「頭に乗せた亀が巨大化して戦うんだよ。通称ガメラ」
ギルドマスタ「わくわくわくわく」
関西人の血がくだらないことを言ったのだが・・・。
え、まじで信じてないよね・・・?
いつものようにファルに起こされてそのままいつものように訓練をし、ファルの部屋に向かう途中でそれはおきた。
「た、たすけてギル!」
「へ?」
部屋から出てきたのは一度も見たことがないほど切羽詰った表情をしたファル。
開け放たれたドアの向こうには呆れた顔をしたジーナと状況が分かっていないのかポカンとしているロロ。
机に並べられたご飯と焼き魚と味噌汁、さらに漬物がいつもの朝食を演出しているが肝心のファルがおかしかった。
「あるれぃあるらがりすらかりぜまふであしまう!?」
「どんだけ錯乱してんだよ。落ち着け」
オンドゥル語以上に聞き取り不能なその言語に思わず子供をあやすかのようにファルの頭に手をのせる。
・・・・・・・・・が、いつもなら「失敬だね」と手を払いのけるファルなのだが今回はその様子もない。
本格的にどうしたんだろうと心配し始め、聞いた瞬間ファルは叫んだ。
「で、どうしたんだ?」
「や、やつが来るんだ!」
「やつ?」
奴って誰よ。
そんな疑問が頭に浮かぶが聞かれた本人はそのまま走り去っていった。
必死さが浮かんだその背中に声をかけるが聞こえていないのか、そのままファルは階段を下りていった。
よく分からないが今日は休日だから外に身を隠す気なのだろうか。
それよりもあのファルがあれほどまでに恐れる人物とはいったい誰なのか。
そこまで考えてギルは思考を中断した。
否、中断せざるをえなかった。
「ひいいぃぃぃぃ!?エ、エイボン!?」
「・・・・・・・・・捕獲」
「い、いやだ!いやだあああああああああああああああああああああああああ!」
ガショーンやらウィーンやら不穏な機械の駆動音が聞こえ、そのままファルの叫びはどんどん小さくなっていった。
・・・・・・・・・関わらないほうがよさそうである。
「しかし魚か。この辺に魚屋ってあったっけ?」
ギルの記憶によるとプロンテラの魚屋は少なくとも学園周辺にはなかった気がする。
前に買い物に行った時はギルも同行したのだが四日前の話である。
それほど魚を放置しておけば鮮度が心もとないはずなのだが・・・・・・・・・。
しかしその疑問をあっさり答えた人物がいた。
「馬鹿ですね?」
罵倒で。
「って何で罵倒されてるんだ俺!?なんかもうジーナが俺を罵倒するのが当たり前みたいになってないか!?」
「・・・・・・・・・ギル、私はあなたの味方よ」
「その全てを包み込むような微笑みはやめて!?なんだか俺が惨めみたいじゃないか!」
「惨めですね」
「はっきり言った!?」
「よく考えてください。その腕輪の機能くらい知ってますよね?」
「・・・・・・・・・ああ、そういうことか」
よく考えると腕輪の中の収納空間は空気だとか雑菌だとかが存在しない。
さらに空間を密閉している間の時間の流れは遅いので腐りにくい。
ということは買い置きでもしていたのだろう。
「鮮度を心配していましたが、味は大丈夫ですね」
「死ななければ俺は構わないぜ」
「いるわよね。こういう男」
「うるせえ」
「えっと、古の像の欠片・・・・・・・・・欠片?」
「ギルー!こっちに鉄あったわよ」
「・・・・・・・・・なぁロロ」
「なによちゃんと探しなさ・・・・・・・・・あ、古い霞発見」
「おかしいと思わないのか?」
今更何を、と言った視線を受けながら手元のメモを見る。
この前の模擬戦で怪我をした時に使ったポーション代としてその材料を集めているのだ。
そしてそのメモはとある保険医から受け取ったものだがどうもおかしい。
表面は最初に確認していた通り簡単な材料だったのだが、裏面がおかしかった。
本当に回復薬に使われていたのか?と問い詰めたい材料がぎっしりと書かれていた。
一つ一つの値段そのものは安いのでたいした出費ではないのだが一つの店で事足りるラインナップではない。
「いいから早く探しなさい。手伝ってあげてるんだから」
「・・・・・・・・・ああ。さんきゅな」
「いいわよ別に。幼馴染なんだから・・・・・・・・・幼馴染かぁ」
再度呟いたその単語を感慨深く呟くロロに疑問を感じた。
今日の朝のファルはおかしかったが最近のロロも少しおかしい気がする。
「・・・・・・・・・どうしたんだ?」
「分かんないわよ」
「は?」
「知らないわよ。何でか嫌だって思っただけ」
意味わからん、そう思うが当の本人も同様の様子なのでギルは聞き返さなかった。
「ところで今朝の話なんだけどよ、あいつどうしたんだ?」
「私もよく分からないんだけど、ファルの腕輪に通信が入って誰かと話した瞬間部屋から出て行ったのよ」
「あいつも謎といえば謎だよなぁ。会う前の話は何も聞いたことがないし」
「それは意外ね」
周囲からは仲が良く見えるギルとファルだが、ギルはあまりファルのことを知らない。
というよりファルが話さないといったほうが正しいか。
ファルの会話から察するにイズルートに住んでいたようなニュアンスはあるのだが、その詳細は知らなかった。
さらにその以前は各地を転々としていたらしい。
「へぇ。剣を使えたり魔法使えたりするのもそのおかげ?」
「かもな。俺達より小さい頃に一人旅なんてないと思うから同行者の人に教えてもらったんだろ。
えっと、あとは・・・・・・・・・魔力を含んだゼロピー?」
おいおい、とギルは頭を抱えた。
別に魔力を含んだゼロピーそのものは高いものではない。
むしろゴミだ。
ゴミすぎて売られてないのだ。
となれば自分で取りに行くしかないのだが・・・・・・・・・冒険者見習いの自分がプロンテラの城壁から出られるとは思わない。
門番に止められるのが関の山だろう。
「どうするのよ?」
「どうしよ、本当に」
暗い大聖堂の中心で、ティアはそれを振り回していた。
短い棒が淡く光る度に出てくる光球が、目標に向かって絶えず光線を放っていた。
「エスクチカ・ヨ・ワテウス!」
背後から近寄ってきていたそれを見ることなく手に持っている棒で切り裂く。
その一瞬に見えたのは切り裂かれる人型の何かが棒から伸びた光で出来た何かだった。
その存在をティアはこう呼ぶ。
グール、と。
しかしそれは一般的なゾンビの上位存在であるグールと異なっていた。
そもそも根本的にその在り方が違うのだ。
闇に潜む彼らは知性をもってティアの間合いに不用意に近づくことは決してしない。
「弱いくせにちょこまかと・・・・・・・・・!」
柱を上手いこと盾にしながら避けるグールに悪態をつくがグールは戦う気がないのかひたすら逃げてばっかりだ。
「・・・・・・・・・」
ワラワラと大聖堂の出入り口の扉へ我先にと向かっていく姿にティアの頬が痙攣した。
こいつら、まさか逃げる気じゃねぇだろうなぁ?
バンッ!
・・・・・・・・・そのまさかだった。
扉を開けたグールはやってられるかと言わんばかりに大聖堂から逃げていった。
青筋を浮かべたティアは手に持ったそれを一振りして呟いた。
「・・・・・・・・・イエソ・ヌウノ」
振られた棒の軌跡に淡く残る残光から黒い子猫が出てきた。
子猫は地面にシュタッと着地すると振り返っていった。
『逃げたようだねティうわぁ!?いくらなんでも聖杖で叩かれるとおれっち死ぬぜ!?』
「うるさい」
『にゃわぁっ!?』
当然の抗議を言おうとした子猫だが、棒のようなもの、聖杖を避けたところでティアに蹴り飛ばされた。
「あたい、結界張っとけって言ったよね?」
『にゃ、にゃあ。不愉快だよティア!我輩はちゃんと結界を・・・・・・・・・』
「へぇ?・・・・・・・・・猫の丸焼きにされたい?それとも三味線?」
『にゃ!?わ、我輩は猫じゃない!誇り高きロキの眷族!その名も・・・・・・・・・』
「黙れ腐れ猫」
『ひ、ひどい。あんまりにゃ!』
それでも抗議してくるその猫にティアは表情を無くし
「オズ・ソロキ・ツブ」
『ひぃ!?ちょ、調子乗ってすいませんでしたぁ!』
「何々?魔法少女と名乗る人物、大聖堂で暴れる?・・・・・・・・・なんだこれは?」
「私も分かりませんね。どうやら逃げたようですが」
朝、新聞を読んでいたファルが視線で聞いてみるがジーナも知らないらしい。
「魔法少女ねぇ・・・・・・・・・いずれにせよ、まっとうな人物でないことは確かだね」
「しかし本当にいいんですか?こんなもの作って・・・・・・・・・」
「いいのいいの!私に任せとけなの!」
不満げな顔をしたパールは無駄に得意げなトナ校長を一瞥するとそれを作った本人に目をやる。
いつもボーっとしていて滅多に、それこそ教職員にすら顔を見せない教員エイボン。
長く白い髪を一纏めに後ろでくくっているエイボンだが、もともと彼女は部外者である。
数ヶ月前、突如としてトナ校長が連れてきた偉大な魔法使いだそうだ。
「しかし作る必要あるんですか?こんなそれこそいかれたシステムなんて」
「・・・・・・・・・失礼な。これはいかれていない」
作った本人は不満そうに頬を膨らませるが眠そうに時折欠伸をするのでオーラがコミカルだ。
「エイボンこれの仕様を教えるの」
「・・・・・・・・・ええ」
「はぁ」
いったいこの武器の何が有用だというのだろうか。
こんなの普通の人間が扱っていいわけがない。
戦いは死と隣り合わせと言うが、これはそれを助長させているだけだ。
誰が好き好んで危険を冒すのか、そうは主張したがトナ校長は依然として必要なのと一言だけで片付ける。
「別に只の剣を使えばいい話じゃないですか」
「ふむ。だが分からんでもないな」
「ガルマーさん!?あなたまで・・・・・・・・・」
静かに佇んでいたガルマーという思わぬ敵にパールは驚くが、彼の表情に変化はない。
むしろ合理的だと言わんばかりに口を開いた。
「真の強者が使えばこれ以上ない武器になる。これはそういうシステムなのだろう?」
「それはそうですが・・・・・・・・・ですが・・・・・・・・・」
彼の言いたいことは分かる。
確かにこのシステムさえあれば冒険者が夢を見ていた理想の武器が作られたことになる。
しかしこれは・・・・・・・・・このシステムはまるで
「まるで人を使い捨てにするかのようなシステム、ってことかな?別にいいじゃん」
「俺も構わないと思うぜ?誰かで実験するならともかく使うのはトナ校長自身なんだろ?」
「お二人まで!」
さらに追い討ちをかけるように同意したタクとトマトに味方がいないことを悟る。
このシステムを作った本人はこちらの会話なんて気にもしないでトナ校長に専門的なことを話していた。
実は傲慢なトナ校長だが、何故かエイボンの言うことはよく聞くのだ。
真に不本意ながら。
「はっ!?あのマッドな保険医はどうなんですか!?」
「ああ。あいつ?なんでも新薬の実験を彼に試してそのレポート書き上げてるみたいだけど」
「何してるんですか!?」
「・・・・・・・・・いやまぁ、仕方ないと思うけど。だってギル君、ポーションとか絶対に効かないでしょ?」
「ギ、ギル君ですか」
確かに彼相手なら仕方ないか。
・・・・・・・・・と思いかけたところでトマトが呟いた。
「でもよ、動物実験もしないでいきなり人体実験はどうかと思うぜ?」
「あの保険医、人の命を何だと思ってるんですか!?」
「俺に言われても。だいたいあいつ連れてきたのトナ校長だし」
そうなのだ。
トナ校長は何でか知らないが異様に顔が広い。
だいたいギルやファル、ロロにジーナを入学させたのだってトナ校長だ。
パールは彼ら──ギルを除く──の何が問題なのかは知らされていない。
ガルマーは何かを知っているようだが聞いても教えてくれるような人物なので聞いていない。
E組に入れられるくらいなので何かしら問題があるとは思うのだが・・・・・・・・・。
残りの二人に関してはアレスに関してはトナ校長から聞かされているがティアマトに関しては何も知らない。
ただトナ校長が言うには彼女は問題があるというよりある意味ファルよりも特殊な存在らしい。
「ふぅ」
そもそもファルという人物の特殊性を知らないのにその人物を比較の対象にされても分からないのだが。
いや、答える気がないだけだろう。
「・・・・・・・・・それでトナ?」
「なの?」
「明日、キリア・・・・・・・・・じゃなくて、えーと・・・・・・・・・ファルをつれてきて」
「別に会いにいけばいいと思うの」
「駄目。あの子逃げるから」
「鹵獲すればいいの」
「・・・・・・・・・そうね。でも約束は約束」
「わかったの」
パールが考え込んでいる時、その二人は不穏な会話をしていた。
「あたいの出番ってわけかい?」
緑のショートヘアの少女は虚空に向かって話しかけていた。
そこには誰もいなく、一歩間違えれば精神病患者に間違われそうだが少女の不適な笑みは正常なそれだった。
しかも少女が立っているそこは大聖堂の十字架の真上。
一見神秘的に見えるが信者からすれば冒涜的である。
「へぇ?今度は数で攻めようってわけかい。まったくこの世界は退屈しないよ」
少女は大聖堂に潜んでいる者たちを見据えて、己の獲物を取り出した。
それは一本の金属で出来た短い棒。
服がまるで生きているかのように蠢き、その形を少女趣味でフリルがたくさんついているものに変わっていく。
少女はまるで先に刀身があるかのように構えて言った。
「さて魔法少女ティア、穢れを払うかな」
ねむい・・・・・・ROでETのぼりました。
ねむいので詳細はまたこん・・・・ど・・・・
既に時刻は9時。
とある部屋にて彼らはひっそりと息を潜めていた。
「ふっふっふっ・・・・・・・・・カメラよし、アリバイよし、イメトレよしや」
「お、俺はロロに興味なんてっ!」
「・・・・・・・・・はぁ」
三者三様の反応を見せている彼ら。
どうしてこうなったのか、その原因は昼時にあった
午前中の授業は全て終わり、今は昼休憩である。
その中でギルはアレスを睨みつけていた。
傍に立っているファルも若干呆れ顔である。
「・・・・・・・・・アレス」
「ぐへへ・・・・・・・・・へ?なんや?」
「どうしたんだ本当に。今日は一段と締まりのない顔してるぞ?」
その通りなのだ。
今日のアレスは授業中、何を考えているのか不気味に笑うばかりだ。
そのせいか女子一同は「生理的に受け付けない」といわんばかりに今日だけは皆仲良く屋上へと旅立っていった。
教室で男3人だけ、これが寂しくないわけがない。
「ああ、妄想が顔に滲みでてたんや」
「自覚してたなら止めろよ!?」
アレスは自覚ありで変質者の微笑をしていたというのだからタチが悪い。
ちなみに授業をしていた教師陣は関わりあいたくなかったのか目を向けすらしかなかった。
「それで何かあったのか?」
当然のことながら午後にも同じことをやられては気分がいいものではないので聞いてみる。
「ギルはん、女の子の裸に興味はないか?」
「───な!?」
「ぶっ!」
何かを噴出す音に振り向いてみればそこにはお茶を噴くファルがいる。
さっきからやたら静かだと思ったら一人お弁当を食べていたようだ。
「きょきょきょきょ、興味なんてねぇよ?」
「どんだけ焦ってんねん・・・・・・・・・しかも疑問系」
「うるせえ!興味なんて・・・・・・・・・興味なんて・・・・・・・・・・」
おい、声が小さくなっていってるぞ、とファルは心の中で思った。
ジト目でギルを見るファルだが、関わりたくないのか今日はツッコミすらいれていない。
もちろんアレスには絶対零度の視線を投げている。
しかしいったい何の高揚感か、テンションが上がりまくりのアレスはそれに気付くことなく
「これ、なんやと思う?」
ギルに何か書かれた紙面を見せた。
「設計図、だな。どこかで見たような構造・・・・・・・・・か?」
正解、と言いたげにアレスは頷いてギルの耳元でその答えを呟いた。
「ワイらが過ごしている寮、その5階の設計図や」
「なっ!?」
ギル達が王立学園で過ごしている間、学園の寮に泊まるのは規則である。
もちろん外泊申請も出せば通るのだがそれも大抵プロンテラを出て遠出をする時のみだ。
それ以外は申請が通りにくく、一年の大半を彼らは寮で過ごすこととなる。
となれば寮の5階の設計図、それがいったい何を意味することかをギルが知らないはずがなく・・・・・・・・・
「そうや。もちろんこの中には・・・・・・・・・女子風呂の間取りも書いてある」
「!?」
王立学園男子のどうしても手に入らないアイテムTOP10に入るもの、それは王立学園女子風呂の構造図である。
噂によると女子風呂にはとある抜け道が隠されており、それを使うことにより覗き放題だそうだ。
何人もの勇者がそれを調査しようとしたが一向に見付からず、ついにそれを知るためには設計図を手に入れる必要があると確信した。
そしてそんな夢のアイテムが今、ギルの目の前にあるのだ。
「どうや?一枚かまへんか?」
「・・・・・・・・・ゴクリ」
「アホか」
喉を鳴らすギルと、呆れ顔のファル。
乗り気なギルはともかくファルはそれに参加する気が微塵もなかった。
だいたい覗きは犯罪だ、と内心思った。
もちろん忠告すべきだということはファルも分かっているのだがこの変態達は注意したことで止まるとは限らない。
しかも今回行くのはアレスとギルだ。
どう考えても失敗するのは目に見えている。
・・・・・・・・・が、そんなことはアレスも百の承知だった。
「ギルはん、ロロはんに興味ないんか?」
「・・・・・・・・・ロロに興味はないが、協力しよう」
素直やないなぁ、と呟いてからファルと向き合う。
「ファルはん、ジーナはんに興味ないんか?」
「興味ない」
「なら・・・・・・・・・」
すっとアレスは懐からそれを取り出した。
「これには興味ない?」
四角い・・・・・・・・・というか写真だ。
それを見た瞬間ファルは盛大に固まった。
ギルはなんだろうと回り込んでそれを見ようとするが
『燃え尽きろ、ヘルファイア!』
明らかに過剰な程の炎が燃え上がり、その写真を燃やし尽くす。
手に持っていたアレスは瞬時に手放し、事なきをえてニヤニヤと笑みを浮かべている。
「ちなみにネガは別の場所や」
「・・・・・・・・・いいよ。ただし、後で・・・・・・・・・」
覚えとけよ
全てが焼け崩れる中、俺は呆然と立ち尽くした。
焼けていく友人達。
崩れていく遊び場。
勇敢にもあれに立ち向かい、死んでいく冒険者達。
奴は鎌を持ってひたすらに哂い続けている。
なんで自分の周りだけ火の手がないか。
簡単だ。
もはや血の海であるこの広間に、火がつくことがないだけだ。
これは夢だ。
時々見る夢。
なぜなら・・・・・・・・・
「またかよ」
ファルじゃないのに、と思いながらも溜息は吐く赤い髪の少年、ギル。
夢なんて内容、本来は覚えていないことが多いのに何度も見るこれは必然的に覚えてしまう。
まるで忘れるなと言わんばかりである。
まったくもって馬鹿馬鹿しい。
あれは夢に決まっているのだ。
確かに自分の故郷はあれ・・・・・・・・・バフォメットによって半壊したが、夢の光景は所詮夢なのだ。
なぜなら・・・・・・・・・いや、やめておこう。
あんな夢、嘘に決まっている。
だいたいありえない。
そう、ありえないんだ。
誰かが絶望した時、それは現れる。
誰かが絶望した時、それは囁く。
もういいじゃないか。
考えていても解決しない。
ならば心の赴くままにすればいい。
自分の気に入らない全てを壊せばいい。
誰だってそうだろう。
押さえつけているだけで、本当は気に入らないものを排除したいはずだ。
何故我慢する必要がある?
常識なんて忘れろ。
一般的な概念のそれは単に社会の枠組みであって、常識は本来自分で構成するものを言うんだ。
他を取るか我を取るか、それは人それぞれによって決まる。
だが誰だって本当は我を取りたいものだ。
だから良いんだ。
全てを、委ね、私と
踊りましょう?
「・・・・・・・・・っ!?」
少し固めの備え付けのベッドから飛び起きるように上半身を起こす。
その反動でギシリと僅かな軋みの音が聞こえる。
頭はクラクラし、貧血のような症状を感じる。
ふと同じく備え付けの鏡を見てみると酷い顔をしていた。
顔は真っ青になり、目にはクマが出来ている。
いつものように寝ているようで全然寝られていなかったようだ。
「はぁ」
そして白髪の鍵のペンダントを下げた少年、ファルは溜息を吐く。
またか、そう思い枕を裏返してみる。
そこには青い水晶が埋め込まれたペンダント。
「これもダメかぁ・・・・・・・・・気休めも気休めにならないね」
再び溜息を吐き、そのペンダントを右手についている銀の腕輪に収納する。
これこそ冒険者の必需品、収納の腕輪。
取り出したいものを思い浮かべてトントンと叩くだけで物品が取り出せる便利すぎる代物。
だがこんなものにも制約があり、実は入れられる量が限られており、面積で言う2m四方程しか入らない。
だからこそ引越しの時に使えなかったわけだが。
「・・・・・・・・・」
視線を腕輪からベッドに移すと、そこには大量に湿ったシーツ。
別に漏らしたわけではない。
尋常じゃない程汗を流しただけだ。
一度だけギルに誤解されたことがあったが、それはまた別の話だ。
「・・・・・・・・・あ」
そういえば今日は入学式だ。
地下室のドタバタがあって少し忘れていたが、ファルは今日、ギルとロロを起こして早めに支度をしなければならない。
彼らは一人では起きられないのだ。
だからそう、仕方ないのだ。
そう自分に言い聞かせて溜息を吐きつつシャワーで汗を流し、制服に着替える。
鏡でどこかおかしいところがないか見てみるが、問題はないようだ。
「行くかな」
どうせこれ以上遅くなれば文句を言われるのは自分だ。
昔々、暗闇の中でそれは囁いた。
全てを、委ね、私と
踊りましょう?
もふもふ。
もふもふ。
「・・・・・・・・・あの?」
「いいから黙ってるの」
「・・・・・・・・・」
ひたすらにヌイグルミの柔らかさを確かめるかのように大人しく座っている彼女を抱きしめる。
無表情のそれからは僅かに困惑が滲み、周囲の者は苦笑して見守っている。
「あー、やっぱり女の子は柔らかくていいの・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・女の子と言われても」
「貴方は女の子なの。事実なの」
彼女も何を言っても無駄だということは分かっているのでただ無表情に僅かな疲れを描くだけだ。
「ケーキなの!ケーキを買ってくるの!ほら、タク買ってくるの!」
「ええー・・・・・・僕かよ・・・・・・」
「校長命令なの!早く行くの!」
ブツブツと文句を言いつつ校長室から出て行くタク。
その他にも校長室にはガルマー、パール、トマト、保険医がいた。
「ロン!ロンロンロン!」
「あの・・・・・・非常の申し上げにくいのですが、それチョンボです」
「うむ」
「馬鹿じゃねぇのおっさん」
「のうっ!?」
その4人は麻雀をしていた。
保険医は悶絶しながらゴロゴロと転がり、点棒を参加者に渡す。
「はぁー、世の中はクリスマスなの。そんな日にリーちゃんと一緒で嬉しいの」
「玩具じゃない」
「なの?ひょっとして婚約者のほうが良かったの?」
「別に。そういうの、気にする相手じゃない」
「なら今は大人しく私の玩具になって・・・・・・・なの?」
「・・・・・・・・・侵入者」
ポツリと彼女が呟いた言葉にトナ校長は大きく頷き、抱いていた彼女を一旦手放す。
「困ったの。タクがいないから罠で撃退できないの。まったく肝心な時に役に立たないの・・・・・・」
「なんという暴君・・・・・・」
「なの?リーちゃん何か言ったの?」
「別に。いってくる」
「あ、今日は私が行くの。リーちゃんは疲れてるだろうし、今日は私が!」
そう言って勢いよく校長室のドアを開けるトナ校長。
そして背後から聞こえた呟き。
「・・・・・・・・・殺さないでよ?」
「発見なの!」
「ひぃ!?何だこの化け物!魔法が効かないぞ!?」
「撃て!弓でも銃でも何でもいいから近寄せるな!」
「無駄無駄無駄無駄なの!」
トナ校長が走り、それを妨害するものが全て炎となって消えていく。
その小さな身体から発せられるのは人が持っているとは思えない程、膨大な魔力。
それを感じ取れるマジシャン達は既に全員逃げ出しており、侵入者はもはやどうやって逃げるかしか考えていない。
当てることを考えないで足止めしか考えていないような狙うことを放棄した弾幕にトナ校長は叫んだ。
「もう、邪魔なの!『祭られるは社の巫女、司るは砂時計。祭ったのは私!』」
「な!?なんだよそれ!?」
トナ校長の周囲にこれでもかと浮かぶ炎弾の数々。
これが一斉に発射されたらまず避けようがない上、防げるかどうかも不明な程の大きさである。
「ちょっ・・・・・・待て降参す」
「行くの!『フレアレイン!』」
侵入者が何かを言いかけたが構わずトナ校長は呪文を完成させた。
トナ校長の十八番であり、トナ校長だけのオリジナルマジック。
それは爆音を鳴らし、侵入者の周辺全てに破壊の痕を残していく。
3秒程持続させてから解除すると侵入者達はピクピクと痙攣して気絶していた。
相手の被害は様々だが・・・・・・・まぁ全員戦闘不能だしいいだろうとトナ校長は思い、騎士団に連絡、そして部屋に帰った。
帰ったのだが・・・・・・
「いひゃいいひゃいいひゃい!」
「ふ、ふふふ・・・・・・トナ?」
「リーちゃん私、激しいのより優しいほうがいいの・・・・・」
「反省の色・・・・・・なし」
「なの!?は、反省してるの!」
待っていたのは説教だった。
麻雀をしていた4人は最初こそこの光景を珍しげに眺めていたが次第に飽きたのか麻雀に戻っていた。
今ではイカサマがどうこうでもめている。
「確かに殺してない。でも・・・・・・校舎を破壊していいなんて言ってない」
「別にリーちゃんの所有物じゃないからいいんじゃーいたいいたいいたいの!」
アイアンクローでギチギチとトナ校長の頭が締め上げられているが、彼女には分かっていた。
そもそも反省なんてするわけがない、と。
「おう、帰ってきた・・・・・・んだけど、何これ?」
「タク」
「おう、どうし・・・・・・・・・は、なんでしょうか」
「そのケーキ、私が持って帰る」
「なの!?リーちゃん独り占めよくないの!」
独占禁止法だ!と叫んでいるトナ校長であるが、彼女がトナ校長を見た瞬間その表情は固まった。
「なの・・・・・・・・・ごめんなの」
シュンと叱られた子供のように小さくなるトナ校長を確認して彼女は溜息を吐いた。
「・・・・・・・・・仕方ない。タク、皿」
「えー、僕パシリじゃないんだけど」
「タク?」
「い、いえっさー!」
ギロリと彼女に睨まれたタクが冷や汗を流して厨房に駆け込んでいくのを見送ってから彼女は言った。
「さっさと終わらせる。ケーキ、食えないでしょ」
「む、仕方あるまい」
「ですね」
「ひっひっひっ。無問題さ!」
彼女の言葉に4人は卓を片付け始めるが、最下位だったトマトだけは複雑な心境で片付けていた。
「・・・・・・・・いいの?」
「仕方ない。次からは気を付けて」
「わ、わかったの」
トナ校長はこれ以上何かを言うと薮蛇の可能性があるので何もいわずに素直に席に座る。
「持ってきたよー」
「私が斬る」
「・・・・・・・・・漢字違わなくねぇか?」
「うるさい野菜」
「トマトだっての!というか人の名前に何ケチつけてんだよ!」
彼女の毒にウガーと唸りをあげるトマトに切り分けられたショートケーキが置かれた。
「タク、これは何のケーキですか?場所によってチョコレートだったりイチゴだったりと落ち着きがありませんけど」
「ふむ・・・・・・摩訶不思議なケーキだな」
「それを部位ごとに綺麗に切り分けるって何者だよてめぇ」
「だからうるさい野菜」
「野菜って言うな!」
どこか置いてけぼりな気分を味わうトナ校長だが、去年に比べれば随分マシだ。
彼女が来てから止まっていた時間が再び動き出した、そんな気がした。
ならば彼らも来れば・・・・・・そう思うがきっと来年はもうこんな時すら味わえないだろう。
ならば今だけ、お願いだから今だけ。
ふと外を見ると、雪が降っていた。
午前2時から始め現在真夜中の4時。
まだまだパーティは始まったばかりだ。
「トナどうした?」
「なんでもないの!あ、私はチョコレートのほうが・・・・・・」
まだ滅びは始まっていない。
『あ、ありのまま 今 起った事を話すぜ!
おれが引き上げようと思ったら、いつのまにかファルがエロ魔人と化していた。
な・・・・・・・・・何を言ってるかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった・・・・・・・・。
頭がどうにかなりそうだったぜ。酒乱だとか精神高揚薬だとか、そんなチャチなもんじゃねぇ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ』
(後日談のギルのコメントより抜粋)
それから無難に一気飲みしたりなんやらしたりで時間が過ぎ、その時事件は起った。
皆王様ゲームに飽き始めてお開きムードを漂っていた頃だった。
最初はテンションが高かったトナ校長も今では若干低くなっている。
「王様だーれだ、なの」
「・・・・・・・・・」
無言で手をあげたファルが顎に手を置いて考える動作をし、各々の面子はそれを待った。
そしてファルは言った。
「一番が二番にキスをする」
「ブッ!?」
不幸にも水を飲んでいたギルがそれを噴出し、かけられたアレスも反応がない。
「・・・・・・・・・ファル?」
「なに?」
「・・・・・・・・・どうしたんだ?」
ギルが聞いてみるが、ファルは何を言っているのか分からないと言いたげに首を傾げた。
「あの・・・・・・・・・ファルさん?大丈夫ですか?」
「ロロ。一番なんだから早くトナ校長にキスを」
「番号分かってて言ったんですか!?ってトナ校長も腰をクネクネしないでください!」
まさか最初に暴走したのはファルだとはギルも思わなかった。
普段のファルは良識ある人物だ。
・・・・・・・・・普段?
「ファル何飲んでるんだ?」
「え?酒だけど」
「酒かよ!?ていうかお前未成年だろうがっ!」
「大丈夫だ。これでも僕は3千歳くらいだし」
「嘘つけっ!というかそれ人間の年齢じゃないだろ!?」
「・・・・・・・・・チッ」
「あ、舌打ちしただろ今」
「ちょっとギル・・・・・・・・・」
半分漫才とかしていたその状況を止めるべくロロは口を開いたが、その瞬間ファルの顔が邪悪に染まった。
・・・・・・・・環境で悪人になっただと?ちがうね!!こいつは生まれついての悪だッ!
「4番が6番にキスをする。ディープで」
「「はああああああ!?」」
もちろん叫び声を上げる当事者。
というかパワーアップしている。
「ま、待てよなんで俺がロロと」
「ちょっと待ちなさいよ。それどういう意味よ!?」
ロロも一緒に抗議してくれるのだが、周囲は面白がり───
「これぞ王様ゲームの醍醐味っちゅうわけやな」
「うんうん。あたいもこういうの大好きだねぇ」
「そこ!何納得みたいな声出してんの!ってか最初はジーナとトナ校長でしょ!?命令変更は違反よ!」
「・・・・・・・・・お姉さま」
我が身可愛さに自分を売るロロの姿に若干複雑な感情を抱きつつ次にギルを見る。
その視線に気付いたギルと目が合うが、鼻で哂ってやった。
「なんで!?」
「ハァ・・・・・・トナ校長。こっちきてください」
「わ、私の唇を奪うっていうの!?」
「・・・・・・・・・ええ。ありていに言えばそうですね」
否定するのも面倒になったのかトナ校長の元へ歩くがそれと同じくらいトナ校長は後ろへ下がった。
「シチュエーションとしては楽しいの。でもそれを私がするっていうのはどうかと思うの」
「私も不本意なんです。覚悟してください。こうなったファルさんは・・・・・・・・・」
何を思い出したのか若干涙目になったジーナに一瞬動きを止めたトナ校長だが、それがいけなかった。
『フォトンフィター』
「なの!?」
「失礼します」
トナ校長の足元を何かに束縛され、それを見ようと下を見たら目の前にジーナの顔があった。
反応する間もなく顔をがっちりと固定され、唇が近づけられた。
ズキュウウウウゥゥン!!!
「な・・・・・・・なの」
「・・・・・・・・・気分が悪いですね」
「なの!?奪っておいてなんて酷いの!?」
「好きで奪ったわけではないので」
「飽きたらポイなの!?」
「この場合はそもそも興味がないので遊びですね」
「さらに酷いの!慰謝料を要求す『この点はでねぇよ!』・・・・・・・・・なの?」
トナ校長の腕輪から着信音が鳴り、さっと操作して出てきた文字に嫌そうな顔をした。
「・・・・・・・・・何なの?」
『何なの、じゃないですよ。例の試作機、運用テストは自分でするって言ってたじゃないですか』
「なの!?か、完成したの!?」
『・・・・・・・・・ええ。真に遺憾ながら』
「こうしてはいられないの!アデューなの!」
トタトタとコミカルな音を残しながら去っていくトナ校長。
しばらくしてファルが口を開いた。
「・・・・・・・・・ひょっとしてトナ校長のぶんって僕らが払うの?」
「「・・・・・・・・はっ!?」」